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コラム

東大院生レポート第8回:インドの生きている里山利用 ~インドの調査報告~長濱さん@東大院生レポート

6月1日からインドのウッタラーカンド州に森の調査に来ています。調査の始まりは、いつも通りにお腹を壊しつつも、現地の風土と食べ物に慣れてくる頃に帰国が近づくという具合。山村では泊まるたびに虫(現地でbed bagと言われている夜行徘徊性のダニ)に刺され、かゆみと闘っています。今回は参与観察中の散歩の時に、まさかの!野犬にかまれ、狂犬病の危険を回避するため数日置きにワクチンを接種している状況で、アドベンチャーに満ちた調査滞在となっています。

今回は「森林パンチャーヤト:Van(Forest) Panchayat」(地域住民による自治的森林管理組織)の制度を取り入れている3つの村に滞在し、英語の通訳を介して、森林資源の依存度合いや森林利用と管理について、半構造的面談調査と森林資源調査(樹種の同定と林分材積の測定)を行っています。第2回目では、インドの森林共同管理の話題として「森林パンチャーヤト」について書いたので、今回はさらにふみこんで、ヒマラヤ山麓に住む地域の人たちと森林とのかかわりについてレポートさせていただきます。

インドに到着 ―モンスーン(雨季)に入るこの時期は果物が食べ放題!

nagahama8-002.jpgデリーから東北へ250キロ移動して、ヒマラヤ山麓の麓にあるウッタラーカンド州の州都ディラドーンに到着しました。緯度とともに標高も約700mと高くなるので、デリーでの45度を超える日もある暑さと比較して15度近くも気温が下がり、まるで避暑にきたようです。あちこちの庭の樹木には、マンゴやライチが実を大きく実らせているのが観察でき、市場にいくと1個あたり20~30円でマンゴを手に入れることができます。さらに奥地へ進み、1000mほど標高が上がった樹林地に入ると、野生のアプリコットやカッファル(ベリー類)等を、この時期は飽きるほど食べることができます。

写真1:カッファル(Myrica esculenta)の実

地域のコミュニティ・フォーレストリー
―森林資源に依存して生活する人たち&森林ユーザーとしての女性

nagahama8-003.jpg森に住む地域の人たちが樹木から受ける大きな恵みは、果物などの林産物にとどまらず、薪炭材となる枯れ枝葉や家畜のえさとなる飼い葉が挙げられます。この時期は、薪の収集は週に数回、緑色の葉や草は毎朝、鉈をもって樹林地へ枝や草を刈取りに行く女性の姿が多く見られます。私も飼い葉を背負わせて頂いたのですが、20キロを超える重さで容易には歩けませんでした。また調査した9割以上の世帯が、ヤギや牛などの家畜を飼っていて、毎日、放牧に出かけています。これも比較的年配の女性が群れを管理している様子があちこちで観察できます。これからは森林と女性のかかわりにもっと着目していく必要があると考えています。

写真2:飼い葉を背負う女性

限られた資源の利用には規則の順守が必要

nagahama8-001.jpgのサムネイル画像どの世帯にも電気が引かれていますが、面談した約7割の世帯がLP(プロパン)ガスを所有しておらず、ヒアリング調査から高価なLPガスはできるだけ使用せずに、薪炭材を多く利用していることがわかりました。森林資源を持続的に利用するためには、その管理と利用のルールが必要です。ウッタラーカンド州においては1931年から「森林パンチャーヤト」が制度化され、州政府の認可のもとに地域の自治的権利が確立されています。各村において異なる規則があり、森林監視官を雇用して地域の規則を守っている村もあります。こうした村落レベルでの規則の順守徹底を管理しているサルパンチ(森林パンチャーヤトの長)のリーダーシップ性や森林管理委員会のマネジメント能力に着目して、各村落の比較から資源管理に必要な特性を、調査により整理しているところです。

写真3:森林パンチャーヤトの会合に参加

世界の森林「世界の木材使用の5割以上は薪炭材」

nagahama8-005.jpg世界の森林利用に目を向けると、2000年から2010年の年平均で520万haの森林が消失しており、森林面積が減少しています。熱帯地域やヒマラヤ山麓やなどで森林とともに生きる人たちにとって、森林資源は生活に不可欠であり、世界で生産される木材のうち、約53%は薪炭材(薪や炭などの燃料用)として使われています(FAOSTAT 2011)。また薪炭材の約半数は、開発途上地域で生産されています。世界の木材生産量の約6割は、発展途上国で生産され、そのうち約8割は薪炭用材です。先進国ではこれが逆転し、産業用材が8割以上を占めます。森林資源に依存して生活している人たちが、世界中に多く存在しており、私たちのエネルギー消費とは異なることを決して忘れないでください。彼らは、再生可能な森林資源から日々のエネルギーを得て生活しているのです。

図1:先進国と途上国に分類した用材利用
http://www.shinrin-ringyou.com/forest_world/seisan.php

プロフィール

nagahama_pro.jpg長濱 和代(ながはま かずよ)氏

東京都の小学校教員をしていた2006年に、(株)花王のCSRを通じて、国際環境NGOアースウォッチによる途上国の森林プロジェクトに参加して、地球環境の劣化を目の当たりにして以来、環境教育の可能性を模索中。2013年3月に筑波大学大学院生命環境科学研究科で環境科学修士。同年4月から東京大学大学院・新領域創成科学研究科博士課程に在籍中。

<研究テーマ>
海外の研究調査地は北インド・ヒマラヤ山麓に位置するウッタラーカンド州で、住民参加による森林管理の事例として森林パンチャーヤトを研究している。インドは今後世界中で最も多い人口を抱え、経済的かつ地球環境的変化を遂げる国の一つとして注目している。

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