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元行政マンが語る、具体事例から読み解く行政処分~E社の爆発事故~ 後編BUNさんの「元・行政担当者が語る 廃棄物管理のイロハ」

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E社が「的確に遂行できる能力の欠如」を理由に行政処分を受けた件について、前編で、E社が廃棄物処理法に違反したのかどうかという観点から読み解いてきました。後編では、排出事業者との関わりから理由を探っていきたいと思います。

前編はこちらから。

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排出者事業者の処理会社への情報提供は十分だったのか?

今回の事故、そもそも排出者が、「我が社が出す産業廃棄物はこういうものですよ」と受け手側の業者に十分情報を提供していたのでしょうか。

この「情報の提供」は、委託基準としての「委託契約書」の法定事項でもあり、別の事件を受けて環境省は、平成24年9月11日に「ヘキサメチレンテトラミンを含有する産業廃棄物の処理委託等に係る留意事項について」として、再度、通知をしているところです。

E社の事故に関しては、排出事業者が委託基準違反で警察が捜査をしたという新聞記事が昨年の4月頃に掲載されましたので、おそらく、排出事業者はE社に対して、「これは特別管理産業廃棄物である廃油ですよ」とは告げなかったものと思われます。

そのため、E社は特管廃油という認識がないままに、預かった廃油を<普通の>廃油の処理フローに投入してしまった。もし、ここで、排出事業者が明確に、「これはガソリンが混入している特別管理産業廃棄物ですよ」と伝えていれば、この事故は防げたかもしれません。(明確に告げられていたにもかかわらず、投入していれば、これはE社の法令違反は明らかです。)

結局、「的確に遂行できる能力に欠けている」とは具体的にどのようなことを指すのか?

排出事業者の伝達にも問題があったのかもしれません。ですが、「専門知識」のレベルではなく、「常識」のレベルでも、ガソリンが少なからず混入していたら、その臭いで「あぁ、これはガソリンだな」と判断つきませんか?新聞記事にも、「ガソリンが漏れているような臭い」がしたと記載があります。

たとえ、排出事業者から「これはガソリンです」と告げられなかったとしても、受け取った運転手は、臭いで「ガソリンだ」と気がついたんではないか?

ところがですよ、「ガソリン」=「特管廃油」という認識が、この運転手になかったら、どうなるでしょう。「ガソリンだとはわかった。しかし、ガソリンが特別管理産業廃棄物であり、普通の廃油とは違う処理をしなければならないものであるということは、知らなかった」という状態です。

そんな話を、この世界に居る人たち(廃棄物処理法に携わっている、少なくともこの「教えてアミタさん」をご覧になっている皆さま)から言わせれば、「なんと非常識な」ということになりますよね。

つまり、これが「的確に遂行できる能力に欠けている」状況な訳です。

推測の域を出ませんが、おそらく許可権限者であるT県においても、E社の廃棄物処理法違反を詳しく調査したと思います。しかし、許可業者(「E社」という法人)の明確な廃棄物処理法違反の確証は掴めなかった、ということなのかもしれません。そして、結論としては、具体的な廃棄物処理法の違反条文を根拠とすることができなかった。

具体的な廃棄物処理法の違反条文が無い場合、前出の「標準的処分通知」の「処分内容」として、「改善に必要な期間の停止又は許可取消(改善が不可能な場合)」としています。

T県は、行政の調査能力よりも、もっと強力な警察の捜査能力に期待していたのかも、しれません。しかし、その警察の出した結論としては、「業務上過失致死」としての責任者の送検でした。具体的な廃棄物処理法違反の条文は、ここでも明確にはなりませんでした。この時点で、T県は前述の「的確に遂行できる能力の欠如」を理由として、「事業停止90日」という行政処分に踏み切ったのではないかと、推察しました。

違反・事故を引き起こさないために、排出事業者、処理会社が押さえておきたいこと

E社爆発事故の行政処分の妥当性については、前述のように「推察」したのですが、最後に、このような悲惨な事故を二度と起こさないために、復習しておきたいと思います。

廃棄物処理法違反・事故によらず、多くの違反・事故を防ぐためには、次の3つの事が重要であると言われています。

  1. 気づく力、発見する力
  2. 発言する力、提言する力
  3. 是正する力、修正する力

繰り返しになりますが、この事故においても、排出事業者が委託段階で告知していれば、また、受け取ったドライバーがそのことに気がついていれば、さらに、処理プラントの作業員が指摘していれば、防ぐことができたかもしれません。

異常なこと、違法なことに気がつく力、それを関係者や上司に提言する力、そして、それを是正、修正する力、能力がそれぞれの立場の人間に常に要求されている、ということなのだと思います。

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執筆者プロフィール

長岡 文明 (ながおか ふみあき)
アミタ株式会社 特別顧問
山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も務める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)。

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