FSC(R)森林認証で「町の林業を活性化」 -「森林・林業日本一の町づくり」にチャレンジする住田町の取り組み- | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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インタビュー

住田町 産業振興課 伊藤 様 / 気仙地方森林組合 業務課 佐藤 様、千葉 様、菅野 様FSC(R)森林認証で「町の林業を活性化」 -「森林・林業日本一の町づくり」にチャレンジする住田町の取り組み-


岩手県住田町。2011年の東日本大震災の後、住田町ではFSC認証材を用いた木造の仮設住宅の建設にいち早く取り掛かり、多くの被災者の方々に提供しました。この話は多くのメディアで取り上げられたため、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

実は、震災後の混乱の中、このようなすばやい支援ができたのは、住田町が今まで「森林・林業日本一の町づくり」というスローガンを掲げ、FSC森林認証の活用を中心とした林業政策を積極的に進めてきた賜物でした。

そこで今回は、住田町の林業に携わっている、住田町役場の伊藤氏、気仙地方森林組合の佐藤氏、千葉氏、菅野氏に、住田町で行われている「森づくり」の取り組みについて、話を伺いました。

住田町にとっての林業


-「森林・林業日本一の町づくり」というスローガンを掲げた理由は?-

伊藤氏:住田町の森林は全体で約30,000haあり、町全体の面積の9割を占めます。町としては、「先人が残してくれた資源を活かさずほっておいていいのか」という思いから、林業を町の主要産業にすると決め、「森林・林業日本一の町づくり」というスローガンを掲げました。

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実際の取り組みとして、森林の管理は、町が森林整備や路網整備に対して独自の補助制度で支援をしつつ、気仙地方森林組合を中心とした林業関係者と協力しながら進めてきました。そして、山から出された木材の利用を進めるため、木工団地の整備も行いました。製材を行う「協同組合さんりくランバー」、集成材加工の「三陸木材高次加工協同組合」、プレカット加工の「けせんプレカット事業協同組合」、住宅建築の「住田住宅産業株式会社」などを設立し、川上から川下まで地域で一体となった木材利用が出来る体制を構築しました。

-木材に関連した、先進的な取り組みも行っていると伺いました。

伊藤氏:木質バイオマス利用や森林環境教育も積極的に取り組んでいます。例えば、けせんプレカット事業協同組合では木質ペレットを製造しており、保育園や入浴施設のペレットボイラー、公共施設や家庭でのペレットストーブで利用されていますし、木工団地内には木質バイオマス発電所を設置し木質資源のエネルギー利用を進めています。

また、森林環境教育として、保育園児や小・中・高校生を対象に、森林内の散策や、水生生物調査・砂金採り等の地域の自然・文化に関する体験学習、林業体験などを行っています。

ありがたいことに、最近では日本各地からこれらの取り組みの視察にお越しいただき、お互いに情報交換をする機会も多くなってきています。

住田町にとってのFSC


-住田町がFSC森林認証を取得したきっかけは?-

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伊藤氏:気仙地方は豊富な森林資源があり、木材の切り出し、加工、流通に必要な設備もあります。しかし気仙の材には、例えば「秋田杉」のような強いブランド力はありません。そこで、FSC認証材という付加価値をつけることを考え、森林認証を取得しました。アミタさんの審査を経て初めて認証を取得したのが2004年。それ以来、認証林も年々増加していて、認証取得時9,266haだった認証林面積が現在では12,633haまで増加しています。

-増えた理由はなんですか?-

佐藤氏:住田町の「FSCの森整備事業」、「FSC森林認証林高齢級間伐事業」等、FSC認証林整備に特化した町単独の補助事業が認証取得の後押しをしてくれています。

最近では、自分の山に関心のない所有者の方も増えてきていますが、町の補助制度を使えることと、認証という環境に配慮した作業ということをPRすることで毎年加入者が増えています。加えて、町内の森林指導員が山の所有者の方に適切な情報を伝えてくれたことも、認証林が増えた大きな要因になっています。

千葉氏:組合の広報誌に掲載するだけでなく、町でも広報、TV放映、説明会の開催など、大々的にPRしてくれているので、近所の人が認証をとっていれば、私も取ろうと思って参加してくれる人もいます。また、自分の認証林に「岩沢孫の森」「金太郎の森」「源土洞の森」など各自で考えた名前をつけ、看板を設置していることも効果が出ているのではないでしょうか。名前を付けることでより身近で親しみをもっていただけるようになったと思います。

-FSC森林認証を取得してよかったと思うことは何ですか?-

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佐藤氏:森林整備の現場では、今まで以上に環境に配慮するようになりました。チェーンオイルを植物油に変える等、今までは考えもしませんでしたが、町の財産をこれからの子供たちに渡すことを考えると、大切な意識の変化だったと感じます。

伊藤氏:森林の所有者さんが森に目をむけてくれるというのも大きな成果です。住田町は山間の町ですが、それでも山を所有している方の意識は様々です。山に目が向いている人と向いていない人の差はあります。意欲的に山の手入れをされている方がいる一方で、「木材が高く売れないんだからいいよ」「世代交代をして山がどこにあるかわからない」という方も中にはいます。このような方々がFSCの話をきっかけに自分の山に興味を持ち、一緒になって森林のことを考えてもらえるようになったことは本当に嬉しい成果です。

住田町にとってのフォレストック認定


-フォレストック認定を取得した経緯とクレジット販売の状況を教えていただけますか?-

伊藤氏:東北復興支援の一環として、フォレストック認定林を東北で増やして継続的な支援をしたいという話があったことがきっかけとなり、昨年町有林で認定を取得しました。売上金は、2012年6月に立ち上げた「ふるさとの森づくり基金」にしばらくストックしておきます。そして、将来、「町内の森林整備」や「次世代を担う子どもの教育・育成」、「木材など森林資源を活用した町づくり」といった用途に使って行く予定です。

これからの住田町


-今後やっていきたいことはなんですか?-

佐藤氏:組合としてはこれから復興にも協力することと、所有者の方にも協力してもらって、環境にいい森づくりをしていきたいです。また、認証製品を増やしていき森林組合と木工団地のつながりをさらに強くしていきたいですね。お互いに考えを一つにしてまとめて、組合の得意分野と木工団地の得意分野を合わせて相乗効果を出すことで、住田町の林業をさらに盛り上げられると思います。そして、最終的に山の所有者さんへ還元できると考えています。

さらに、陸前高田で被災したカキ漁師さんが使用する筏への間伐材の提供も引き続き行っていく予定です。森と海はつながっていますので、林業と漁業、力を合わせて互いに支え合い、発展していきたいと思います。

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千葉氏:県内の森林組合の中で認証を取得しているのは気仙地方森林組合だけですので、他の森林組合から「気仙の森林組合は認証をとっていていいね。」と言われる、住田町の誇れる取り組みにしていきたいです。そして、我々のFSC認証の取り組みが、気仙地方だけでなく、日本全国の林家にいい影響を与えられるようにしたいですね。

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菅野氏:私自身、おじいちゃんが30年以上木こりをしていて、小さい時から色々と林業の話を聞いていていたのが林業に関わるきっかけですので、子供たちに対する取り組みをもっとやっていきたいです。

伊藤氏:町の木材産業の振興の取り組みは、もっともっと広めていきたいです。住田町だけで全国の木材ニーズをまかなうことは絶対にできないので、日本全国に仲間を増やして、林業界全体が活発化するように動いていくことを考えています。

震災のあと、FSCで知り合った方々からも支援の声をいただきました。そういう仲間の環を大切にして、林業界の底上げをしていきたいです。

プロフィール

伊藤 愛 氏
住田町産業振興課
副主幹


住田町産業振興課所属。FSC森林認証、フォレストック認定の主担当。年少時代から山が身近な存在であったこともあり、林学の道を志し、現在に至る。


佐藤 忠 氏
気仙地方森林組合
業務課 課長


35年間、森林組合の一員として気仙地方の森林整備を担当。FSC森林認証については、森林組合と住田町とのパイプ役も務める。また、現在、「山から海へ」というテーマの元、漁業関係者と連携した森林整備等、新しい取り組みも開始している。


千葉 憲一 氏
気仙地方森林組合
業務課 主任


2003年よりFSC COC認証を担当。現在は主に「炭」について関わっており、FSC森林認証という付加価値で、炭の販路を増やす方法を日々検討している。


菅野 由加里 氏
気仙地方森林組合
業務課 主事補


植林・下刈り等の造林関係を担当。また、FSC森林認証の担当者の補佐業務も兼務。日々様々な業務のサポートを行っている。陸前高田市出身。

アミタグループでは、FSC森林認証の審査を行っています

アミタグループのアミタ環境認証研究所では、1999年に日本で初めてFSC森林認証の審査を実施して以来、国内のFSC森林認証の審査を行っています。FSC森林認証を通じて、適切な森林管理の拡大を支援しています。


▼FSC森林認証についてはこちら(株式会社アミタ環境認証研究所Webサイト)
http://www.aiec-net.co.jp/

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