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CSVの参考になる事例はありますか?~ネスレ

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今回は商品力の強化という観点でのCSV事例を紹介します。

ネスレ社
「30年前からのハラール対応※でイスラム圏市場をリード」

CSVの取り組みのメリットとして、①マーケットの創出、②商品力の強化、③経営資源の確保の大きく3つのメリットがある中で、今回は「②商品力の強化」という観点でCSVを実施している企業を見ていきましょう。

ハラール対応→イスラム教の教えに準拠した食べ物の処理等が行われているもの

ネスレの事例

CSVの先進事例で常に名前の挙がるネスレ。様々な取り組みがありますが、その1つにハラールへの対応があります。最近はイスラム圏の経済発展もあり多くのグローバル企業が注目している市場ですが、食事の処理の仕方、食べてはいけないもの、アルコールの取り扱い等の制約が多いためハラール対応をするには高い専門知識とハラール対応するための仕入から販売にいたる仕組みをつくらなければなりません。ネスレは、マレーシアなどにおいて1980年代からハラール対応のための部署を設置しており今では売上に占めるハラール対応商品は数十%を超えるまでに至っており企業の持続的成長に一役買っています。他のグローバル企業に先んじて取り組めている理由として、ネスレがグローバル企業だからこそ早いタイミングで対応ができたという意見もあるかもしれませんが、それ以上にCSVを全社的な取り組みとして行っていることは見逃せません。

ネスレは、ハラール対応がホットテーマになる10年〜20年前からマレーシアを中心にこの問題に取り組んでいました。当時、先進国の市場が伸長している当時に、サプライチェーン全体での対応が必要なハラール対応をするよりも、同じ文化圏・宗教圏でビジネス展開する事が短中期的視点に立った意思決定として正しいことはビジネスパーソンであればわかるかと思います。ここでポイントとなるのは、当時ハラール対応はローカルな市場に向けた商品開発でしかなかったということです。単独の市場で見れば小さなマーケットだとしても、長期視点に立った時に大きな市場機会を獲得できるものを企業として取り組めている点です。

もし、経済合理性のみを基準として新商品や新規事業開発の意思決定をしている場合、このような成功をおさめる事はできなかったでしょう。ネスレでは、CSV関連をテーマとして、世界的な課題となりうる3つのテーマ「栄養、農業・地域開発、水資源」をあげており、その活動を社会的投資対効果として独自の指標を設定しマネジメントしています。

2013年の共通価値の創造報告書を是非一度ご覧ください。
http://www.nestle.co.jp/asset-library/documents/csv/csv_synopsis_2013.pdf

日本企業の新商品・事業開発の意思決定は「単年で黒字、3年で投資回収」や「新規商品・事業を既存事業と同じ基準で比較」などが典型的です。CSVにおける新商品・事業開発の成功のためには、従来型の経済的価値に重きをおく意思決定構造そのものを抜本的に変えて行くことが必要になります。

ネスレ事例から学ぶCSV実現のポイント

・長期的な社会的課題を視野に入れつつ、短期的には局所的ニーズに応える商品・事業を開発する
・経済的価値だけでなく社会的価値を基準とした意思決定ができる全社体制をつくる

次回は、中堅・ベンチャーにおけるCSVへの取り組みを紹介します。


出典:CSV時代のイノベーション戦略 藤井剛、ネスレウェブサイト等を基に加筆・作成

執筆者プロフィール

mr.oda.jpg小田 るい(おだ るい)氏
NPO法人 sopa.jp 理事長。CSVプロデューサー

京都大学工学部情報学科卒業。競争戦略・CSVの権威であるマイケルポーター等が設立した外資系コンサルティングファーム出身。経営コンサルタントとして、大企業の新規事業開発、マーケティング戦略、IT戦略等の豊富なプロジェクトを経験。現在は、福祉・環境等社会問題領域に進出するNPO・ソーシャルベンチャーの経営支援や、大企業のCSV事業の立ち上げ支援等を行っている。

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