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コラム

ネスレ|社会課題を事業の機会と捉え、CSVに取り組む【前編】おしえて!きかせて!環境戦略

nestle_1-1.JPGネスレが関係している社会における社会課題をビジネスの機会と捉え、事業を通じて社会課題を解決することで成長を続けるネスレ。"共通価値の創造" (Creating Shared Value、CSV )という考え方のもと、どのように社会課題に向き合い、事業を展開し成長してきたのかをステークホルダーリレーションズ室長の冨田様におうかがいしました。

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長期的な視点で進出先の地域社会の課題と向き合う

成田: 今年で創業から150周年を迎えられますが、ネスレの歴史について教えていただけますか。

New_2015_Black_NoR_H.JPG冨田氏:ネスレは1866年に創業しています。当時、ヨーロッパでは栄養不足による乳幼児の死亡率が高く社会問題となっていました。薬剤師であったアンリ・ネスレは、この問題を何とか解決できないかと栄養価の高い乳幼児用食品を開発し、販売しました。

その後、内部成長やM&Aによって大きくなってきましたが、その中で内部成長において大きくなった要因はネスカフェの製造・販売でした。現在世界中で飲まれているネスカフェは1938年に販売が開始されましたが、販売開始の9年前の1929年にウォール街大暴落が起こり、その影響でコーヒー豆の市場価格も暴落し、産地であるブラジルでは大量にコーヒー豆が余ったそうです。そこで、当時、食品の乾燥技術に優れていたネスレに相談が寄せられたことがソリュブル(可溶性)コーヒーの開発につながっています。

成田:いずれも、社会課題を解決するところからビジネスが始まったのですね。

冨田氏:はい。ネスレは、創業以来、社会課題をビジネスの機会と捉えて事業を展開しています。ネスレと社会の双方に事業を通じた価値を創造し、社会課題の解決に向けても重要な役割を果たすことで、社会に大きく貢献できると考えています。そのためには長期的な視野を持つことが必要と考えています。


成田:長期的な視野を持つことの重要性について教えてください。

nestle_1-3.JPG冨田氏: ネスレは、短期間で大きな成長を求めるというよりは、着実な成長を続け、営業利益率も長期にわたって改善していくことを実現し、株主の皆様にも信頼を得ています。ネスレは、本業と直結しない事業は基本的に行っていません。栄養・健康・ウエルネスのリーディング企業を目指し、やるべきことを地道に実行していくという姿勢で経営しています。

成田:進出した地域社会の課題と向き合うという姿勢も、ネスレの特徴の一つですね。

冨田氏:そうですね。ネスレは、世界各地に研究開発と生産拠点を持ち、地域のお客さまのニーズにお応えしています。ネスレは世界189カ国で事業展開をしています。本社はスイス(ヴェヴェー)にありますが、スイスでの売上は全体のわずか2%にすぎず、売上の98%は本国スイス以外で生み出されています。世界各地で事業展開をしていますから、進出した先の地域の課題についても関わっていくことも必要になってきます。課題解決に当たっては事業を通じて解決する形で取り組んでいます。そして、地域の社会ニーズには何があるか、どのような商品やサービスなどが求められるのかを考えビジネスを行っているわけです。これらの取組みにあたって、ネスレは事業戦略として長期的な視点で取り組んでいます。

企業と社会の双方に価値をもたらす"共通価値の創造"

成田:ネスレが掲げている"共通価値の創造"についてどのような考え方なのか教えていただけますか。

冨田氏: "共通価値の創造"とは企業が長期的に成功していくためには、株主にとっての価値を創造するだけでなく、社会にとっての価値を同時に創造しなければならないという考えです。ネスレでは、この"共通価値の創造"を、事業戦略の基本の考え方として経営思考に組み込んでいます。

"共通価値の創造"は、いわゆる慈善活動ではありません。これまで解決されていなかった社会課題を事業の機会と捉えて事業を行うことです。"共通価値の創造"を通じて、地域社会にとっては社会課題が改善され、ネスレにとっては競争力の向上につなげています。

成田:"共通価値の創造"もまた、ネスレの競争戦略の一つと言えるわけですね。

冨田氏:そうです。共通価値の創造で取り組む注力エリアについては、バリューチェーンを分析し、共通価値を創造する潜在性を最大限に有する分野に、優れた人材、資本を投入し、関係するステークホルダーと協働して取組むことになります。ですので、企業間で自ずと取り組むエリアは異なってきますが、ネスレでは、具体的に「栄養」「水資源」「農業・地域開発」の3つの分野に注力して共通価値の創造に取り組んでいます。

成田:「栄養」「水資源」「農業・地域開発」のどれをとっても世界的に重要な課題ですね。ちなみに、共通価値の創造は三層のピラミッドで表されていますが、どのような考え方なのでしょうか。

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冨田氏:ネスレが考える "共通価値の創造"は、コンプライアンス、サステナビリティという従来の企業の社会的責任の考え方をさらに進化させた考え方と言ってもいいかもしれません。コンプライアンスとは、法律や地域社会の規範に則り、企業としての行動規範を遵守することですが、ネスレでは、国際的な基準などより厳しいものを採用するようにしています。

引用:「ネスレにおける共通価値の創造」より

また、その上に成り立つサステナビリティも、工場を持つ企業で環境に配慮しないことはありえないでしょう。それ以外にも、持続可能性に関する色々な取り組み、未来の人たちのための地球を守っていく取り組みは当然やっていくことと考えています。そして、こういったことができた上で"共通価値の創造"の取組みを行うという発想になるわけです。

ネスレは、自社と社会、双方にとっての価値を生み出す"共通価値の創造"(Creating Shared Value 、CSV )を、事業を展開する上での基本と考え長期にわたり堅実な経営を行うことで、成長を続けていらっしゃいます。次回は、"共通価値の創造"の具体的な事例についてご紹介します。

関連情報

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話し手プロフィール

nestle_tomita.jpg冨田 英樹 (とみた ひでき)
ネスレ日本株式会社
ステークホルダーリレーションズ室長

1982年4月関西学院大学経済学部卒業後、ネスレ日本(株)に入社。数年間の営業経験後、市場調査、製品企画などで主にマーケティング関係のマネジャーを経験。その後、パブリックアフェアーズ部(当時)に異動し、コーポレートイベント、CSR担当、CSVコミュニケーション担当マネジャーを経験後、2013年より現職ステークホルダーリレーションズ室長。

聞き手プロフィール

Narita-thumb-70x74-3341.jpg成田 晴香 (なりた はるか)
アミタホールディングス株式会社
経営戦略グループ マーケティングチーム

神奈川出身。事業を通じ、あらゆる社会課題の解決を目指すアミタに魅力を感じ、入社。現在は、非対面の営業チームであるマーケティングチームにて、電話やウェブ、メールマガジンを通じて廃棄物および環境管理担当者に業務支援や教育ツールの案内業務を行っている。

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