創資源対談第2回:セメント工場はもはや社会のインフラでありその自覚を持って欲しい | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

創資源対談第2回:セメント工場はもはや社会のインフラでありその自覚を持って欲しいセメント新聞社共催特別企画:創資源対談

この度、アミタグループは、セメント新聞社と共同で、排出事業者、セメント業界、自治体、中間処理会社のそれぞれの立場から、セメントリサイクルの可能性と課題等を対話する、「創資源対談」を実施いたしました。業種や立場を超え、「創資源ネットワーク」を形成する一員として、セメントリサイクルのあり方とリサイクルに関する法律のあるべき姿を考えます。 創資源対談の事前アンケートについてはこちら

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課題は直接持ち込んでいるセメント工場の休転です

藤原:セメント原燃料となる廃棄物を排出する立場から見て、セメント工場でのリサイクルをどのように捉えていますか。

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駒形氏:廃棄物とはいっても、直接セメント工場に持っていくものはセメントの原料という認識を持っています。当社とセメント業界との付き合いは廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)が制定・施行(1970年12月)になって間もなくからです。当初は成分が安定しているものを受け入れていただいていました。最近は当事業所もゼロエミッションということで、従来リサイクルしていなかったものもできる限り再利用を図っています。

直接セメント工場に持っていけないものは中間処理業者に引き取ってもらうことも多いのですが、セメント工場で使用していただくのが安心であり、最終的な引取先がセメント工場であるかどうかを中間処理業者に確認しています。ただし溶融・焼却処理が必要なものは路盤材として活用されるケースが多いです。

ゼロエミッションを目指していますが、協力会社から大量に出る廃ウエスは焼却後、灰の埋め立て処分が基本となっています。そのほかは多少コストがかかってもリサイクルを心がけています。

新たな装置を導入することによって発生が見込まれる廃棄物に関しては、予想される成分データ等を基にまずセメント工場で受け入れ可能かどうかを相談するようにしています。直接受け入れが困難な場合は中間処理業者に相談することになります。

最近困っているのは直接持ち込んでいるセメント工場の休転が多くなっていることです。ほかの工場でも受け入れできるものは何とかなるのですが、輸送手段を含めて受け入れ工場が限定されるものは、休転が多いと滞ってしまって大変です。

中尾氏:定期修理(定修)等休転期間の廃棄物受け入れをどうするかは各工場とも課題となっています。法律で許される範囲で、固形物はある程度置いておくことも可能ですが、汚泥類等への対応は難しいです。

当社では西日本に位置する複数の工場間で融通し合うようにしていますし、山口県ではセメントメーカー2社が協力して主に県内で発生する都市ごみ焼却灰の前処理会社を設立・運営しています。 複数のセメントメーカーが協力してリサイクル事業を行うことも今後の検討課題だと思いますが、その場合には排出元との契約問題あるいは法律上クリアすべき課題もあるかと思います。

関係者が同じ土俵で物事を考えられるようになれば

藤原:相対契約や事前協議等、実際にリサイクルを推進していくうえでネックとなっている法律上の課題も多いようです。当社のアンケート調査では100%再資源化するものは廃掃法とは別に扱うべきかどうかについて賛否両論があり、行政に対しては自治体ごとで廃棄物処理に関する条例や担当者の判断が異なること等を指摘する意見もありました。

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松岡氏:行政に柔軟性を持たせるには環境整備が必要です。セメントでのリサイクルに関して言えば、廃棄物を持っていくところがなくなり、いまやセメント工場がなくなると困ってしまう自治体は非常に多いというのが実情です。セメント工場は重要な社会インフラのひとつであり、そうしたポジションに相応しい振る舞いをすべきだと思います。

しかし、セメント協会発行の『セメントハンドブック』を見ると、リサイクルに関する記述は1ページしかありません。

原燃料として廃棄物を受け入れているという実態は社会的に定着していますが、率直に申し上げて、セメント協会や産業界自身がセメント自体の見方を改め、新しい道を切り開くという方向に脱し切れていないのではないかと思われます。頭の中で静脈と動脈という垣根を設けているようですが、廃棄物活用はいまや事業の一環であり、セメント業界はもっと柔軟性を持つべきです。

休転時期の廃棄物受け入れをどうするか。他社との連携等はユーザーに対するサービス提供として素晴らしいことで、ぜひ進めるべきです。ただし現状の枠組の中ではさまざまな問題もあるでしょう。しかし廃棄物=セメント原燃料というサプライチェーンとしての視点に立ち、行政や中間処理業者も含めた関係者が同じ土俵で物事を考えられるようになれば、いろいろな知恵も出てくるのではないでしょうか。

しかも現実的には既にそうしたサプライチェーンが構築されているとも言えるわけで、セメント業界としてどこにベクトルを持っていくのかを明確にすべきだと思います。

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藤原:本日の座談会は松岡様が言われたように、いままでのフレームワークにこだわらずに利害関係者が意見・知恵を出し合うことが重要で、その第一歩だと認識しています。当社は国内のほとんどのセメントメーカーとお付き合いがあり、排出元もさまざまで、セメント工場定修時等への対応は「ポートフォリオの運用」として両者にとって最善の方法を見出そうと心がけています。ただし実際にはセメント工場の多くが同時期に定修に入る等難しい面があります。

中尾氏:排出元が持ち込むセメント工場を選定する場合、距離が近いことが条件になることが多いと思います。これは輸送コストをどこが負担するかという考え方次第で柔軟な対応が可能ではないでしょうか。いつも持ち込む工場が定修で、他工場で処理しなければならない場合は輸送費をセメント工場側で負担するということも考えられるでしょう。

駒形氏:セメント工場に直接持ち込むケースは輸送方法という問題もあって、どうしても距離が近いところを選択せざるを得ないのが実情です。ただし取り扱いが難しいもの、発生量が少ないもの等は中間処理業者に委託して、そちらで再差配していただくことは有効だと思います。今までの議論をお聞きして、もっと広い視野で検討していきたいと考えています。

(つづく)

関連情報
プロフィール
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写真 左より
松岡 俊和 氏 : 北九州市 環境局長
駒形 勝  氏 : JX日鉱日石エネルギー株式会社 根岸製油所環境安全グループアシスタントマネージャー
中尾 正文 氏 : 一般社団法人セメント協会生産・環境委員長代行 住友大阪セメント株式会社取締役専務執行役員
<ファシリテーター>藤原 仁志 : アミタホールディングス株式会社 常務取締役

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