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コラム

SDGsの実践に欠かせない"バックキャスティング思考"とは? 初心者向けSDGsから未来の市場を創る!~社会を変える事業を創出し、社会から選ばれる企業を目指す~

180508_001.jpg企業経営にて、「SDGs」をどのように活用するのか。最終回となる今回は、これまでの連載内容を踏まえ、SDGsを競争力のある戦略・戦術に落とし込む手法を解説します。

※本記事は、企業の事業開発者のためのWebメディア「Biz/Zine」へ、寄稿した内容を一部編集し、掲載しています。

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未来を起点とし、今すべきことを考えるバックキャストとは?

国内市場の縮小や、グローバルレベルでの競争が高まる中で、従来の延長線上での経営や事業展開に危機感を抱いている方も多いのではないかと思います。社会状況や自然環境の変化を予測し、将来市場を見通した上で、これまでにないビジネスの選択肢を準備しておくことは、企業の成長に欠かせません。

しかし、重要性を認識していても、実行に移すことは困難です。私たちは、既存の製品を「より軽く」「より燃費を良く」していこうといった、従来のスペックとの比較で生まれる指標から一旦離れる必要があります。しかし、その指標から離れた途端、次にどこに軸を置いたらよいのか、迷ってしまうのではないでしょうか。

では、「従来の延長」とは別の軸に立った指標を打ち出すには、何を足掛かりに考えればよいのか。ここで、登場するのがSDGsです。不透明で不確実な将来を見据え、この新たな選択肢を準備するために、SDGsは一つの有効な指標となり得るのです。

SDGsを自社の次なる選択肢のためのイノベーションのドライバー(駆動装置)として活用するためには、以下2点が必要です。

  1. SDGsに対する正しい理解を深め、生きたリテラシーを獲得すること
  2. SDGsを実践に落とし込むスキルを獲得すること

そして、この2点に通じる注目すべきひとつの手法に、「バックキャスティング(backcasting)」思考というものがあります。この手法は、「未来」を起点として、そこから逆算して「今」何をすべきかを考えることです。これと対をなすのが、「フォアキャスティング(forecasting)」思考で、この手法は、「今」を起点とする思考です。

180508_002.jpg出典:「事業構想」Webサイトより

バックキャスティングを実践する「4つのステップ」とは?

バックキャスティングのテクニックとしては、残念ながら決められた手順やツールがある訳ではありませんが、推奨する検討ステップを記載します。

■STEP1 望ましい未来像の描写(ビジョン)

人口動態、環境制約、技術革新など、メガトレンドを踏まえて、アジェンダ(検討範囲、テーマ、目標年度等)を設定し、できるだけ具体的で魅力的な未来像を描く(豊かな想像力は必要だが、空想や幻想にはならないよう注意が必要)。

■STEP2 「現在」における課題と可能性の洗い出し

現在の状況を描写し、言語化する。そして、その現状に潜む課題(変革を阻む要因)と可能性(今後生かせそうな要素)を様々な視点・視野で列挙する。

■STEP3 S/V/Tのアクション項目

望ましい未来像の実現に向けて、現在の課題と可能性を踏まえ、必要なアクションを多数挙げる。最初は時間軸を気にせずに多数の項目を挙げることに集中する。さらに、アクションをS/V/Tで整理する。

S=System(システム)・・・法規制、社会システム、ビジネスモデルなど
V=Value(価値観)・・・価値観、意識、マインドセット、教育など
T=Technology(技術)・・・道具、ツール、技術、技術のプロセスなど

■STEP4 アクション項目の時間軸への配置

2018年~2030年の時間軸に、アクション項目を配置する。アクション項目のつながりを整理し、不足する領域が現れれば、アクション項目を追加する。重点的に取り組む領域・項目を浮かび上がらせ、優位性を獲得できる可能性がある領域へ選択と集中を促す。

実施ステップのポイントは、「望ましい未来像」を明確に描くことです。どのような会社であり、顧客に対してどのような価値を提供したいのか、各STEPは単純に進まず、進んだり戻ったりを繰り返しながら、未来像からアクションまで一連のストーリーが描けるかどうかを深く考察していきます。

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SDGsを契機に自社の未来を創造する!「第5の競争軸」(サステナビリティ)の出現

今後の事業の方向性や戦略を考えるとき、顧客や競合を分析することは重要ですが、あまり今起こっていることを意識しすぎると、現状の延長線の枠を超えられず、新しい軸での競争優位性を生むことは困難と言えます。付け加えると、いま自社で見えている状況は、他社も同様に見えているという点に注意が必要です。結局は同じ軸の線上での競争に陥ってしまうことなり、現状の分析を続けても消耗戦が続くことになります。市場環境や競合との関係の中でポジションを取り、相対的に顧客への提供価値を見極めることも重要ですが、絶え間ない変化が起きるこれからの時代では、自社の提供価値を定義することがより重要となり、それが競争力の源泉になるのだと思います。

SDGsが国連で採択されて、間もなく3年が経過しようとしています。そして今、世界的な環境制約が高まり、社会課題が深刻化する社会において、持続可能性(サステナビリティ)の追求は、新たな企業の優位性を確保する競争軸になっています。SDGsを戦略的に事業に落とし込む好事例も増えてきましたが、他社の真似事をして自社が同じように着想し実践できるかは別の話です。企業がSDGsを戦略的に取り組むには、未来への豊かな想像力と自らの意思や価値観が最も重要になります。賽は投げられました。SDGsをイノベーションドライバーとして、事業に変革をもたらし、世界中の人々の暮らしをより豊かなものにしていきましょう。

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アミタの支援サービス「The Sustainable Stage (TSS)」

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アミタの支援サービス「The Sustainable Stage」では、廃棄物管理を始め、脱炭素にかかる施策(CDP質問書への回答、SBT、RE100への取組み・実践体制の構築、支援など)、SDGs、生物多様性、バイオマス発電など企業の持続可能性を環境面から支えるための支援を行っています。

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    執筆者プロフィール(執筆時点)

    Mr.Suetsugu.png末次 貴英(すえつぐ たかひで)
    アミタ株式会社
    環境戦略デザイングループ グループリーダー

    これまで100社以上の企業に、サステナブル経営のためのビジョン策定、環境戦略立案、CSR・CSVコンサルティング、環境取り組みのアウトソーシングサービス等を提供している。森林管理と酪農を組み合わせた「森林酪農事業」の立上げや、大型バイオガス発電施設の工場長、産業廃棄物のリサイクル営業等の経験を活かした、現場感・手触り感のあるコンサルティングが持ち味。

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