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親子会社の特例で何が変わるのか?|平成29年改正 廃棄物処理法の3大テーマ解説第1弾!BUNさんの「元・行政担当者が語る 廃棄物管理のイロハ」

Some_rights_reserved_by_IAEA_Imagebank.jpg改正廃棄物処理法が6月9日に成立しました。環境省は「改正概要」にて、大きな改正事項は、

  1. 不適正事案対応
  2. 雑品スクラップ対策
  3. 親子会社の特例

の3つであると述べています。今回は、「3.親子会社の特例」について取り上げます。

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親子会社の特例とは?概要と成立の背景

「親子会社」における産業廃棄物の取り扱いについて、環境省は、旧厚生省時代から一貫して「法人格が異なれば、許可は必要」というスタンスで臨んできました。

▼参考:過去の疑義解釈通知

平成五年三月三一日 衛産第三六号
各都道府県・各政令市産業廃棄物行政主管部(局)長宛 厚生省生活衛生局水道環境部産業廃棄物対策室長通知 最終改正:平六衛産第九三号

(子会社)
問5 事業者が産業廃棄物を処理する目的で子会社を設立して当該事業者が排出する産業廃棄物を処理する場合、当該子会社は処理業の許可が必要か。
 子会社が事業者と別の独立した法人格を有するものであれば、子会社が事業者の専属の下請けであっても、他人の排出した産業廃棄物の処理を業として行うのであるから、処理業の許可が必要である。


(親会社の処理)
問41 親会社が子会社の産業廃棄物を無償で引き取り、自社の産業廃棄物と併せて処理する場合には、「事業者がその産業廃棄物を収集若しくは運搬又は処分する場合」に該当することとなり、いわゆる自己処理を行っていることとなるか。
 独立した法人どうしであれば自己処理に該当せず、親会社には処理業の許可が必要である。

しかし、この解釈に基づくと、昨日までは一つの会社であり「自社処理」として、処理業の許可なしで扱ってきた産業廃棄物であっても、分社化した翌日から許可が必要となり、法律上「無許可」扱いされるという事態が起こります。企業形態が多様化する昨今において、これではあまりにも酷ではないか。もっと、フレキシブルに運用できないかということで、数年前から経団連をはじめとする産業界によって、規制緩和の要望が出されています。これらに対応する形で、今回の改正が行われています。

▼参考:法律案の概要

平成29年3月10日 環境省報道発表資料より

親子会社が一体的な経営を行うものである等の要件に適合する旨の都道府県知事の認定を受けた場合には、当該親子会社は、廃棄物処理業の許可を受けないで、相互に親子会社間で産業廃棄物の処理を行うことができることとする。

▼参考:改正廃棄物処理法 第12条の7

新設(二以上の事業者による産業廃棄物の処理に係る特例)

第十二条の七
 二以上の事業者がそれらの産業廃棄物の収集、運搬又は処分を一体として実施しようとする場合には、当該二以上の事業者は、共同して、環境省令で定めるところにより、次の各号のいずれにも適合していることについて、当該産業廃棄物の収集、運搬又は処分を行おうとする区域(運搬のみを行う場合にあつては、産業廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する都道府県知事の認定を受けることができる。

 当該二以上の事業者のいずれか一の事業者が当該二以上の事業者のうち他の全ての事業者の発行済株式の総数を保有していることその他の当該二以上の事業者が一体的な経営を行うものとして環境省令で定める基準に適合すること。

 (省略)

 前項の認定を受けようとする者は、共同して、環境省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を都道府県知事(同項に規定する都道府県知事をいう。以下この条において同じ。)に提出しなければならない。

本当に規制は緩和されたのか?親子会社の特例を読み解く!

しかし、まだ政省令が出ておらず、詳細不明ではありますが、私の感想としては、環境省は今までのスタンスを実質的に堅持したのではないかと感じています。以下に、その理由を述べます。

1. 100%の株所有

新第12条の7第1項第1号に「事業者の発行済株式の総数を保有していること」とあります。世間ではよく「親会社」「子会社」と言っているものの、全株保有しているという会社はどの程度あるでしょうか。また、同じグループ会社といえども、兄弟会社間では適用されないということになります。

2. 排出事業者の規定

廃棄物処理法第12条というのは「事業者」、いわゆる「排出事業者」に関する規定であり、他者の産業廃棄物を処理する「許可業者」には、この規定は適用されません。

3. 自社処理に限定

この規定はあくまでも「親子会社」間による処理を「自社処理」とみなして許可不要とするものです。よって、当然ながら「親子会社」以外の産業廃棄物を処理することはできません。読者の皆さまの会社で「自社処理」はどの程度行っていますか?おそらく、多くの会社は、そもそも「自社処理」自体やっておらず、ほとんどが「委託処理」だと思います。元々、自社処理をやっていないのであれば、「適用になる行為自体ない」ということです。

4. 知事の認定

「専ら再生4品目」のように、何の手続きもせずに他者の廃棄物を扱える、というのであれば、手間暇いらずです。ところが、この「親子会社」規定を適用し「許可不要」としてもらうためには、知事の認定が必要なのです。しかも、この「認定」の手続きは、私が見る限りでは、「許可」手続きとほとんど変わりません。

5. 産業廃棄物のみ対象

これは条文上登場しないのですが、制度上最もネックになる事項だと思います。
今回の第12条は「産業廃棄物の排出事業者」に関する規定です。よって、この「親子会社」規定は、産業廃棄物についてだけの規定であり、一般廃棄物については適用になりません。一般廃棄物について規定している第5条、6条、7条には登場しないのです。
多くの事業所では、産業廃棄物とともに「事業系一般廃棄物」も排出していると思いますが、「事業系」と言えども、「一般廃棄物には適用されない」となります。

様々な添付書類が要求され、結果として「認可」を取ってできることは「親会社(または子会社)の産業廃棄物を処理できるだけ」です。同じ手間暇をかけるなら、不特定多数の排出者の産業廃棄物を扱える「許可」取得の方がはるかに得策だと思いませんか。

まとめ・今後について

環境省は、規制緩和の要望に応える形で、この制度を創設した訳ですが、そもそも他社の廃棄物を処理するためには許可が必要ですし、「許可制度」は廃棄物処理法の根幹をなすひとつの制度です。そう安易には「規制緩和」する訳にはいかないというのが実情だと思います。

ただ、「同一排出事業者」として行う、契約書、マニフェストの発行、管理等に関しては、いくらか合理化が可能かもしれません。今後の動きに注目です。

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執筆者プロフィール

長岡 文明(ながおか ふみあき)
アミタ株式会社
特別顧問

山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も務める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)。

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