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路盤材として使用された鉄鋼スラグに有害物質が含有していたことが問題になっています。当社が委託しているリサイクル先の注意ポイントは?

有価物として取り扱った鉄鋼スラグが廃棄物だったのではないかとの疑いで自治体が立ち入り検査し、国会でも問題となっています。
本記事では排出事業者として、こういった事件に巻き込まれないよう注意するポイントについてお伝えします。

鉄鋼スラグは、廃棄物だったのか?

まず、某鉄鋼メーカーの鉄鋼スラグが廃棄物ではないかと疑いをもたれている理由は下記の二つです。

① 基準を超えるフッ素や六価クロムが検出されている
→「有害物質を含んでいるか」
②売却代金を超える手数料(処理費)を払っていた
→「有価売却できるか」


「有害物質を含んでいるか」
もちろん、環境基準を超えたからといって、全ての物が廃棄物となるわけではありません。天然の鉱石が土壌環境基準を超えることがあったとしても、それを廃棄物として扱うことはありません。鉄や非鉄の原料として使用されるからです。
ただ、路盤材として使われる場合は、土壌を汚染する可能性があるために有害物質の有無が問題となります。汚染物質は廃棄物である、という議論は少々乱暴ですが、生活環境を保全する廃棄物処理法の目的を踏まえても、有害物質を含んでいる路盤材原料を廃棄物として考えることは妥当な解釈といえます。仮に路盤材の需要が供給を大幅に上回り、環境基準を超える路盤材までもが有価売却できるのだとしても、廃棄物と考えられる可能性があります。重要なことは「環境を汚染するかどうか」です。

「有価売却できるか」
脱法目的で外見上有価売却の体裁をとりつつも、他で売却額を超える費用を支払っていることがあります。これは実質的に処理費を払っている、つまり有価売却を偽装していることになるので廃棄物の処理委託というべきです。
なお、仮に各種の品質・環境基準を満たしていたとしても、処理費を払っているのであれば通常は廃棄物と考えることになります。有害物質がなくても不法投棄されると腐敗、粉塵、悪臭などの問題となるからです。

「有害物質を含んでいるか」は「物の性状」として、「有価売却できるか」は「取引価値の有無」として、いずれも総合判断の要素に含まれます。どちらか一方に問題があれば、廃棄物と考えた方が安全でしょう。今回のスラグの事件は、この両方の要素に問題があるのですから、廃棄物である疑いが濃厚です。

【総合判断説について参考】

次は、リサイクルする排出事業者として気を付けるべきポイントについて解説します。

排出事業者として気を付けるべきポイント

①自社が副産物を有価物として引き渡す場合
各種有害性に係る基準を満たしているかを確認し、本当に有価で売却できているのか、有価売却を偽装していないかを確認してください。有価売却できていているからといって、安易に「廃棄物ではないから管理対象から外す」のではなく、定期的に状況把握すべきでしょう。その物の成分が変動したり、市場価格が変わってしまい、現場判断で取引内容を変更している可能性もあります。

② 中間処理会社がリサイクル/有価売却している場合
中間処理会社がリサイクルしている場合、排出事業者としては直接関与できないので不安は大きいでしょう。例えば、処理後のリサイクル品の品質基準の確認、品質管理をどのようにしているのか、本当に有価売却しているのかを確認してください。売却先の需要動向も重要なポイントです。リサイクル品にならなかったものの処理状況も忘れずに確認してください。

いずれも、現地確認などのタイミングで定期的に確認するようにするとよいでしょう。

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執筆者プロフィール(執筆時点)

Horiguchi.jpg堀口 昌澄 (ほりぐち まさずみ)
アミタ株式会社 環境戦略支援営業グループ
CSRチーム 主席コンサルタント(行政書士)

産業廃棄物のリサイクル提案営業などを経て、現在は廃棄物リスク診断・廃棄物マネジメントシステム構築支援、廃棄物関連のコンサルタント、研修講師として活躍中。セミナーは年間70回以上実施し、参加者は延べ2万人を超える。 環境専門誌「日経エコロジー」にも連載中。環境新聞その他記事を多数執筆。個人ブログ・メルマガ「議論de廃棄物」も好評を博している。大気関係第一種公害防止管理者、法政大学大学院特別講師、日本能率協会登録講師。

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