排出事業者の行政への定期報告~多量排出事業者計画・実施状況報告書~ | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

環境戦略・お役立ちサイト おしえて!アミタさん
「おしえて!アミタさん」は、未来のサステナビリティ経営・まちづくりに役立つ情報ポータルサイトです。
CSR・環境戦略の情報を情報をお届け!
  • トップページ
  • CSR・環境戦略 Q&A
  • セミナー
  • コラム
  • 担当者の声

コラム

排出事業者の行政への定期報告~多量排出事業者計画・実施状況報告書~BUNさんの「元・行政担当者が語る 廃棄物管理のイロハ」

Some_rights_reserved_by_e-magic1.jpg既に終了されている方も多いと思いますが、この季節になると排出事業者の頭を悩ませる「産業廃棄物管理票(マニフェスト)交付等状況報告書」と「多量排出事業者の計画・実施状況報告書」。前回は、産業廃棄物管理票(マニフェスト)交付等状況報告書を取り上げました。今回は「多量排出事業者の計画・実施状況報告書」を取り上げます。

「多量排出事業者の計画・実施状況報告書」は、普通産業廃棄物なら年間1,000トン(特管産業廃棄物は50トン)以上の事業所だけが該当になりますので、関係しない方も大勢いらっしゃると思いますが、「多量」の定義、「年間発生量」の定義を間違えたまま運用していると罰則の対象となる可能性があり、注意が必要です。

本コラム一覧はこちらから

様式に従った報告書の提出

「多量排出事業者計画・実施状況報告書」も該当する事業者は6月30日までに「当該年度の計画」と「前年度の実績」について報告書を提出しなければなりません。この記載方法については、環境省もマニュアルを出していますし、各自治体も記載例等をHPで掲載してますから、今回はこれにかかわるトリビア的な話などをご紹介します。

「多量」の定義、該当期間

まず、「多量」ですが、これは「(普通)産業廃棄物は年間1,000トン以上、特別管理産業廃棄物は年間50トン以上」排出する事業所が対象です。(以降、普通産業廃棄物を例示として記載していきます。)ですから、年間990トン排出している事業所は対象になりません。

「多量排出事業者」の定義ですが、「前年度の発生量が1,000トン以上」としています。よって、平成26年度の排出量が、1,100トンであれば、平成27年度は「多量排出事業者」として計画策定と実績報告の義務が出てきます。この事業者の平成27年度の排出量が900トン(1,000トン未満)であったとしても、平成27年度の実績報告は提出しなければなりません。しかし、平成28年度の計画は報告義務がなくなります。したがって、実際には平成28年度の排出量が1,500トンであったとしても、平成28年度の実績は報告義務がありません。(平成29年度の計画策定義務が生じます)

まとめると、こちらの表のようになります。

H26 H27 H28 H29 H30
排出量 (t) 1,100 900 1,500
多量排出事業者 該当 非該当 該当
前年度実績報告

必要
(H27実績)

不要
(H28実績)
必要
(H29実績)
当年度処理計画策定 必要
(H27計画)
不要
(H28計画)
必要
(H29計画)

まぁ、言ってみれば、「タイムラグ」が出てしまう、ということになります。ちょうど、年間排出量1,000トン前後の事業者にとっては、悩ましいところではありますが、自主的に計画を策定し、実績を明確にしておくことは、とてもいいことなので、法的に該当しなくても、計画策定、実績のとりまとめはお薦めです。

勘違いしやすい「排出量」「年間発生量」

これを正確に理解していない方が時折いらっしゃるようです。前出のマニュアルでは次のように定義しています。「発生量は、一般的には廃棄物の処理として何らの操作も加えない時点での量を指す。」

たとえば、産業廃棄物が建物を解体したときに発生する「コンクリート片」などは、発生場所で破砕行為を行っても、その「量」(重量)は変わりませんので、これは誤解のしようがありません。ところが、自社工場に排水処理施設を設置していて、そこで汚泥が発生する場合などは、注意が必要です。たいていの工場では、「汚水」のままでは膨大な量になりますから、一旦沈降させて、脱水機にかけて、量を少なくし「脱水汚泥」という形で、専門業者に処理を委託していると思います。マニフェストに記載される「量」は、あくまでも「処理委託量」ですから、「脱水汚泥」の量が記載されます。そのため、その工場から「発生する汚泥量」を「処理委託量」と勘違いしている場合があるんですね。

たとえば、水分99%の汚泥を脱水機にかけて水分70%の「脱水汚泥」にして委託するとします。この時報告義務がある「年間1,000トン以上」という基準は、脱水する前の「水分99%の汚泥」量です。

理屈としては、「脱水」という行為は、「減量」を目的とする「廃棄物の中間処理」であるということです。すなわち、既に汚泥が発生していて、脱水という中間処理を排出事業者が行っている、と捉えているんです。処理委託時水分70%の脱水汚泥300トンであっても、もともとの水分99%の汚泥の数量は9,000トンにもなり、1,000トンを大幅に超えてしまいます。

「うちは、産廃処理業者に委託している量は300トンで1,000トンをはるかに下回っているから関係ないよ」と勘違いしていると、「あなたの事業所は報告義務があるのに報告していませんね。罰則第33条第2号、20万円以下の過料です。」なんてことになりかねません。特に「汚泥」が排出される事業所では注意が必要ですね。

関連情報
執筆者プロフィール

長岡 文明 (ながおか ふみあき)
アミタ株式会社
特別顧問

山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も務める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)。

BUNさんの「元・行政担当者が語る 廃棄物管理のイロハ」 の記事をすべて見る
このページの上部へ