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コラム

持続可能な地域資源活用の成功例|ポエマ計画~アマゾンの畑で採れるメルセデス・ベンツ~サステイナブル コミュニティ デザイン ~2030年に向けた行政・企業・住民の連携~

praia grangi0001.JPG人類は気候変動・資源枯渇・人口増加という未体験の環境下に向かっています。また、日本は、少子高齢化・労働人口減少・税収減少などで、今のしくみでは社会インフラの提供が難しい状況を迎えつつあります。そのような中で、持続可能な社会・コミュニティ デザインを行政・企業・住民の連携でどのように作っていくのかは、非常に重要なテーマです。

そこで本コラムでは、NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)理事長の泊みゆき氏に、サステイナブル コミュニティ デザインについて、参考事例などを交えて連載していただきます。第1回は、泊氏がBINを設立するきっかけとなった、ブラジルのポエマ計画について、ご紹介いただきます。(写真はプラヤ・グランジ村から見たアマゾン川)

スラムの問題を解決するには、農村で暮らせる産業が必要

poema office0001.JPG私がポエマ計画を知ったのは、20年以上前でした。当時、私はシンクタンクで働いていましたが、まだバブルの雰囲気が残るころ、世界で最も高い所得を得ている企業や官庁の人々は、あまり幸福そうではありませんでした。

特に、長時間労働で取り組んでいる仕事は、果たして人々の役に立っているのか、幸福にしているのか、怪しい内容も多く、しかしそういった仕事ほど多額のお金がつぎ込まれていました。日本のシステムは何かがおかしい、ここまで来たけれど方向が間違っているのではないか、という想いを抱いていたところに出会ったのが、ポエマ計画でした。(写真はパラ大学構内にある、ポエマ事務局オフィス前で写っている泊氏 取材当時の写真)

ポエマ計画は、ブラジル、アマゾンの農村と大学、ドイツ企業、自治体、国際機関などが協力して成功させた持続可能な地域発展プロジェクトです。この話は、アマゾン河口にあるブラジル有数の大都市、ベレンのスラム街から始まります。

なぜ、電気や上下水道が整備されていない劣悪な生活条件のスラム街に暮らすのか?人々は、農村で食べていくことができず、都市に移ってきました。しかし、高等教育を受けていない場合には、まともなアパートは高すぎて借りることができません。他に選択肢がなく、そこで暮らしていたのです。このことを知ったパラ大学の研究者たちは、大学の工学部の助けを借りて安価にスラムに水道を引きますが、農村で暮らせる産業をつくらなければ、問題の根本的な解決にならないことに気づきます。

自前の水道工事で問題解決。自分たちにもできる!を村の人々が理解した

当時、ブラジルの農村の多くには水道がなく、きれいな水が手に入らないことから、子どもが病気になり、死亡率も高かったのです。

アマゾン河口のマラジョー島にあるプライヤ・グランジ村の人々は、パラ大学の助けで水道を導入します。その際、経費節約のために、自分たちで設置工事を行いました。それまで村人たちは、自分たちには問題解決能力がない、と思っていました。難しい問題は、政府の役人や、技術者や、神様が解決するものだと考えていたのです。しかし、自分たちの手で、水道を引くことができ、自分たちには解決能力があることに気づいたのです。

ココナッツの収量を増やしたアグロフォレストリー農法

Agroforestry.JPGプライヤ・グランジ村では、トラクターで耕すアメリカ式農業が土地に合わず、土壌が流出し、植えたココナッツの収量はどんどん落ちていました。村の人々は、パラ大学から勧められ先住民族が行っていた持続可能なアグロフォレストリー農法<様々な樹木や野菜を天然の森と同じ構造で植える方法>をココナッツ畑に取り入れました。ココナッツの木の間にバナナやオレンジ、豆やカボチャなどを植えると、バナナの葉が土に落ち、鳥が虫や種をつついて糞をし、土壌の流出が軽減されました。その結果、畑は豊かな腐葉土に変わり、ココナッツの収量は4倍に増えました。(図はクリックすると拡大します。)

出典:Thomas A mitschein Equipe Tecnica do POEMA POEMA EM Busca de Alternativas Contra a Destruicao

捨てられていたココナッツの殻が、メルセデス・ベンツの部品へ

さらに、村にどう収入源をつくるのか、関係者で喧々諤々(けんけんがくがく)議論されました。

ドイツの緑の党の議員、ホス氏はアマゾンの熱帯林に関心があり、ブラジルに来た際、ドイツ人のミトシャイン/パラ大学教授と会いました。持続可能な農村開発に関心があった二人は、大いに意気投合します。ホス氏は議員になる前、メルセデス・ベンツ社の組立工で労働運動の闘士でした。「村にある資源は何か」検討した結果、「昔、ココナッツ繊維から自動車部品をつくっていたベンツ社に話を持っていくことはできる」ということになりました。そして話を持ち込まれたベンツ社はちょうど、環境対策に力を入れようとしていたところだったのです。ホス氏がベンツ社にいたときは対立することもあった幹部との対話でしたが、お互いに、「持続可能な事業の実現」という点で利害が一致しました。

こうした人のつながりで、プライヤ・グランジ村の近くに部品工場ができました。農産物を付加価値化して売ることで、雇用が生まれ、都市に出稼ぎにいかなくてもよくなりました。面積あたりの収量が上がったため、新たに森林を開拓する必要もなくなりました。こうして、社会、経済、環境それぞれの面で成り立つプロジェクトが生まれたのです。

ナタリシアという30代の女性は、小学校を出てから、村で農業をしていました。彼女は、このポエマ計画の推進者の一人で、「自分たちの手で自分たちの暮らしをよくし、環境を守ります」と力強く語りました。その後、計画の推進者たちは、自動車部品工場の収益を、夜間学校や幼稚園の設立、太陽光パネルの購入など、村人たちが必要なものに充てていきます。

一方、メルセデス・ベンツ社は従来の石油製品より安価で、吸湿性に優れ、リサイクル可能な部品を調達することができました。その後、こうしたバイオマス由来部品を自動車部品に採用する動きは、他社にも広がり、トヨタの自動車にも植物繊維やバイオマスプラスチックが使われています。

koujocho0001.JPGアマゾンの村で栽培、加工、製造されたココナッツ繊維製ヘッドレストをもつアントニオ・ゴベイア工場長。 benzE.JPGメルセデス・ベンツに使われている天然素材制部品。

このポエマ計画を知った私は、ぜひ、この話を日本に紹介したいと思い、『アマゾンの畑で採れるメルセデス・ベンツ』(築地書館、原後雄太氏との共著)という本にまとめました。日本でもこうしたプロジェクトを実現させたいと思い、志を同じくする人々とバイオマス産業社会ネットワークを設立し、今に至っています。次回からは、日本における事例も含めて、ご紹介していきたいと思います。

執筆者プロフィール(執筆時点)

tomari-sama.jpg泊 みゆき(とまり みゆき)氏
NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)理事長

京都府京丹後市出身。大手シンクタンクで10年以上、環境問題、社会問題についてのリサーチに携わる。2001年退職。1999年、BINを設立、共同代表に就任。2004年、NPO法人取得にともない、理事長に就任。

NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク:http://www.npobin.net/ 

■主な著書・共著
アマゾンの畑で採れるメルセデス・ベンツ [環境ビジネス+社会開発]最前線』(築地書館)
バイオマス産業社会 「生物資源(バイオマス)」利用の基礎知識』(築地書館)
バイオマス本当の話 持続可能な社会に向けて』(築地書館)
『地域の力で自然エネルギー!』(岩波ブックレット、共著)
『草と木のバイオマス』(朝日新聞社、共著)

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