多くの日系企業が東南アジアに進出していますが、現地における廃棄物管理の現状やリスク、その対策について教えてください。 | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載!

環境戦略・お役立ちサイト おしえて!アミタさん
「おしえて!アミタさん」は、未来のサステナビリティ経営・まちづくりに役立つ情報ポータルサイトです。
CSR・環境戦略の情報を情報をお届け!
  • トップページ
  • CSR・環境戦略 Q&A
  • セミナー
  • コラム
  • 担当者の声

Q&A

多くの日系企業が東南アジアに進出していますが、現地における廃棄物管理の現状やリスク、その対策について教えてください。

タイのサムットプラカーン県の廃液不法投棄現場

企業の海外進出には、様々な環境リスクが伴います。今回はインドネシアでのリスク発生事例も含め、東南アジアにおける廃棄物管理事情についてご紹介します。

製造業の海外展開について

2014年4月に経済産業省より公表された最新の「海外事業活動基本調査結果(2012年度実績)」 によると、製造業の海外生産比率(国内全法人ベースで20.3%)と海外設備投資比率(25.8%)がともに過去最高水準に達し、現地法人の売上高も前年度比9.2%増加しています。その背景として、「現地の製品需要が旺盛又は今後の需要が見込まれる」と回答した企業が7割弱と最も割合が多く、今後も国内から国外への製造拠点のシフトは続くと予想されます。本調査によると、この10年間で現地法人数は2,000社以上、売上高は250,000億円以上の成長を見せています。

東南アジアにおける日系企業の廃棄物管理の現状

アジアへの製造拠点のシフトと売上高の増加は、企業にとってメリットだけでなく、様々な事業リスクを伴います。環境に関するリスクも例外ではありません。現地生産量の増加は、製造プロセスで生じる廃棄物の増加につながり、その結果、廃棄物リスクも増大します。廃棄物処理に係る法律が国によって異なることはもちろん、廃棄物処理に対する人々の意識の差も大きく、近年、現地では不法投棄をはじめとする不適正処理による環境破壊と同時に、その悪質事件摘発の報告も増加しています。
東南アジアに進出する100社以上の日系現地法人に対して、アミタが訪問調査を行った結果、下記のような廃棄物管理の課題が明らかとなりました。

  1. 現地スタッフに任せきり
  2. 廃棄物の処理フローが不明瞭
  3. 法律知識の欠如
  4. リサイクル率の低さ

生産拠点でのリスク事例

アジア各国における現地法人調査でヒアリングした数多い具体事例の中から、今回は近年廃棄物に関する取締りが厳しくなりつつあるインドネシアでのケースを紹介します。
設備を製造する大手A社は、インドネシアでの操業開始当時から、現地環境省の内諾を得て、発生した廃棄物を自社の敷地内に埋め立てていましたが、2011年にインドネシア環境省が立ち入りに来た際に、従来の埋め立て処理を指摘され、これまで埋め立てした全ての廃棄物を掘り返して適正に外部処理するように、との指示を受けました。これは、2008年に改正されたインドネシア廃棄物管理法で埋め立てが原則禁止になった影響と考えられますが、具体的な根拠は示されていません。A社は現地環境省と交渉するも、結局過去10年以上にわたって埋め立ててきた30,000トンを超える廃棄物を全量掘り返し、数千万円の処理費をかけることとなりました。2009年には廃棄物によって汚染された土壌浄化に関する環境規則も制定され、土壌の回復にはさらなる時間とコストがかかります。

廃棄物管理業務のリスク対策

多くの企業が上記のような事案を経験し、再発防止の対策を講じています。これらの事例を踏まえ、今後の日系企業に求められる共通した対策を考察すると、「本社主導のリスク対策」が挙げられます。
現地拠点では、製造の効率性を優先するあまり、現地の日本人スタッフのほとんどが廃棄物管理の実態を知らず、廃棄物管理業務は「①現地スタッフに任せきり」になっている企業が多く見られます。現地スタッフは環境リスクに対する意識が低いことも多いため、彼らへの教育が今後非常に重要です。上記に挙げたA社の事例も、しっかりした「本社主導のリスク対策」の体制が取られていれば、A社が支払う対価(コスト、時間)は大きく異なった可能性があります。また、「②廃棄物の処理フローが不明瞭」であることは、あらゆる廃棄物処理トラブルの原因となりますので、最終処分までの処理フローを見える化することが大切です。

環境リスクと一口に言っても内容は様々あり、限られた経営資源の中で廃棄物リスク対策に大きな労力をかけられない実情もあります。しかし近年、海外で廃棄物に関連して膨大な損失を受ける企業が増加しており、また廃棄物管理に対する現地行政の監視の目が強化されていることも事実です。製造最優先の現地法人だけではなかなか手が回らない「従業員への環境リスク教育(法律知識含め)」と「廃棄物フローの明確化」を、「本社主導のリスク対策」として行っていくことが、今後より一層求められていくと考えられます。「リサイクル率の向上」も、まずは廃棄物管理業務の現状把握から始めることが重要です。

塗料報知新聞社『塗料産業海外進出総覧 』2014年8月掲載記事より抜粋、一部改訂


▼関連記事
東南アジアで新たな工場建設するにあたって、リサイクルでの廃棄物処理を検討しています。東南アジアでもセメントでのリサイクル要望が高まっているというのは本当でしょうか。

中国の廃棄物関連法にはどのようなものがあるのでしょうか?中国拠点の廃棄物管理の遵法性が心配です。

▼アミタの海外環境事業に関する詳細はこちら

関連情報

ro1.png


アミタグループでは、企業の廃棄物管理に関するセミナーを実施しています。毎年、定員を超えるお申し込みをいただいておりますので、お早めにお申し込みください。詳しくは、下記をご覧ください。
http://www.amita-oshiete.jp/seminar/

執筆者
Mr_yamato.JPG

大和 英一 (やまと えいいち)
アミタ株式会社
営業グループ 海外事業チーム

2007年にアミタ株式会社に合流後、製造業を対象にした環境コンサルティング業務を担当。大手住宅メーカーに廃棄物管理担当として出向した経験を活かし、廃棄物管理業務の合理化・効率化、国内の廃棄物リサイクルの推進・提案等を行う。2011年からは現職の海外事業チームとして海外の資源化事業を担当。石炭灰の欧州での有効利用調査や海外の事業場から発生する廃棄物のリサイクルルート構築支援等の実績多数。

このページの上部へ