伊藤忠|CSR推進担当者に求められるスキルとは?【前編】 | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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インタビュー

伊藤忠株式会社 広報部CSR・地球環境室 小野 氏伊藤忠|CSR推進担当者に求められるスキルとは?【前編】

バブル期に見られた日本の総合商社のキャッチフレーズは「ラーメンからミサイル」。総合商社が取り扱う商材、領域、エリアは多種多様で、かつ、当然、そこにはリスクが多く潜んでいるものです。今回は、グローバルコンパクト・ネットワークジャパン(GC- NJ)でもご活躍の伊藤忠株式会社、広報部CSR・地球環境室の小野氏に直撃インタビュー。CSR・地球環境室に着任前の経歴から、着任後の現在に至る環境・CSRの取り組みについてお話しを伺いました。社内浸透で悩みを抱えている担当者が多い中、CSR担当者がどのように社内浸透を図っていくのか参考になる話です。前編、後編の2回でお届けします。(CSRJAPAN編集長=猪又陽一)

【後編】はこちら

地球環境に影響がある商品で利益を得ていたのが私の出発点

itochu002.jpg猪又:現業務に着任するまでの職歴を教えてください。

小野氏:2012年4月から広報部CSR・地球環境室へ異動してきたのですが、入社当時は化学品営業で、扱っていた商材は硫酸や塩酸、シアン化ナトリウム、フロンガスなど人体や地球環境に影響を与える商品を取り扱って利益をあげていたというのが私の会社の出発点です。今考えてみれば、地球環境に悪影響を与える仕事ばかりをしていたのですが、入社当時は恥ずかしながらあまり意識していませんでした。ただ、何年か仕事をしていると、このまま続けていていいのかなという強い想いが出てきました。

特に一番悩んだのが、フロンガス担当になった1993~1994年頃。その頃は一番環境影響の大きい第一世代と呼ばれたフロンガスの全廃は決まっていたのですが、そうなるとそのフロンガスは製造禁止のため、持っている在庫の値段がどんどんと上がっていくのです。いわゆるフロンガスバブルが起きたのですが、当時の殆どの車のカーエアコンではまだそのフロンガスを使っているわけで、出荷を遅らせるほど値段が上がって大きな利益が出ることになります。オゾン層破壊につながるものですし、こういう形で大きな利益を出していいのかと悩んでいた時に部長に相談したところ、「俺が上限価格を決めてやる。」といって常識の範囲内で決めて頂きました。そういう意味でその上司に救われたのですが。

それから、ちょっと考え方が変わりまして、ずっと原料系の営業だったので、川下に近いところで仕事をやりたいと社内でお願いしたところ、1998年1月に流通分野で新規開発を行う部署、つまり川上の原料の部署から一気に川下の商品に関わる部署に異動いたしました。直後に伊藤忠商事によるファミリーマートの株式取得があり、更に、大手の百貨店や量販店との提携プロジェクトなど、7年ほど流通関連のビジネスを経験したあと、副社長から新規事業で環境ビジネスをやるようにということで呼び出されました。

画像コメント:入社当時は地球環境に影響を与える商品を取り扱って利益をあげていたというのが私の会社の出発点と語る小野氏

環境ビジネスは儲からないと思っていました・・・

itochu003.jpg猪又:環境ビジネスを始められていかがでしたか?

小野氏:正直いうと、環境ビジネスは儲からないと思っていました。地球に良いとか悪いとかという話はさて置き、商社の風土には合わないと思ったのです。そのとき、率直に副社長に「環境ビジネスは儲からないと思います。」と言ったんですが(笑)、「儲からないんじゃいけない、そこをお前が考えろ。」と言われました。私も引き下がらずに「質問を変えますが、1年後にどういった状態になっていれば褒めてもらえるんですか?」と尋ね返したところ、「例えば、日経新聞の1面とか経済面に伊藤忠が環境ビジネスについて色々とやっているぞという状況になったら褒めてやろう。」「分かりました。頑張ります。」という感じで、いきなり全く脈絡もなく環境ビジネスに取り掛かりました。その時が2007年1月ぐらいでしたね。

当時は環境ビジネスの右も左も分かりませんでしたが、まずは社内で実際にどんな環境ビジネスをやっているかを検証して、自社の強味、弱みを考えて、足らないところは他社と提携するような形で進めていきました。弊社では中期経営計画は大体2年ごとに定められるのですが、周囲からの協力を得るために、次の中期経営計画のときに、環境ビジネスに重点を置くということを明記してもらいました。具体的には太陽光発電と蓄電池、水の3つを重点分野でやるべきだと経営に答申したところ、受け入れて頂くことができました。私はそれで終わりかと思っていましたが、その先のビジネスもやれということになり、実際にビジネスまで携わるようになったのですが・・・・。

画像コメント:当時は環境ビジネスの右も左も分からなかったと話す小野氏

部署を横断してスマートシティーの環境ビジネスに取り組む

itochu004.jpg小野氏:太陽光ビジネスも商社っぽく、原料から製品まで一気通貫で推進する方針となりました。当初は原料部分のシリコン調達ビジネスは金属カンパニーで、発電関連ビジネスは機械カンパニーと別々にやっていたのですが、それを結び付ける役割で仕事をしていきました。そのときにいた部署が開発戦略室。やることは新規ビジネスとカンパニー横断案件をマネージする役割でした。環境ビジネスというのは何をやるにしても部署を跨ります。そういう意味ではその部署で取組んだのは正解でした。

次に、太陽光、蓄電池、水の全ての領域を扱える新規ビジネスが出来ないかということで、スマートシティーのビジネスを始めることにしました。まずは、茨城県のつくば市と連携して、ファミリーマートと伊藤忠エネクスのガソリンスタンドのそれぞれの屋根に太陽光パネルを設置して、更に蓄電池を設置し、それに急速充電池をつないで電気自動車を配備してデータ測定し、低炭素社会にどれだけ貢献できるかの実証実験を行いました。最初はグループ会社中心のプロジェクトでしたが、それが話題になり、世界各地から視察がきて、最終的には経済産業省から補助金も頂き米国やアジアでもプロジェクトをスタートすることが出来ました。

画像コメント:部署を横断した経験は現在のCSRにも繋がると力説する小野氏

戸惑いもあって異動してきた広報部で、まず始めたのは現状把握

itochu005.jpg小野氏:もうちょっと環境ビジネスをやってみたいという想いはあったんですが、ローテンションルールというのがあり、広報部に異動になりました。最初広報部と言われて華やかそうでいいなっと思ったのですが、後からCSRと環境を担当すると言われてびっくりしました(笑)。環境マネジメントについては商社では早い時期の1990年に部署として立ち上がっていました。CSR分野は2005年に部署として立ち上がったのですが、環境とCSRが統合したのがちょうど2010年。そして、私が部署へ異動になったのが2012年。

猪又:営業とか開発を経験して、畑が違うと思いませんでしたか?

小野氏:広報部は職能部門だったので最初は戸惑いもありましたが、戸惑ってばかりいられないので、現状はどうなのかをまずは把握しました。環境は歴史がそこそこあるので他の商社と比較して取り組みが進んでいるのかなっと思っていました。幸い他の商社に知り合いがいましてヒアリングにいきました。そうしたら、遅れてるところもかなりあったので、これはまずいぞって思いましたね。その方に色々と教えてもらいながら、まずは環境について取り組み始めました。

CSRについては全く分からなかったが、「三方よし」は頭に刻み込まれていた。

itochu006.jpg猪又:環境はそうだとしても、CSRは「三方よし」という貴社の精神があってその流れは今にも至っているのでは?

小野氏:環境はビジネスをやっていたので、これからすべきことをイメージ出来たのですが、CSRについては全く分かりませんでした。ただ、2005年にCSR組織が出来たときに、私がまだ開発組織におり、CSR部からビデオを渡されて、このビデオをメンバーに見せて2つ以上、会社に提言しなさいと言われたことを記憶しています。1つ目は会社ができるCSR活動の提言、2つ目は自分の部署でできるCSR活動の提言。なんか会社もCSRに力を入れるんだなっと思いましたね。ですので、CSRを立ち上げたときに、かなりトップダウンでやったというのが印象です。

当時の弊社の小林社長が社員に話をする度に「三方よし」といっていたので、そういう意味では「三方よし」は頭に刻み込まれていましたね。ただ、具体的にCSRがどういったことをやっているかは知りませんでした。異動してきたら、アニュアルレポートを統合報告書にするとかSRIの外部調査の回答作成などが進んでいて、これは大変だなって感じでしたよ。
(後編へ続く)

インタビュアー

inomata_profile.jpg猪又 陽一(いのまた よういち)
アミタ株式会社
CSRJAPAN編集長 兼 CSRプロデューサー

早稲田大学理工学部卒業後、大手通信教育会社に入社。教材編集やダイレクトマーケティングを経験後、外資系ネット企業やベンチャーキャピタルを経て大手人材紹介会社で新規事業を軌道に乗せた後、アミタに合流。環境・CSR分野における仕事・雇用・教育に関する研究。環境省「優良さんぱいナビ」、企業ウェブ・グランプリ受賞サイト「おしえて!アミタさん」、「CSR JAPAN」等をプロデュース。現在、企業や大学、NPO・NGOなどで講演、研修、コンサルティングなど多数実践中。

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