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グローバル循環プロトコル(GCP)とは?(前編) ― サーキュラーエコノミーをビジネスの言語で扱うために
グローバル循環プロトコル(Global Circularity Protocol:以下、GCP)とは、企業が自社のサーキュラーエコノミーへの移行度合いを測定・評価・開示するために設計された、国際的枠組みです。気候変動分野のTCFDや自然資本分野のTNFDに続くカタチで、循環経済分野にも開示枠組みを整備したという以上に、GCPは、企業がサーキュラーエコノミーを自社戦略として取り込むための有用なツールとなるよう設計されています。
前編では、GCPの概要や開発経緯、またその特徴を他の循環性評価指標との違いも踏まえながら解説します。
また後編では、GCP導入の実務的ステップと、導入により企業が得られるメリットを中心に解説します。
GCP(グローバル循環プロトコル) とは
サーキュラーエコノミー(循環経済)は、環境配慮の取り組みから、企業競争力を左右する経営課題へと位置づけが変わりつつあります。一方で「循環的であること」をどのように測り、どのように経営判断につなげるのかについては、明確な基準や指針が不足しているのが実情です。
こうした課題意識のもとで策定されたのが、GCPです。GCPは、企業が自社の循環性(サーキュラリティ)を、
- 共通の考え方で
- 比較可能な形で
- 経営や事業判断に活かすことを目的として
測定・評価・開示するために設計された、国際的なビジネス向けプロトコルです。正式名称に「for business」と付されている通り、政策や研究ではなく、企業実務での活用を前提に設計されています。
出典:GCP for business v1.0(WBCSD)
GCP策定の背景と国際的な広がり
2025年11月、COP30において、GCPのバージョン1.0(GCP v1.0)が正式発表されました。
GCPは、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)と、国連環境計画(UNEP)がホストするOne Planet Networkを中心に、80以上の企業・政府系組織・民間団体・研究機関、150名超の専門家 が参画して検討が進められてきました。
気候変動分野ではTCFD、自然資本分野ではTNFDといった枠組みが整備される一方、循環経済については、企業が経営に使える共通の評価基準が存在していなかったことが、策定の大きな背景にあります。
日本政府が比較的早い段階からこの議論に関与してきた点も特徴です。資源制約の強い日本にとって、循環経済は環境政策であると同時に産業競争力の源泉でもあります。GCPへの関与も、国際標準づくりに参画することで、日本企業の強みを活かしやすい環境を整えるという文脈で位置づけられています。
GCPの特徴
GCP以前にも、ISO59020やCirculytics(エレンマッカーサー財団)、CTI(WBCSD)などの指標が存在してきました。GCPの特徴や設計思想を、他の指標との違いも示しながら解説します。
関連記事:サーキュラーエコノミーの国際規格 「ISO 59000」 シリーズとは?
GCPの特徴①資源を「回す」だけでなく「減らす」「長く使う」を重視
従来の循環性評価は、リサイクル率や再生材比率など「いかに資源を循環させているか(Close)」に焦点が当たりがちでした。GCPではこれに加え、次の視点を重視しています。
- Narrow:そもそもの資源投入量を減らしているか
- Slow:製品や資産をより長く、価値高く使っているか
これは、循環経済を廃棄物対策やリサイクルの延長ではなく、設計やビジネスモデル段階から捉え直す考え方です。資源をいくら上手に回しても、投入量が増え続ければ持続可能にはなりません。GCPはこの前提に立ち、循環経済の本質を評価しようとしています。
出典:GCP for business v1.0(WBCSD)
GCPの特徴②:環境・社会・経済を統合して捉えるインパクト評価
多くの循環性指標は、GHG排出量や資源消費量など、環境インパクトの評価を中心に設計されています。GCPでは環境面に加え、雇用や働き方、サプライチェーンの公正性、地域社会への影響など、社会的インパクトも評価の射程に含めています。循環経済を、環境負荷低減の手段ではなく、社会・経済システム全体の転換、システミック(統合的)デザインとして捉えていると言えるでしょう。
この点は、日本企業にとっては特に重要です。日本企業の循環型の取り組みは、地域や雇用、人々の暮らしと深く結びついているケースが多くあるためです。GCPは、そうした価値を説明しやすくする枠組みだといえます。
関連記事:
社会的インパクト評価 ~その目的、実践方法、事例を解説~
サーキュラーエコノミーの社会的意義とは?
GCPの特徴③:「測定」よりも「評価」と意思決定を重視
従来の循環性指標は、数値を出すこと、ベンチマークと比較すること自体が目的化しやすく「測定したが、次に何をすればよいのか分からない」という声も少なくありませんでした。しかしGCPでは、
- 評価結果をどう解釈するか
- どの領域に優先的に手を打つべきか
- 自社はCE移行のどの段階にいるのか
といった評価・意思決定・改善につなげることに重点が置かれています。そのためGCPは、単独のKPIや単年度のスコアではなく、企業が循環経済へ移行していくための「材料」として使える評価体系として設計されている点が、大きな違いです。
GCPの特徴④:インターオペラビリティ(相互運用性)
GCPのもう一つの大きな特徴が、インターオペラビリティ(相互運用性)を重視している点です。これは、既存の循環性指標や気候・自然・ESGの開示枠組み、各国・各業界の制度やガイドラインと対立・競合するのではなく、接続可能であることを前提に設計する、という思想です。
先述した「測定よりも評価を重視」という特徴とも通じますが、GCPでは、
- GHG排出量(Scope 1-3、LCA)
- 自然資本・生物多様性(TNFD的視点)
- 社会的インパクト(労働、地域、価値分配)
との接続が特に意識されており、これらを独自指標で再計算せず「前提条件」「インプット」として受け取り、循環戦略として妥当かどうかを評価する枠組みを提供します。
例えば「再生材比率を〇%高めた」「GHG排出量を△%削減した」という測定に対して、
- Narrow(資源投入削減)やSlow(製品寿命延伸)に寄与しているか?
- 単なる「リサイクル強化」に偏っていないか?
- 社会的な好影響、悪影響を伴っていないか?
といったように、GCPはその数値をどう解釈し、循環戦略として妥当かを評価する"評価フレーム"を提供します。
「for business」とは、単に「企業向け」ということではありません。
新たな数値を測り直したり再計算したりすることよりも、既存の数値が何を示すのかを国際的共通言語の中で明らかにし、企業として次の意思決定を可能にするという意味での「for business」なのです。
ここまで、GCPの概要、開発の経緯、指標としての設計思想をその特徴とともに解説してきました。サステナビリティに関する開示枠組みとして、また循環性評価の指標としても、GCPは後発のポジションとなりました。しかし後発であるからこそ、インターオペラビリティなどを前提思想として組み込み、より企業が導入しやすく、ビジネスとして意義のあるプロトコルを志向している点が特徴です。
後編では、GCP導入の実務的ステップと、導入により企業が得られるメリットを中心に解説します。
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執筆者プロフィール(執筆時点)
木下 郁夫(きのした いくお)
アミタ株式会社 カスタマーエンゲージメント推進室
企業向けのソリューション営業の経験をベースに、廃棄物管理に係わるシステムの設計・開発、業務フローの構築、サステナビリティ経営に向けた新規事業の提案などに携わる。現在は『未来をおしえて!アミタさん』の編集を含め、持続可能な企業経営/地域運営に資する情報発信を担当している。
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