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第11回:有価無価のしくみが機能しない水銀管理~水銀条約による課題~堀口昌澄_連載「揺らぐ廃棄物の定義」

Some_rights_reserved_by_Heartlover1717.jpg本連載シリーズでは、廃棄物関連のコンサルタントや研修を数多く実施してきたアミタの主席コンサルタントの堀口昌澄が、連載12回を通じて、「揺らぐ廃棄物の定義」について解説します。 廃棄物を取り巻く法の矛盾や課題を理解することで、今後起こりうる廃棄物関連法の改正への先手を打つことができます。

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今回は有価無価で判別するしくみが機能しない水銀について解説いたします。
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水俣条約を廃棄物管理の観点から考える

かつて有用な素材があるとき有害物質として使用禁止・困難になることは何度もあった。ただし、DDT・PCB・フロン・アスベストなどはいずれも化学反応などにより人為的に作られたものであり製造をやめることができた。いつの日かこれらの物質は(環境中に拡散したものを除き)地球上から消え去ることになるだろう。

しかし現在水俣条約を受けて法整備が進んでいる水銀は元素だ。回収後に焼却などで分解されないため、無害化・安定化後に永久保管しなければならず、かなりのコストがかかる。しかも、一部の鉱物を製錬する過程で非意図的に水銀が生じるため、水銀の製造をやめることは製造工程が変わらない限り難しい。これまでの化学物質管理とは、少々様相が違う。

水俣条約について廃棄物管理の視点から注目すべき点を挙げよう。
代表的な点は水銀を含んだものを廃棄する際、それが有価販売できる場合に廃棄物処理法の適用を受けず法規制が及ばない点だ。例えば、水銀その他の有用金属を含むスラッジで有価売買されているものが挙げられる。また、排出時に廃棄物だった場合でも回収後に有価になった瞬間から規制が切れてしまう。

必要となる有害無害の観点

これまでは事業者の自主的管理により大きな問題なく処理されてきたが、条約に対応するためには切れ目を埋める基準を設けなければならない。水銀廃棄物適正処理検討専門委員会の報告書「水俣条約を踏まえた今後の水銀廃棄物対策について」でも、「廃棄物か否かに関わらず水銀等の環境上適正な保管が確保されるよう隙間のない制度設計を検討することが必要である。」と結論付けている。そのため、「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」で、水銀等又はこれらを含有する物であって、廃棄物処理法の廃棄物に該当しないものを「水銀含有再生資源」と定め、管理指針を設定し、定期報告を義務付けることとした。

また、水俣条約により水銀の使用が制限されて水銀価格が下がり、有価物として取引されていたものが廃棄物になる日が来ると考えられている。ということは、水銀は初めから廃棄物として保管・管理しておいた方が合理的かもしれない。それを見越してか、(現時点で有価物と思われる)水銀の貯蔵方法についても新たに基準を設けることになっている。水銀廃棄物とほとんど同じ基準になるだろう。

いまさらこのような措置が必要になるのは、廃棄物処理法が有害性を判断基準に含まず、有価か無価かで判断しているからだ。有価か無価かという判断基準は合理性を失いつつある。水銀については別の法律を作って対処できたが、それ以外の全ての廃棄物/副産物についても個別で法律を作るわけにはいかない。有価・無価の境界を超えた一般法の整備が必要なのではなかろうか。

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執筆者プロフィール

堀口 昌澄 (ほりぐち まさずみ)
アミタ株式会社 
環境戦略デザイングループ 環境戦略機能チーム
主席コンサルタント(行政書士)

産業廃棄物のリサイクル提案営業などを経て、現在は廃棄物リスク診断・廃棄物マネジメントシステム構築支援、廃棄物関連のコンサルタント、研修講師として活躍中。セミナーは年間70回以上実施し、参加者は延べ2万人を超える。 環境専門誌「日経エコロジー」にも連載中。環境新聞その他記事を多数執筆。個人ブログ・メルマガ「議論de廃棄物」も好評を博している。大気関係第一種公害防止管理者、法政大学大学院特別講師、日本能率協会登録講師。

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