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バックキャスト(バックキャスティング)とは?フォアキャスティングとの違い・メリット・具体的な進め方を解説! 

バックキャスト(バックキャスティング)とは、未来を起点に現在すべきことを逆算して考える思考法です。コラム最終回では、連載内容を踏まえ、SDGsを競争力のある戦略・戦術に落とし込むために有効なバックキャスト(バックキャスティング)の考え方、メリット、具体的な進め方を解説します。

※本記事は、企業の事業開発者のためのWebメディア「Biz/Zine」へ、寄稿した内容を一部編集し、掲載しています。

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バックキャスト(バックキャスティング)とは?

●バックキャスト(バックキャスティング)思考とは
国内市場の縮小や、グローバルレベルでの競争が高まる中で、従来の延長線上での経営や事業展開に危機感を抱いている方も多いのではないかと思います。社会状況や自然環境の変化を予測し、将来市場を見通した上で、これまでにないビジネスの選択肢を準備しておくことは、企業の成長に欠かせません。

しかし、重要性を認識していても、実行に移すことは困難です。私たちは、既存の製品を「より軽く」「より燃費を良く」していこうといった、従来のスペックとの比較で生まれる指標から一旦離れる必要があります。しかし、その指標から離れた途端、次にどこに軸を置いたらよいのか、迷ってしまうのではないでしょうか。

では「従来の延長」とは別の軸に立った指標を打ち出すには、何を足掛かりに考えればよいのか。ここで、登場するのがSDGsです。不透明で不確実な将来を見据え、この新たな選択肢を準備するために、SDGsは一つの有効な指標となり得るのです。

SDGsを自社の次なる選択肢のためのイノベーションのドライバー(駆動装置)として活用するためには、以下2点が必要です。

  1. SDGsに対する正しい理解を深め、生きたリテラシーを獲得すること
  2. SDGsを実践に落とし込むスキルを獲得すること

そして、この2点に通じる注目すべきひとつの手法に「バックキャスティング(backcasting)思考」というものがあります。

●バックキャスト(バックキャスティング)とフォアキャスティング
バックキャスト(バックキャスティング)思考は「未来」を起点として、そこから逆算して「今」何をすべきかを考えることです。これと対をなすのが「フォアキャスティング(forecasting)」思考で、この手法は「今」を起点とする思考です。フォアキャスティング思考は、現在の延長線上のビジネスの将来を描くことについては有効ですが、SDGsを活用した自社の全く新しいビジネスを描くことは難しいといえます。

出典:「事業構想」Webサイトより

バックキャスト(バックキャスティング)思考のメリット

●「第5の競争軸」(サステナビリティ)の出現
SDGsが国連で採択されたのは2015年。世界的な環境制約が高まり、社会課題が深刻化する社会において、持続可能性(サステナビリティ)の追求は、企業の新たな優位性を確保する競争軸になっています。SDGsを戦略的に事業に落とし込む好事例も増えてきましたが、他社の真似事をして自社が同じように着想し実践できるかは別の話です。企業がSDGsを戦略的に取り組むには、未来への豊かな想像力と自らの意思や価値観が最も重要になります。

今後の事業の方向性や戦略を考えるとき、顧客や競合を分析することは重要ですが、あまり今起こっていることを意識しすぎると、現状の延長線の枠を超えられず、新しい軸での競争優位性を生むことは困難と言えます。

付け加えると、いま自社で見えている状況は、他社も同様に見えているという点に注意が必要です。結局は同じ軸の線上での競争に陥ってしまうことなり、現状の分析を続けても消耗戦が続くことになります。

絶え間ない変化が起きるこれからの時代では、その変化に合わせた「あるべき姿」よりも、未来における「ありたい姿」と自社の提供価値を定義することがより重要となり、それが競争力の源泉になるのだと思います。その際に有効な考え方がバックキャスト(バックキャスティング)思考です。

バックキャスト(バックキャスティング)の具体的な進め方

●「第5の競争軸」(サステナビリティ)の出現

ではバックキャスト(バックキャスティング)は具体的にどう進めればよいのでしょうか。

バックキャスト(バックキャスティング)のテクニックとしては、残念ながら決められた手順やツールがある訳ではありませんが、以下、4つのステップに沿って進めていくとよいでしょう。

■STEP1 望ましい未来像の描写(ビジョン)

人口動態、環境制約、技術革新など、メガトレンドを踏まえて、アジェンダ(検討範囲、テーマ、目標年度等)を設定し、できるだけ具体的で魅力的な未来像を描く(豊かな想像力は必要だが、空想や幻想にはならないよう注意が必要)。

■STEP2 「現在」における課題と可能性の洗い出し

現在の状況を描写し、言語化する。そして、その現状に潜む課題(変革を阻む要因)と可能性(今後生かせそうな要素)を様々な視点・視野で列挙する。

■STEP3 S/V/Tのアクション項目

望ましい未来像の実現に向けて、現在の課題と可能性を踏まえ、必要なアクションを多数挙げる。最初は時間軸を気にせずに多数の項目を挙げることに集中する。さらに、アクションをS/V/Tで整理する。

S=System(システム)・・・法規制、社会システム、ビジネスモデルなど
V=Value(価値観)・・・価値観、意識、マインドセット、教育など
T=Technology(技術)・・・道具、ツール、技術、技術のプロセスなど

■STEP4 アクション項目の時間軸への配置

2018年~2030年の時間軸に、アクション項目を配置する。アクション項目のつながりを整理し、不足する領域が現れれば、アクション項目を追加する。重点的に取り組む領域・項目を浮かび上がらせ、優位性を獲得できる可能性がある領域へ選択と集中を促します。

実施ステップのポイントは「望ましい未来像」を明確に描くことです。どのような会社であり、顧客に対してどのような価値を提供したいのか、各STEPは単純に進まず、進んだり戻ったりを繰り返しながら、未来像からアクションまで一連のストーリーが描けるかどうかを深く考察していきます。

◇STEP1◇STEP2◇STEP3◇STEP4
望ましい未来増の描写(ビジョン)現在における課題と可能性の洗い出しSTEP2を踏まえたS/V/Tのアクション項目アクション項目の時間軸への配置
アジェンダ (テーマ と目標年度) を踏まえ、できるだけ具体的で魅力的な将来像を描く
(発想を豊かにだが、ファンタジーでないかたちで)
背景情報を踏まえる(メガトレンド)
現在の状況を言語化し(描写する)、その現状に潜む課題 (変革を阻む要因)と可能性 (今後活かせそうな要素)を挙げる
未来像に向け、現在の課題と可能性を踏まえ、必要なアクションを、最初は時間軸を気にせずに多数挙げる

S=システム
V=価値観
T=テクノロジー
2017年~2030年の時間軸に、アクション項目を配置する。不足する領域(時間軸上)が現れればアクション項目を足す

まとめ

以上、バックキャスト(バックキャスティング)について、その思考方法の特徴とメリット、具体的な進め方についてお伝えしてきました。今回のテーマ「社会を変える事業を創出し、社会から選ばれる企業を目指す」ために、バックキャスト(バックキャスティング)思考を使って、自社の新しい事業を考えてみましょう。

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執筆者情報

  • すえつぐ たかひで

    末次 貴英

    アミタホールディングス株式会社 代表取締役社長 兼 CIOO

    2005年にアミタへ入社。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)における分散型エネルギー供給システムの受託研究をはじめ、
    牧場・農業等の新規事業開発や企業のサステナブル経営統合支援など、多岐にわたる現場経験を経て経営へ。
    2020年より代表取締役、2023年3月からはアミタHD代表取締役兼CIOOとしてグループ全体の事業と情報の統合を牽引している。

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