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コラム

半径5mからの社会変革【第3回】 LGBT、やらなきゃ損する!? ダイバーシティ推進の突破口半径5mからの社会変革

florence3-001.jpg2015年3月、東京渋谷区が同性カップルに対し、結婚に準じる関係と認める「パートナーシップ証明」を発行する全国初の条例案が成立し、日本でも同性婚を受容する一歩が踏み出されました。日本社会においても人口の5%程度の人がLGBTなど性的マイノリティに該当すると言われており、20人に1人の割合です。

個々の違いを受容し「多様性」を活かしていくダイバーシティの考え方がある程度広がった今、企業においても女性活用や障害者雇用といったテーマと共にLGBTはどのように対応していくべきでしょうか。今回は同性婚など多様な家族形態に対応すべく就業規則を変更した取り組みを紹介していきます。

※LGBT:性的マイノリティのうち、同性愛者(レズビアン、ゲイ)、両性愛者(バイセクシュアル)、性別違和(トランスジェンダー)の頭文字で、その他多様性も含む人々を意味する。

写真:全社会議の様子

【半径5mからの社会変革】全6回はこちら

【事例紹介】

多様な人材を活かすため、いろんな家族形態を受容する就業規則へ

florence3-002.jpgフローレンスは現在スタッフ数300名ほどの組織規模。組織のビジョンとして「多様性によって社会的イノベーションを起こす組織」を掲げ、多様な人材を歓迎しています。多様な人材とは、女性も男性も、子育てしている人もしていない人も、障害のある人もない人も・・・そして"多様な家族形態"もそのひとつと捉えています。

私たちの事業は「子育てと仕事の両立」を支援し、さまざまな人が活躍する社会を目指しています。同時に、社会を変えるには、まず自分たちの組織という小さな規模から理想を体現することも大事だと考えています。合言葉は「半径5メートルから社会を変える」です。

2015年4月、多様性ある組織づくりの一環として行ったのが「就業規則」の改定です。
慶弔時の休暇について、従来の就業規則では、対象となるのは

  1. 本人の結婚
  2. 子女の結婚
  3. 配偶者の出産
  4. 配偶者、子、実父母の死亡 ・・

といった具合に定められていました。今回の変更で、慶弔休暇を付与する対象に、「事実婚」「同性婚」を含むことを明記しました。それにより「結婚」「配偶者」の意味合いは拡大し、「結婚」は法律上の入籍だけでなく、「事実婚」「同性婚」も対象とし、「配偶者」は「婚姻、事実婚もしくは同性婚の相手方」を指すと変更しました。

*社内で設けた事実婚・同性婚の定義
事実婚:未届の妻または夫と世帯を同一にすること
同性婚:同性のパートナーと挙式を行うこと、あるいは結婚関係であると相互に認めること

きっかけは社員の声。足元の小さなことから変えていく

florence3-003.jpg今回の改定はいずれも社員の声から実現したものです。社内には事実婚の社員もおり、またLGBT当事者の社員も在籍しています。

LGBTについて社内施策を進めたのは2014年にLGBT当事者である男性が職員として入社したことがきっかけでした。本人の要望もあり、社員向けに講師を招いてLGBTについて正しく理解する研修を実施したり、採用時の募集文に「LGBTなど性的マイノリティの方も安心して働ける職場です」といった表記を入れたり、履歴書フォーマットの「性別」欄をトランスジェンダーに配慮した表記「性自認」へ変更するなどです。当事者社員から職場がどうあれば仕事しやすく過ごしやすいのかヒアリングしながら、小さなことから進めてきました。就業規則に同性婚を対象として盛り込む変更についても明智と一緒に検討を進めてきました。

今回の就業規則変更はたくさんのマスメディアから取材を受け、テレビでも報道してもらいました。その反響の大きさには私たち自身も驚かされましたが、企業・民間だからこそ手が届く範囲のことから変えていき、世論を創っていくことの重要さに気付かされました。行政レベルでは動きが遅いテーマであるなら尚のことです。

この1年、こういった施策を少しずつ進めてきて、社内にも少しずつ変化がありました。「実は自分も当事者。カミングアウトはしないけどLGBTに配慮された取り組みがうれしかった」と明かす社員も何人かいたそうです。「20人に1人」と言われているように、実は身近なところにLGBT当事者はいるのです。

画像:LGBT当事者であることを公表して働く社員の明智

LGBT施策の意外な副次効果

florence3-004.jpg企業の人事の方からは「うちは女性活用さえ不十分なのに、LGBTへの対応なんてまだとてもとても・・」という声をよく聞きます。しかし、ダイバーシティを推進する上でLGBTというテーマを取り入れてみることは、私たちの実感としてもぜひお勧めしたいです。

LGBTについての企業研修や講演を行う「NPO法人 虹色ダイバーシティ」村木代表の話で印象に残っているエピソードがあります。

ある企業の担当者の方がLGBT研修を行った後日談として、こんなことを言ったそうです。
「女性活用に行き詰っていた時にLGBTというテーマに目を向けてみたら、社内の雰囲気がずいぶん良くなった。社員が同僚にやさしくなり、LGBTがダイバーシティの突破口になった。」

これはとても興味深いエピソードです。ここ数年の日本企業の「ダイバーシティ推進」といえば、やはり「女性活用」です。それほど課題が大きいということの表れでもあります。一方LGBTは、今のところ「変化球」です。企業で女性活用が熱心に取り組まれることは素晴らしいことですが、どうしてもそれだけだと、女性や子育て中の社員など特定の層だけが注視されがちで、当事者も周りも少し窮屈に感じる部分も出てきます。今LGBTには、そういうダイバーシティ・スランプを少し解きほぐし「風穴を開ける」効用があるのかもしれません。

本来ダイバーシティとは一人ひとりの「違い」を受容して活かしあうこと。自分とは違う同僚を思いやり、互いの価値観、その人が大事にしていることを受容しあうことの大切さに立ち返るきっかけをくれるのかもしれません。

フローレンスの施策を含め、一企業のアクションの一つひとつはごく小さなことかもしれません。しかしその試行錯誤が小さくても確実に社会の変化となり、それがいい影響を創発し合って、やがて社会の大きな変化につながっていくのだと思います。

関連情報
プロフィール

florence_fujita.jpg藤田 順子(ふじた じゅんこ)氏
認定NPO法人フローレンス
経営企画室 マネージャー

前職では広告会社で商業施設や大手通信会社のマーケティングに携わる。在職中、実母の看病で介護休職した経験をきっかけに、介護や子育てなど「家族のケア」を抱えるライフステージにある人が、仕事を辞めることなく家族や生活を大切にできる日本社会にしたいと課題意識を持つようになる。
2010年、子育てと仕事の両立をはばむ社会課題の解決を軸に事業展開するNPO法人フローレンスに参画。ひとり親家庭の支援、被災地の子どもの学習支援などの活動に携わり、応援してくれる人を活動に巻き込むソーシャルプロモーションに取り組んでいる。

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