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コラム

グローバル市場で"選ばれる"ために日本写真印刷が進めるCSRマネジメントおしえて!きかせて!環境戦略

photo_1.jpgあなたの会社では「そもそも、何のためにCSR活動を行うのか」といった本質的な議論がないまま、取り組みメニューばかりが立てられてはいないでしょうか。CSRご担当者様から、本業やそれぞれの会社の特長を、CSRにどう反映させるかお悩みの声もよくうかがいます。

そこで今回は「グローバル市場で"選ばれる"ためのCSR」をテーマに、タッチパネル製造などでグローバル展開されている日本写真印刷株式会社のコーポレートコミュニケーション室長の谷口氏にお話をうかがいました。

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「基本的CSR」と「戦略的CSR」で企業価値の向上を目指す

石田:統合報告書『2015 NISSHA CSR報告書』ではCSRを「基本的CSR」と「戦略的CSR」に定義したと紹介されていますが、内容について教えてください。

谷口氏:はい。「基本的CSR」は、グローバル基準を遵守し、リスクを低減することとしています。例えば、国連グローバル・コンパクトへの署名や、ISO26000などのフレームワークの取り込み、EICC(電子業界のCSRアライアンス)の準拠などで、人権や環境の分野におけるリスク低減を図っています。

一方「戦略的CSR」は事業活動を通じて社会課題を解決することで、中長期的な企業価値を創出すると同時に、持続可能な社会の構築に貢献することとしています。例えば、さまざまな社会的課題の中から当社が優先して取り組むべきマテリアリティ(重要課題)を特定し、それらの解決に向けて取り組むことで、企業価値の向上を目指しています。

分かりやすくいうと、グローバル市場においてお客様に選ばれる必須条件をクリアするために取り組むのが基本的CSRで、市場のなかでお客様に一番初めに選んでいただくために取り組むのが戦略的CSRといえます。

石田:なるほど、グローバル市場の中のポジションを確立しつつ、企業価値を高めていくために、CSR領域を定義されたのですね。どのような経緯があったのでしょうか?

谷口氏:日本写真印刷は出版や販売促進向けの印刷からスタートした会社ですが、印刷というコア技術を核に、今ではタブレット端末やスマートフォン、ゲーム機に搭載されるディバイスや自動車の内装材、家電に採用される産業資材など、様々な分野で事業を展開しています。

また、弊社の売上は7割以上が海外での売上です。お客様はグローバルに展開されており、社会的責任を果たすことを重視される企業様が多くいらっしゃいます。ICT(情報通信技術)業界などが典型ですが、我々サプライヤーに対しても社会的責任を果たすようにとの要請があります。

日本国内では身近に感じられないかもしれませんが、例えば児童労働など、グローバル社会では様々な社会課題が問題視されており、当然のこととして取り組みを求められます。お客様に選ばれる企業になるためにも、社会的責任を果たしていくためにも、日本国内の法的要求事項に対応するだけでなく、グローバル社会の基準に積極的に対応していくことが重要であると考えています。

CSRを推進する体制とマネジメントシステム

石田:日本写真印刷のCSRを推進する体制について教えてください。

谷口氏:従来環境保全委員会や、情報セキュリティ委員会等はありましたが、2015年4月に各部会を再編し、代表取締役社長を委員長とするCSR委員会が設置されました。

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(日本写真印刷CSRレポートより)

CSR委員会は「企業倫理・コンプライアンス」・「BCP」・「労働・人権」・「安全衛生」・「環境」・「情報セキュリティ」・「品質」・「お客さま満足向上」の8つの部会で構成されています。 

各部会ではそれぞれが戦略的/基本的CSRの取り組みテーマを掲げ、目標達成に向けた評価指標を設定したマネジメントシステムの運用を基本としています。特に、戦略的CSRテーマについては社長が出席する事業戦略の検討会議で、毎月の進捗を報告しています。

石田:現在の体制でマネジメントシステムを展開・運用してみて、手応えはいかがですか?

photo2.jpg谷口氏:良かったポイントが3つあると思います。

1つ目のポイントは社内でCSRに関するコミュニケーションが活発になったことです。マネジメントシステムを通じてPDCAサイクルが進むと、各担当者にとって進捗や成果が見えやすく、より良くしようというモチベーションに通じると感じています。

2つ目のポイントはそれぞれの取り組みが安定して推進されるようになりました。例えば、担当者の異動があった場合でも、これまでの取り組みの経緯や手順が明確になっているので、後任者にスムーズに引き継げます。

3つ目のポイントはEICCなどグローバル基準の導入を進めることで、特に管理部門の視野が広がりました。これまでは、どちらかというと事業部の要望に応じた人材育成計画が組まれる事が多かったのですが、今はグローバル視点で求められる人物像も育成計画に盛り込まれています。これらによって、社会との相互信頼に基づいた関係が形成されることを期待しています。

印刷技術をコアとして、新しい価値創出に挑む

石田:CSRマネジメントの今後の展望はいかがですか。

谷口氏:GRIガイドラインを参考にして、マテリアリティ(自社における重点項目)の特定を行っています。マテリアリティに対する取り組みの進捗をみることと、中期経営計画の進捗をみることは同じことであると思います。自社にとって、社会にとって重要なことは何か、2軸を設けて進捗をみることは社会的責任の果たし方を示すことにつながります。また、将来的なリスクについて考えるので、事業戦略とも深い関わりが生じます。

また、日本写真印刷では未来を見据えて、社会に新しい価値を提供できる製品づくりを目指しています。創業者の鈴木直樹は印刷事業を始めるにあたって、「他社が手がけない美術印刷をやろう」との理想を掲げました。この創業者の思いがこれまで様々な分野で事業を行い、成長を続けてきた弊社の差別化戦略の原点とも言えます。

印刷を通じて培った技術力を活かして、これまでの市場になかった製品やサービスを社会に提供していくことで、弊社は企業として成長を続けてきました。最近、「ライフイノベーション事業」という4つ目の新しい事業を立ち上げました。従来になかった新しい医薬品投与の技術開発や、水素燃料電池自動車に採用されたガスセンサーの技術開発などを行っています。

これからもこうした持続的な成長を目指して、よりお客様から"選ばれる"企業になるためにはどうすればよいのか、未来を見据えた中長期的な視点から取り組み、会社全体でCSRを推進していきたいと考えています。

日本写真印刷株式会社から学ぶ、CSRマネジメントのポイント まとめ
  • CSRを「基本的CSR」と「戦略的CSR」に定義することで、活動を拡充させつつ企業価値向上を目指す。
  • 組織を再編し、マネジメントシステムによる継続的改善や新たな運用・展開によってCSRリスクの低減を着実に実行する。
  • グローバル基準を取り入れることで、関係者の視野が広がり人材育成にも反映されるとともに、グローバル社会でお客様に選んでいただける実力を獲得できる。
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話し手プロフィール

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谷口 哲也 氏
日本写真印刷株式会社

コーポレートコミュニケーション室長

大阪府出身。1982年、日本写真印刷に入社。出版・広告などの印刷営業を始めに、秘書・人事・総務・広報・IRなどを経て、現在の、広報部とCSR部で構成するコーポレートコミュニケーション室長に至る。2016年頭の社長訓示にあった「挑戦(Challenge)×速さ(Speed)=成果(Results)」の公式の頭文字がCSRになることを発見。気分上々でCSRを推進中。

聞き手プロフィール

profile_ishida.jpg石田 みずき
アミタホールディングス株式会社
経営戦略グループ マーケティングチーム

京都府出身。滋賀県立大学環境科学部を卒業後、アミタに入社。大学時代は、一般廃棄物の分別に関する研究を行い、「この世に無駄なものはない」というアミタの理念に共感する。現在は、マーケティングチームにて、非対面の営業・セミナー企画・ウェブサイトの運営などを担当。

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