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EUDR(欧州森林破壊防止規則)とは?再延期や対象商品など、最新情報について解説

EUDR(欧州森林破壊防止規則)は、EUとの輸出入やEU市場での販売・流通に関わる事業者に森林減少フリー製品を求める規則で、2023年に発効しました。開始時期は2度延期され、中・大規模企業は20261230日、零細・小規模企業は2027630日から適用される見通しです。EUDRの理解は森林破壊の抑制だけでなく、国際的な信頼向上にも重要です。本稿では、EUDRの概要、FSC認証との関係、日本企業への影響について解説します。

EUDRとは

欧州森林破壊防止規則(EU Deforestation Regulation、以下EUDRと表記)とは森林減少フリー製品に関する規則であり、欧州連合によって、2023年6月29日にEU官報にて発効されました。新規則は、EU域内で輸出入するすべての企業に対して適用され、適用開始日は企業の規模によって異なります。既に1度延期している適用開始時期が、2025年11月26日の欧州理事会にて、再度延期される見通しとなりました。中規模・大規模企業は2026年12月30日から、そして零細・小規模企業には2027年6月30日から適用される予定です。対象商品は、木材、ゴム、パーム油、大豆、牛肉、コーヒー、カカオの7つとその派生製品(牛肉、チョコレート、コーヒー、タイヤ等)です。
ここで森林減少フリーとは、2020年12月31日以降、森林減少されていない土地で生産された対象関連商品を指します(2025年12月執筆時点の情報)。森林減少とは、人為的か否かを問わず、森林を農業利用に転換することを指します(第2条第3項)。EUDR施行後は、2020年12月31日以降に森林から農地へ転換された土地で栽培された対象商品は、EU市場で輸出入できません。そのため、EU市場で取引するすべての事業者は、製品が森林破壊に関与していないことを証明する義務があります。

EUDRができた背景

EUDRが施行された背景として、農作物の生産に伴う土地の開拓が森林破壊を加速させているという事実があります。実際に国際連合食料農業機関(Forest and Agriculture Organization of the United Nations, 略称FAOと表記)が公表した「世界森林白書2020」によると、熱帯地域における森林減少の7割が農地への転用に起因していると指摘されています。また、1990年から2020年までの30年間に年平均で約600万haもの森林が減少していることが明らかになっています。このような背景を踏まえ、森林破壊を防止しようとする動きが欧州で本格的に始動しました。EUDRは、対象商品がEU域内および世界の森林破壊に寄与することを回避し、森林破壊の減少に貢献することを目的としています。また炭素排出量を削減することで、生物多様性の損失提言に貢献することも目的のひとつとして掲げられています。

EUDRの対象商品とは

EUDRの対象商品は木材、ゴム、パーム油、大豆、牛肉、コーヒー、カカオの7つがあります。木材を原料にしている紙や紙製品も対象であり、木材を用いている包装製品はそれ自体が商品であれば対象となりますが、他商品を包装する目的で利用されている場合、対象外となります。
しかし、対象商品を含む関連製品であってもEUDRの対象外になる場合もあります。例えば、パーム油を含む石鹸、革張りの車用シート、天然ゴムタイヤを装着した自動車等が対象外の商品として挙げられます。また、梱包に使用される木材、中古品、竹製品等も対象外となります。このような対象商品に関する規則の複雑さをふまえ、企業は自社が取り扱っている商品がEUDRの対象なのかについて確認する必要があります。

EUDRの対象企業とは

EUDRでは、事業者について①オペレーターと②トレーダーを区別し、さらに大企業と中小企業でそれぞれ異なる義務を課しています。ここでのオペレーターとは、対象商品を最初にEU市場に輸入する、またはEUから輸出する企業を指します。また、トレーダーとは、対象商品をEU市場内で提供する、オペレーター以外のサプライチェーン上のすべての企業を指します。オペレーターは規模に関係なく、すべての事業者が、当該品目の生産において森林減少を引き起こしていないことを確認する必要があります(デューデリジェンス義務)。また、大企業トレーダーは大企業オペレーターと同じ義務を負う一方、中小企業トレーダーは、大企業トレーダーのようにデューデリジェンス義務を負いません。しかし、対象商品を提供したオペレーター・トレーダーの名称、住所、連絡先等を収集し、最低5年間情報を保管する必要があります。

▼対象事業者の概要

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出典:EUプラットフォーム・ブリュッセル事務局

EUDRのデューデリジェンスとは

企業は、サプライチェーンに関する関連情報(位置情報データやリスク査定など)を含む、デューデリジェンス(適正評価)過程の証拠を、各国の管轄当局に提出する必要があります。具体的に、企業は製品の内容、生産地の情報、事業者情報、森林破壊を伴わない製品であることを証明する情報、合法性を示す情報をもとにデューデリジェンスのステートメントを作成し、EUのITシステムに報告しなければなりません(情報収集)。その情報に基づき、規則への不適合リスクを評価し、リスクがあればリスク緩和する措置を実施する必要があります(リスク評価とリスク緩和措置)。また、事業者はデューデリジェンスステートメントを構築し、年一回見直す必要があります。

もしデューデリジェンスを適正に実行せず森林破壊フリー製品であることを証明できなければ、EUへの輸出は不可になります。制裁として法人の場合は罰金(企業のEUにおける前年度の総売上の少なくとも4%)や、非遵守製品の没収といった措置が取られることがあります。

さらに、2025年以降、欧州委員会は各国の森林破壊リスクのレベルを低・標準・高のいずれかに分類します。この分類により、低リスク国として分類された国からの製品には、簡易デューデリジェンス手続きが適用されます。


▼EUDRのデューデリジェンスについて

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出典:EUプラットフォーム・ブリュッセル事務局

EUDRが日本企業にあたえる影響

これまで述べてきたように、EUで対象となる特定の品質を提供する事業者は、①森林減少フリー製品であること、②生産国の関連法規に従って生産されていることを確認し、③これらを証明するデューデリジェンスステートメントを作成して提出する必要があります。また、EUDRの本格的な施行に伴い、木材業界だけではなく、食品業界やファッション業界、自動車業界といった多様な業界は大きな影響を受けることが予想されています。EU内での提供事業者はもちろんのこと、その事業者に製品や原材料を供給している上流の事業者は、得意先からの産地証明や合法性、森林減少フリーに関するヒアリングや監査への対応が求められます。当該業界の事務者には、トレーサビリティの確保やデータ整備、また最新の動向を継続的にチェックし、変化に素早く対応していく姿勢が求められるでしょう。

EUDRの主要期日

2025年11月26日、欧州理事会は適用開始時期を再度延期する交渉方針を示しました。新しいスケジュールでは、中規模・大規模企業には2026年12月30日から、零細・小規模企業には2027年6月30日から適用されます。また、欧州理事会は欧州委員会に対して、2026年4月30日までにEUDRが事業者、特に小規模・零細事業者に与える影響と事務負担を評価する簡易レビューを実施するように求めています。延期や簡易レビュー実施については、現時点で欧州理事会が交渉方針を決定した段階であり、最終合意は今後欧州議会との協議を経て成立する予定です。

森林認証とEUDR

EUDR対応においては、FSC認証やPEFC認証、RSPO認証、既存の国際認証制度との連携が有効です。FSC認証(適切な森林管理の推進)や、RSPO認証(パーム油の持続可能な生産)は、森林破壊を防ぐことを目的としたEUDRの要求事項と重なる部分が多くあります。これらの既存認証を活用することで、新たなトレーサビリティの構築やリスク評価にかかる負担を減らし、より効率的にコンプライアンスへ対応できるようになります。
特に、FSC認証はEUDR対応に向けて「FSC対応FSCアラインド」を導入しました。この認証は、FSC認証取得者がEUDRの要求事項を満たすために、EUDR特有の要件をカバーする仕組みです。このアラインド認証を構成する重要な要素として「FSC EUDR対応モジュール」があります。対応モジュールは、既存のFSC認証に追加する補完的な規格で、扱う製品やサプライチェーン上の役割ごとに整理された追加要件を含み、さらにEUDRで求めるデューデリジェンスに対応できる仕組みも備えています。対応モジュールを適用することで、既存のFSC認証に沿って対応できるため別途仕組みを構築する必要がなく、EUDR対応を効率化できます。また、認証機関による評価を受けることで、信頼性を担保することができます。また、PEFCにおいてもEUDR対応の規格が発行しており、「PEFC EUDR デュー・ディリジェンス・システム(PEFC EUDR DDS)実施のための要求事項 」があります。これまでFSC森林認証やPEFC森林認証サービスを提供してきた経験を活かし、アミタでは現在、FSC EUDR対応モジュールやPRFCのEUDR対応規格への審査開始を予定しております。EUDR対応を含む森林認証サービスに関して、ぜひお気軽に弊社にご相談ください。

関連情報

サステナビリティ全体戦略への統合

EUDR対応は単独の取り組みではなく、企業のサステナビリティ戦略全体に組み込むことが求められます。特に、TNFD(自然関連財務情報開示)やCSRD(企業サステナビリティ報告指令)、CSDDD(企業持続可能性デューデリジェンス指令)との整合性を取ることで、自然資本リスクの管理や情報開示の一貫性が確保され、欧州市場での信頼性が高まります。ひとつひとつの規則を別々のものとして見るのではなく「企業としての持続可能性を確保する」という共通の軸に沿って全体をまとめて捉えることが、これからのサステナビリティ戦略では重要です。

関連記事

こうした取り組みを進める際には、認証制度や開示フレームワークに精通した専門家と連携することが、効率的かつ確実な対応への近道です。TNFDやCSRD対応の支援を行う専門家と協力することで、戦略の質とスピードを両立することができます。

プロフィール

林 日向子(はやし ひなこ)
アミタ株式会社 サーキュラーデザイングループ

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