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いまさら聞けない、「企業と生物多様性」(その2)-「生物多様性」を知る魔法のコトバ本多清のいまさら聞けない、「企業と生物多様性」

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生物多様性に取り組むといっても、その言葉の意味を正しく理解していなければ何をしたらいいのか分からないですし、正しく理解しないまま取り組んだ結果、かえって生物多様性を破壊する行為を犯してしまうこともあります。そのような事態はぜひとも避けたいものです。

今回は、この生物多様性という言葉の概念を、最短時間で、簡潔に、そして完璧に理解し、把握することに挑戦してみましょう。もちろん魔法ではありません。誰にでも簡単にできることです。

これさえ知っていれば"とりあえず"大丈夫

それではまず、以下の「魔法の言葉」を頭の中に刻み込んでください。

『生物多様性とは、それぞれの地域の歴史の中で育まれてきた様々な生きものたちが、互いに関りあいながら暮らしている状態を表す概念です。その「生きもの」の中には、私たち人間も含まれます。』

では次に、以下のように三つのパーツに分けて解説します。

生物多様性とは、

  1. それぞれの地域の歴史の中で育まれてきた様々な生きものたちが、
  2. 互いに関りあいながら暮らしている状態を表す概念です。
  3. その「生きもの」の中には、私たち人間も含まれます。
  4. 「1 それぞれの地域の歴史の中で育まれてきた様々な生きものたちが」とは?

はじめは1についてです。「地域の歴史の中で育まれてきた」とは、40数億年の地球の歴史の中で、それぞれの地域ごとに(生きものが)進化と分化を重ねてきた、という意味です。その結果、「様々な生きものたちが」存在しているということを示しています。地球上にはさまざまな環境や気候の特性があります。大陸、島しょ、密林、草原、高山、湿地、砂漠、海洋、河川湖沼、極地等、実に多種多様な環境の中で生き延びるために、生きものは姿や性質をさまざまな形で適応させながらそれぞれに進化していきました。

もうひとつ重要なことは、生きものたちは、その種類によって移動の能力に大きな差がある、ということです。このことが、地球上の生物のバラエティをより豊かなものにしてきました。例えば日本とアフリカでは自然界の生きものの顔ぶれがまったく違います。日本の野山にはライオンやシマウマはいません。いたら大変ですから、いないことが生物多様性を保持していることになります。一方で、日本の湖にブラックバスのような外来魚を放すと生物多様性を破壊することにつながるのは言うまでもありません。

また、日本と中国大陸には、太古に祖先を同じくする多くの生きものが、それぞれの地域で別の進化の道を辿りながら暮らしています。哺乳類ならシカ、イノシシ、クマ等は種としては同じですが、遺伝子レベルで独自の系統に分かれている「亜種」という位置付けになります。

川や湖の魚の場合は、湖ごとや川ごとに遺伝子レベルで独自の進化をとげています。河口は同じ川でも支流や谷によって遺伝子系統が異なる場合もある(見た目はほとんど同じですが)ので注意が必要です。何に注意しなくてはならないかというと、安易に外部から生きものを持ち込んで放流したりすると、地域の歴史の中で育まれてきた遺伝子レベルの多様性を交雑(雑種化という意味で捉えて結構です)により永久に失ってしまうからです。

「2 互いに関りあいながら暮らしている状態を表す概念です。」とは?

次は2についてです。これは、この世の生物はすべて、他種の生物との関係の中で互いに影響を及ぼしあいながら暮らしている、という意味です。その関係と影響のスタイルは、食べる、食べられる。競争して勝ち、あるいは負ける。寄生する。助け合う、等様々です。もしライオンに獲物がいなくなればライオン自身が滅びてしまいますから、ライオンという種は獲物となる他の多くの種の存在に支えられていることになります。

ミツバチが花の蜜を吸い、花は花粉を受粉させて子孫を残す、というのは典型的な共生関係です。住む環境や生活形態の違いによってニッチ(生息空間)を見つけだし、得意分野では他種のライバルとの競争で優位性を保とうとする等、企業の経営戦略に類することも生物多様性の世界ではよく見られます。

こうした「他の生きものとの関係性」の中でも、多くの生きものの種が進化や分化をしていきますから、これは非常に重要なことです。獲物を捕らえるために牙や爪を発達させたもの、食べられないために針や角、毒で身を守るもの等です。逆に、攻撃してくる生きものがいない環境では身を守る必要がないので、翼が退化して飛べない鳥等の種が生まれてきます。

「3 その「生きもの」の中には、私たち人間も含まれます。」とは?

最後は3についてです。これは1や2で述べてきた生物多様性の仕組みの中に我々人類も含まれている、ということです。農林水産業を通じて得られる食料など、各種の自然資源なくして人類は生存できません。ですから、それらの自然資源を育む生物多様性を保全することが、人類が持続可能に生存していくうえで欠かすことのできない命題である、ということです。

一方で、人は自然界に生かされているだけではありません。人の営みなくしては生存できない生きものもたくさんいるのです。例えば、かつての里山の雑木林では、人が燃料の薪や肥料となる資材を調達することによって成立する独自の生態系が維持されていました。また、水路を開いて水田を拓くことで、地上でもっとも生物相(生きものの種類)が豊かとされる「湿地」の環境が広がっていきました。里山や田園においてはつい最近まで、人の営みは同時に多くの生きものを育む行為でもあったのです。

以上、123の各パーツに分けた「生物多様性」の概念を正しく理解していれば、もう恐いものはありません。要はこの概念で示されている自然界の仕組みを壊さないようにすると共に、守り育むことを念頭に入れながら、企業としての取組(本業にせよ社会貢献にせよ)を進めていけばいいのです。今後は、この概念をベースに各テーマに沿ったお話しをさせていただきたいと思います。

それでは最後にもう一度、魔法の言葉を唱えてみましょう。

『生物多様性とは、それぞれの地域の歴史の中で育まれてきた様々な生きものたちが、互いに関りあいながら暮らしている状態を表す概念です。その「生きもの」の中には、私たち人間も含まれます。』

ではまた次回に。

※本コラムを執筆した本多主任研究員が生物多様性とビジネスチャンスについて寄稿した一般社団法人建設コンサルタンツ協会誌記事「生物多様性がひらく世界」も、ぜひご一読ください。 http://www.jcca.or.jp/kaishi/249/249_toku8.pdf

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執筆者プロフィール
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本多 清 (ほんだ きよし)
株式会社アミタ持続可能経済研究所
主任研究員

環境ジャーナリスト(ペンネーム/多田実)を経て現職。自然再生事業、農林水産業の持続的展開、野生動物の保全等を専門とする。外来生物法の施行検討作業への参画や、CSR活動支援、生物多様性保全型農業、稀少生物の保全に関する調査・技術支援・コンサルティング等の実績を持つ。著書に『境界線上の動物たち』(小学館)

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