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第3回:使用済み品を全て規制対象に堀口昌澄_連載「揺らぐ廃棄物の定義」

Some_rights_ reserved_by_brotherM.jpg本連載シリーズでは、廃棄物関連のコンサルタントや研修を数多く実施してきたアミタの主席コンサルタントの堀口昌澄が、連載12回を通じて、「揺らぐ廃棄物の定義」について解説します。 廃棄物を取り巻く法の矛盾や課題を理解することで、今後起こりうる廃棄物関連法の改正への先手を打つことができます。

今回は、使用済家電製品における廃棄物か否かの判断について解説いたします。

本コラム記事の一覧はこちらから。

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平成24年3月19日付けで、環境省廃棄物・リサイクル対策部の企画課長、廃棄物対策課長、産業廃棄物課長の3名の連名で出された「使用済家電製品の廃棄物該当性の判断について 環廃企発第120319001号 環廃対発第120319001号 環廃産発第120319001号」という通知では、(誤解を恐れずに言えば)有価で売却できたものであっても、不適正処理されるのであれば廃棄物と判断して差支えないと説明している。

家電リサイクル法の4品目については、フロン回収や高いリサイクル率を義務付けた処理基準があり、これを順守するためには相当のコストがかかる。家電品としての再利用であれば有価となるかもしれないが、それ以外の方法で有価買取するのであれば処理基準を守らない不適正な処理をしているに違いないから、ということだ。

言い換えると、フロンの大気放出や鉛やヒ素などの有害物質が不適正処理されるのであれば、有価で売買されても廃棄物である、というのである。また、家電4品目でなくても、回収した業者が有害物質の飛散・流出防止をしていない場合は、総合判断により廃棄物と考えるべきと言っている。

つまり、処理基準を守らない処理であれば廃棄物である、有害物質をまき散らすなら廃棄物であるという判断基準を提示していると考えられる。

しかし、現在の廃棄物処理法はそのような解釈をしていないし、廃棄物処理法第2条にはそのような基準はなく、総合判断説に鑑みたとしても「物の性状」が辛うじて該当する程度だろう。

廃棄物の判断基準に有害性を加えるとすれば、基準値がなければ現場は対応できない。たとえば上記、総合判断説の「物の性状」について平成 25 年3月 29 日付けの「行政処分の指針について 環廃産発第 1303299 号」では、「生活環境の保全に係る関連基準(例えば土壌の汚染に係る環境基準 等)を満足すること」を条件としている。

では、環境基準などを踏まえて含有、溶出基準を定めたうえで、大防法、水濁法、労安法、フロン排出抑制法その他の環境関連法に触れない処理であれば廃棄物ではない、という基準はどうであろうか。

しかしこれでは、引き渡した相手がどのように処理するかを確認しなければ、それが廃棄物に該当するかどうかがわからない。確かに、大量に家電を排出する事業者であれば、委託業者の処理方法を確認すべきではある。実際、売れるからといって安易に売却するのではなく、売却先の現場の管理状況を確認してから取引しているという排出事業者はある。しかし、一般の個人や小規模事業者の全てにそれを求めるのは現実的ではないし、安定的な法運用を期待することができない。これは家電に限った話ではない。

家電に限らず、処分される使用済みの製品(リユースされるものを除く)は一律廃棄物としてしまうほうがわかりやすい。リユースされるものは、古物商の許可が必要となるので、切れ目のない規制となってよいのではないだろうか。

次回は、食品リサイクル法から見える廃棄物の定義について解説いたします。

※本コラムは、環境新聞にも連載中です。

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執筆者プロフィール(執筆時点)

堀口 昌澄 (ほりぐち まさずみ)
アミタ株式会社 
環境戦略支援営業グループ CSRチーム 主席コンサルタント(行政書士)

産業廃棄物のリサイクル提案営業などを経て、現在は廃棄物リスク診断・廃棄物マネジメントシステム構築支援、廃棄物関連のコンサルタント、研修講師として活躍中。セミナーは年間70回以上実施し、参加者は延べ2万人を超える。 環境専門誌「日経エコロジー」にも連載中。環境新聞その他記事を多数執筆。個人ブログ・メルマガ「議論de廃棄物」も好評を博している。大気関係第一種公害防止管理者、法政大学大学院特別講師、日本能率協会登録講師。

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