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NPOと協働でCSVに取り組むメリット -地域クラスター形成とイノベーション創出の仕組みづくり-リレーコラム

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これまで企業がNPOと協働してCSVに取り組むメリットについて、第1回ではBOPビジネスの事例をもとに製品・サービスの提供の観点から、第2回では、企業のバリューチェーンの競争力強化と社会への貢献の両立の観点から説明してきました。最終回となる今回は、企業が地域社会にクラスターを形成し、CSVとして自社の競争力強化と地域への貢献の両立、そしてイノベーション創出の仕組みづくりを行う際にNPOと協働するメリットについて説明します。

地域クラスターと企業の競争力との関係

企業はそれ自体で自己完結しているわけではなく、関連企業、部品や原料等のサプライヤー、ロジスティックス、学術組織、業界団体、規制当局等に支えられており、さらに大きく影響を受けています。こうした企業の活動を支える存在が地理的に集積した地域を「クラスター」と呼びます。スタンフォード大学や研究機関、ベンチャーキャピタルやインキュベーター、IT関連企業等が集積する米シリコンバレーがその典型例です。

クラスターが企業に与える影響については、教育研修、輸送サービス、関連業界等の能力が高まれば、おのずと自社の生産性も向上しますし、反対にクラスターに問題があれば、企業の競争力に深刻な影響を及ぼします。

例えば、公的教育の質が悪いと、生産性や再教育に関わるコストが企業に発生します。また、輸送インフラが整っていないと、ロジスティクスのコストが上昇しますし、男女差別や人種差別があると、優秀な人材が集まりにくくなります。また、貧困問題のある地域では製品需要は限られ、環境の劣化、労働者の健康障害、セキュリティ・コストの増加が起こります。

したがって、企業は自社の競争力を高めるために、クラスターを形成し、かつクラスターの課題を解消することで、CSVとして地域社会の発展と自社の競争力向上の両方を達成する必要があります。

企業がCSVとしてクラスター形成に取り組んでいる事例として、例えばヒューレットパッカード社は、自社の操業する地域の貧困層若年世代を対象に、プログラミング能力の開発訓練を無償で提供し続け、その中から優秀人材を確保する活動を行っています。こうした活動は地域の発展を促すとともに、不足しがちなITに精通した人材を育成することを通じて自社の競争力の向上につながる取り組みです。

また、前回取り上げた、ネスレがコーヒー豆の調達に関して、サプライヤーのコーヒー農家をNGO/NPOと協働で支援してCSVを実践している事例もクラスター形成の良い事例といえます。そしてネスレの事例が示す通り、クラスターの形成やそれが抱える課題への対処には、多くの場合、地域のインフラや制度にテコ入れする必要があり、それら全てを企業単独で行うのではなく、NPO/NGOや業界団体、政府機関、場合によっては同業他社とも協働することが成功の鍵となります。

地域クラスターからイノベーションを創出する仕組みづくり

企業が、地域クラスターを形成し、その課題を解決しながら地域発展への貢献と自社の競争力の向上を図ることは、企業にとっては、イノベーションを創出する仕組みづくりの機会にもなり得ます。

例えば、昨年の東日本大震災以降、多くの企業が東北各地に拠点を作り復興に取り組んでいます。東北の復興においては、住宅の供給やガレキ処理等の他に、現代の日本が抱える少子高齢化や農林水産業の衰退、資源・エネルギー問題等、様々な社会的課題の解決に取り組む必要があります。これらは、時代のニーズであり、そのニーズに正面から事業で取り組むことは、企業にとってイノベーションの機会となります。

そして、企業は、これらに取り組むために東北に地域クラスターを形成し、そこに優秀な人材、知恵、資金等を集め、イノベーションを生み出す装置にしていく必要があります。この場合も、企業は単独で取り組むのではなく、NPOや業界団体、政府機関と協働することで、より効果的なイノベーション創出の仕組みづくりが可能になります。

特に、第1回で紹介したように、地域コミュニティのニーズや人脈に精通している地域のNPOや社会的課題の解決に最前線で取り組んでいる社会起業家との協働は重要であると考えます。

こうした協働により、多くの企業が東北に地域クラスターを形成し、CSVとしてイノベーション創出の仕組みづくりに取り組み、一日も早い真の復興がなされることを期待しています。


▼「NPOと協働でCSVに取り組むメリット」連載コラム一覧
第1回:製品・サービスの提供
第2回:バリューチェーンの競争力強化と社会への貢献の両立
第3回:地域クラスター形成とイノベーション創出の仕組みづくり

執筆者プロフィール
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鴨崎 貴泰 (かもざき よしひろ)
公益財団法人信頼資本財団
事務局長

1978年生まれ。千葉大学園芸学部緑地環境学科卒業。グロービス経営大学院卒業(MBA)。環境コンサルティング会社を経て、2009年信頼資本一般財団法人(現:公益財団法人信頼資本財団)に入職し、現在に至る。社会起業家に対する無利子・無担保融資事業や、共感する社会的事業に、多くの方が寄付を通じて参加・参画することができる助成プログラム「共感助成」事業の立ち上げ・運営の統括を行っている。また、社会起業家に対する経営相談会では年間50団体の経営相談に応じている。

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