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BUNさん流、小型家電リサイクル法解説。企業はどう対処すればいいの?|後編:小型家電リサイクル法の用語解釈は大丈夫?BUNさんの「元・行政担当者が語る 廃棄物管理のイロハ」

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小型家電リサイクル法が既に去年から施行されています。名前は聞いたことがあるという方や、ご家庭では既に小型家電リサイクル法の処理ルートで処理をしたという方もいらっしゃることと思います。それでは、ご自身の会社では小型家電リサイクル法により、なにをやらなくてはいけないのかご存じでしょうか?

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この機会に、改めて小型家電リサイクル法を2部構成で説明させていただきます。後編では、小型家電リサイクル法の用語をしっかり法律に照らし合わせて確認していきましょう。前回記事

▼参考情報
環境省:使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(PDF)

小型家電リサイクル法の条文、用語を確認しましょう

用語説明を前にまず、小型家電リサイクル法を見るのは初めてだという方もいらっしゃるかもしれませんので、条文を分解して一つ一つ見ていき、小型家電リサイクル法を確認してみましょう。

まず、7条を確認しましょう。

使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律 第7条
「事業者は、その事業活動に伴って生じた使用済小型電子機器等を排出する場合にあっては、当該使用済小型電子機器等を分別して排出し、第十条第三項の認定を受けた者その他使用済小型電子機器等の収集若しくは運搬又は再資源化を適正に実施し得る者に引き渡すよう努めなければならない。」

と規定されています。

まず、「事業者は」と登場しますね。実は、この7条より一つ手前の第6条には、「消費者の責務」、後ろの8条には「小売業者の責務」、9条「製造業者の責務」とありますから、7条に規定する「事業者」とは、いわゆる「会社」「企業」という、事業活動を伴って廃棄物を排出する「排出者」ってことだとわかります。

ここがポイントになります。つまり、小型家電リサイクル法では、「消費者」と「事業者」では求めていることが違うと言えます。

一方6条では

使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律 第6条
「消費者は、使用済小型電子機器等を排出する場合にあっては、当該使用済小型電子機器等を分別して排出し、市町村その他使用済小型電子機器等の収集若しくは運搬又は再資源化を適正に実施し得る者に引き渡すよう努めなければならない。」

と規定しています。

7条とほとんど同じ文言ながら、一箇所違うところがあります。消費者の場合は「市町村」が入っている代わりに、認定事業者は規定されていないのです。

消費者つまり「家庭生活から排出される」ということで、この対象は「一般廃棄物たる廃小型電子機器」になります。これは廃棄物処理法の原則である「一般廃棄物は市町村が管理を行う」を原則としているのです。

ですから、「一般廃棄物たる廃小型電子機器」は地元の市町村が取り組まないと、小型家電リサイクル法処理ルートにはなかなか適応されないシステムと言えます。

小型家電リサイクル法の認定事業者について
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さて、続いては「小型家電リサイクル法の認定事業者」についてです。「第十条第三項の認定を受けた者」は、小型家電リサイクル法認定事業者と呼ばれ、既に認定事業者は30社を超えています。

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実際には、この「認定事業者」が直接、使用済小型電子機器の処理は行わず、いわゆる下請に処理を委託するケースも容認されているのですが、委託出来る「下請(認定事業者の委託業者)」は認定申請の際の事業計画に最初から掲載されている業者に限定されています。

その場限りで、無計画に処理を委託するわけにはいかないということです。 そして、この「認定事業者」と「認定事業者の委託業者」は、廃棄物処理法で規定している一般廃棄物処理業、産業廃棄物処理業の許可は不要と規定されています。

ここでの注意点として、形式上は小型家電リサイクル法の処理ルートで、「認定事業者の委託業者」に直接契約することはあり得ません。使用済小型電子機器の流れが排出事業者から「認定事業者の委託業者」であったとしても、契約形態はあくまでも、排出事業者と「認定事業者」との契約になります。ただし、「認定事業者の委託業者」なる人物が「その他再資源化を適正に実施し得る者」の立場で受け取る場合もあり得るわけです。

これは「認定事業者」に処理委託したのではなく、「その他再資源化を適正に実施し得る者」に処理委託したという形になります。その際には処理許可不要制度は適用にならないので、「その他再資源化を適正に実施し得る者」として、正規の産業廃棄物許可を取得しておかなければなりませんし、排出事業者も許可内容が必要になります。

それでは「その他再資源化を適正に実施し得る者」とは?
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いよいよこの条文では最も不明確な「その他」の存在です。

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実は、この「その他」については、法律、政省令でも具体的には示していません。

法律の運用について通知した文書(使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律の施行について(通知)平成25年3月8日付け)の中では、「認定事業者と同等以上の適切な再資源化を実施できる者」、認定基準である施行令(使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律施行令)の第4条、第6条を参照して、市町村や排出事業者が自分の責任で判断するようにと言っています。

「使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律施行規則」の第4条、第6条を見てみると、「処理工程が明確である」「金属を回収できる」とともに、「個人情報の漏えい防止」等の廃棄物処理法許可業者には規定されていない基準も規定されています。 もちろん、「飛散、流出、悪臭」等の生活環境保全上の支障の防止や経理的基礎、欠格要件非該当といった通常の産業廃棄物処理業許可業者に求められる基準は当然に規定されています。

平成22年の廃棄物処理法改正以降は、現地確認を行う排出事業者も増えてきているのですが、小型家電においては、通常の産業廃棄物以上に、排出した以降の処理状況を排出事業者は目配りしておかなければならないってことになり、そうなると、国が認定している認定事業者ルートに乗っ取って処理委託するのが簡単という印象になります。 ここまでが、「説明ポイント」の(4)~(6)までの話です。

▼関連資料

小型家電リサイクル法、処理委託基準に特例無しということは?

さて、今回のテーマではここが最も重要になります。

小型家電リサイクル法では、許可不要制度(認定事業者とその委託業者は一般廃棄物、産業廃棄物の処理業の許可は不要)はあるのですが、処理委託基準の特例は一切ありません。

よって、産業廃棄物たる小型家電を処理委託する際は、委託契約書が必要になります。 さらに、大臣広域認定や小型家電リサイクル法の時には規定されていた、マニフェスト( 産業廃棄物管理票)不要制度も規定されていません。

さらに加えて「認定事業者の委託業者」に引き渡す場合は、「再委託」となってしまい、このケースでは、廃棄物処理法第14条第16項に規定する「再委託時手続き」と小型家電リサイクル法第13条第2項に規定する「認定事業者が委託業者に委託する際の手続き」が必要になってしまいます。具体的には、排出事業者からの書面による承諾書等です。

すなわち、小型家電リサイクル法の処理ルートで処理する場合は、通常の産業廃棄物処理業者が、認定事業者(または、その委託業者)にチェンジした場合と同じです。手続き的には省略、簡単になることは、一つもありません。 ここまでが、「説明ポイント」の(7)(8)の話です。

BUNさんが考える小型家電リサイクル法の現実的対応
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以上、整理すれば、次のようになります。

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  1. 廃棄使用済小型電子機器等は、今まで通り産業廃棄物許可業者に引き渡したとしても罰則は無い。しかし、小型家電リサイクル法では、再資源化を適正に実施し得る者に引き渡す義務を規定しているので、極力、その方向としたい。
  2. その受け皿は、小型家電リサイクル法認定事業者、その委託者であるが、再資源化を適正に実施可能であれば、通常の産業廃棄物許可業者でもよい。
  3. 小型家電リサイクル法では、委託基準の特例は無いので、委託契約書、マニフェストは必要である。

と、このように整理していくと、一般廃棄物たる廃棄小型家電のように、集荷ボックス方式等は不可能。また無人のボックスを置いておき、勝手に委託契約書に判子押していくともいきません。

10年前、20年前に家庭ごみの分別が言われるようになった時は、とても煩わしく、面倒な感じを受けたことを覚えています。しかし、今となっては、貴重な資源を守るためには当然のこととして、皆さんはそれに従っています。 小型家電リサイクル法も最初は煩わしく感じるかも知れませんが、目的、趣旨を理解した上で、資源の有効活用に協力していきたいものです。

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執筆者プロフィール

長岡 文明 (ながおか ふみあき)
アミタ株式会社 特別顧問

山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も務める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)。

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