本連載シリーズでは、廃棄物関連のコンサルタントや研修を数多く実施してきたアミタの主席コンサルタントの堀口昌澄が、連載12回を通じて「揺らぐ廃棄物の定義」について解説します。 廃棄物を取り巻く法の矛盾や課題を理解することで、今後起こりうる廃棄物関連法の改正への先手を打つことができます。
今回は、木くず判決から廃棄物の定義について解説いたします。
総合判断説の難しさ~水戸地方裁判所の木くず判決~
廃棄物処理法は生活環境の保全を目的とした法律である。これを前提に考えると、利用価値がある、または社会的に有用性が認められる物を、有価売却できないというだけで廃棄物処理法で規制するのは合理的とは言えないのではなかろうか。実際、1円/kgで購入したものと、1円/kgの処理費をもらったものについて、後者の方がぞんざいに扱われ汚染が発生するリスクが高いということはないだろう。平たく言えば、使えるモノなのか、不法投棄されるのか、そこがポイントなのである。
一方の総合判断説は「取引価値の有無」を判断要素の一つとしている。したがって「有価売却」できていなくても、他の要素次第では廃棄物ではないと判断することもできる。この実例として平成16年1月26日水戸地方裁判所の木くず判決が取り上げられることが多い。
この裁判では、排出事業者が適切に分別した家屋解体木材を、木材チップ会社が料金を取って譲り受け、木材チップ化して売却している場合「有価物として取引されていた」と認められた。
さらに、同裁判では一般に広まっている「取引価値の有無を有価売却できるかどうかで判断する方法」について「その物の市況の変動によって廃棄物であるか否かが左右されることになりかねず,その処理等に許可が必要か否かも変わってくることになって法的安定性を著しく欠く」と指摘している。その上で、資源有効利用促進法や建設リサイクル法など循環型社会へ向かう社会動向を踏まえ「取引価値の有無」の判断には「排出業者ないし受入れ業者にとって、~中略~一連の経済活動の中で価値ないし利益がある」かどうかを考慮すべきとした。具体的には、排出業者はチップ化業者に持ち込むことで処分費用が削減でき、チップ化業者は木材チップの売却益を得ている。これは双方にとって経済的に利益がある取引であり、当該木材に価値があると認められるということだ。
木材チップの加工・販売を生業とする会社にとって、解体木材が不要物でないことは当然のことである。この考え方は、リサイクルに携わる者にとっては非常に納得感がある。
確定的なことが言えない現状
なお、高裁まで行って一定の結論を得たかったが、諸事情により地裁判決のまま確定してしまった。しかも、判決文では「工場に搬入する段階では,分離ないし処理されて有用物になったと認められる、ないしは、少なくとも、同段階においていまだ産業廃棄物であったとの立証はなされていないと認められる」ということで、廃棄物であるとの立証が不十分だとしている。つまり、積極的に有価物であると認めているわけではないのだ。
さらに、同じ取引を別の側面から争った裁判では、本件木くずが廃棄物であると認められているのだ。つまりは、まだ確定的なことが言える段階ではないのだ。
いずれにせよ、水戸木くず判決は「有価物/総合判断説」について新しい見方を提示してくれた。廃棄物処理法が積み上げてきた歴史や業界の”常識”にとらわれず、ゼロベースで考えるとこのような見方も可能なのだ。とはいえ、現在の”常識”を変えるには、やはり法改正というショックが必要かもしれない。近い将来、これまでの発想、常識にとらわれない大改正が行われることを期待したい。
次回は「手元マイナス」に関する規制緩和の流れについて解説いたします。
※本コラムは、環境新聞にも連載中です。
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執筆者情報
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おしあみへんしゅうぶ
おしアミ編集部
アミタ株式会社
おしえて!アミタさんの編集・運営担当チーム。最新の法改正ニュース、時事解説、用語解説などを執筆・編集している。
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