第3回:環境制約下で持続可能な経営を行う戦略(前編) | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

第3回:環境制約下で持続可能な経営を行う戦略(前編)商品価値から企業価値へ~2030年の環境戦略の姿~

2030年の社会状況や環境制約を見据えたときに、企業はどのような環境戦略・価値創出を行っていくべきかをお伝えする、本コラム。Some_rights_reserved_by_Russel_Wong_Photo.jpg

前回は、2030年における環境制約を概観し、企業は中長期的な観点から環境戦略を立案・実行することが必要だと説明しました。
第3回は、環境制約下で持続可能な経営を行う戦略について掘り下げていきたいと思います。

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(Some right sreserved by Russel Wong_Photo)

課題1 :大量生産・大量販売の現状を前提にした環境取り組みの限界

多くの企業では様々な環境対策が実施されています。これからの時代、環境制約が高まるにつれて企業の環境対応コストも上昇していくことが見込まれます。そこで、環境への取り組みを積極的に収益化する企業も増えてきました。中でも省エネは、企業・家計にとってのコスト削減につながるため、多くの取り組みが実践されています。
ここ数十年で企業の省エネ対策は劇的に進み、多くの省エネ商品が販売されてきました。しかし、日本の家庭部門における温室効果ガス排出量は結果として増加し続けています(下図参照)。「省エネ商品は普及したけれども温室効果ガスは増えている」、そんなジレンマが生じています。その背景には、省エネ商品への買い替え誘導政策があったのも一因ですが、その根底には、大量生産に支えられ入手しやすい価格に設定された省エネ商品が大量販売され、大量購入につながったと考えています。rubber_collum01.png

約15年間でエアコンは約4割、冷蔵庫は約8割エネルギー効率が上昇し、待機電力消費量は71%に低下。一方で、家庭部門におけるCO2排出量は増加傾向。その要因としては、テレビの世帯当たりの保有率が196%から226%に、エアコンの世帯当たり保有率が114%から264%に増加するなど、省エネ商品の大量消費が、結局は家庭部門における環境負荷を高めている一因になったのではないかと考えられます。


環境取り組みとして積極的に展開されたエコ製品が開発され大量に消費される時代の動きは、結果的に価格・機能・デザイン等の商品価値を決める要素の1つに、環境という新しい要素が取り込まれたことにつながりました。そのため、エコ製品というブランドが買い替えや消費行動の促進にはなっても、社会全体の環境負荷は高めてしまう結果となりました。

課題2:価格・機能・デザインの過当競争による経営資源の疲弊

現代、多くの企業は多様化する顕在ニーズを追いかけ、価格・機能・デザイン等で競争を続けています。これにより、商品は細分化され、商品サイクルは極めて短く、経営資源は疲弊しています。また、コスト削減要請と環境制約への対応のため、企業は一商品・一サービス提供のエネルギー利用や環境負荷を下げる努力をしています。そのため、資源を効率的に活用して作られた商品が、規模の経済によるメリットを最大限に活かし、大量仕入・大量生産・大量販売によって安価に次々と市場に投入されています。ところが、前回述べたように物質消費量/GDP=効率化の減少は限界を迎えています。つまり、資源利用効率は向上しているように見えても、社会全体が資源を利用して利益をあげる効率性はこれ以上向上できない状態を迎えているのです。2030年に向けて企業を取り巻く経営環境は現状のままだと厳しい状況が予測されます。

2030年を見据えた「環境戦略」とは何か~商品価値から企業価値へ~

2030年を見据えた環境戦略とは何でしょうか?今後の環境戦略とは「環境制約下で持続可能な経営を行う戦略」だと考えます。では、「環境制約下で持続可能な経営を行う戦略」とはなんでしょうか?

条件1:環境制約が高まり、環境対策費用は上昇します。そのため、環境戦略を今までの守り(コスト)のみで考えず、攻め(収益化・資金調達・本業への貢献等)にもつなげる設計が必要です。

攻めの環境戦略

自然環境の向上につながる対策に基づく収益化・資金調達・優秀な人材獲得

守りの環境戦略

資源の安定調達・環境配慮調達・コンプライアンス対応等リスク減少に関する環境制約への対応≒環境対策

条件2:省エネ商品の事例でご紹介しましたように、価格・機能・デザインの過当競争に巻き込まれないようにする必要があります。そのために、環境への取り組みを商品価値にとどめず企業価値向上に活用する戦略が必要となります。

企業価値向上

企業の発展と環境・社会・人間関係の向上がセットになっていて、その企業のサービス利用・出資・労働提供等の参画が持続可能社会につながる。

商品価値向上

価格・機能・デザインの過当競争の延長戦上

環境に対する取り組みを企業スタンスとして打ち出し、自社の独自性を確保することで、ステークホルダーから企業そのものを応援したいと思ってもらうことが重要です。この2つの条件を両立させる戦略こそ、2030年を見据えた環境戦略です。では具体的にはどのような事例があるのでしょうか?

第4回目は具体的な事例を紹介します。

※本コラムは(株)ポスティコーポレーションの専門誌「ラバーインダストリー 2015年9月号掲載」記事を一部改編して掲載しています。

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執筆者プロフィール

mrkarajama.jpg唐鎌 真一 (からかま しんいち)
アミタ株式会社 環境戦略支援営業グループ 
グループリーダー 

2006年12月、国内大手金融機関を経てアミタグループに合流。中央省庁(農林水産省、林野庁、水産庁、環境省等)および、地方自治体向け地域活性化促進事業を支援。企業向けに、環境管理業務のアウトソーシング、環境リスク低減支援、環境効果の向上支援等に関する環境戦略支援サービスを提供。

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