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コラム

ワコール|ダイバーシティ戦略で目指すものとは?おしえて!きかせて!環境戦略

wacoal001.jpgダイバーシティ戦略(※注1)の一環として、女性を対象にした取り組みが注目されています。2016年4月には「女性活躍推進法」が施行され、CSR活動やサステナビリティ戦略のなかにダイバーシティを組み込む企業も増えています。そこで今回は、経済産業省の『平成27年度なでしこ銘柄」』にも選ばれた株式会社ワコールの執行役員ダイバーシティ・キャリア支援室の葛西室長、人事部人事企画課の深沢課長、頴川様にお話をうかがいました。

注1:ダイバーシティとは「多様性」を意味します。ここでは、性別、国籍、人種、生涯、年齢、価値観、文化などの属性の違いを指します。社員が持つ多様性を取り入れることで、ビジネス環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、企業の成長につなげる戦略をダイバーシティ戦略という。

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きっかけは88%の女性社員のリーダーシップを発揮させること

諏訪:ダイバーシティ・キャリア支援室はどのような経緯で発足されたのでしょうか。

葛西氏:ダイバーシティ・キャリア支援室は2014年に設立されたのですが、その前身は「女性活躍推進プロジェクト」という社内プロジェクトでした。当社は女性向けの商品が多く、社員も女性が約88%を占めます。9割近くもの女性社員が働いていながら管理職は男性の仕事という漠然とした雰囲気が社内全体にあり、女性社員自身もそのことに特段疑問を持たずに受け入れていることに経営層が危機感を持ったことがプロジェクト発足のきっかけです。

諏訪:「危機感」ですか。

葛西氏:えぇ。「世の女性に美しくなって貰う事」を目標としているワコールとしては、女性社員がもっとリーダーシップを発揮し、女性からの意見が多く出てくるようになることが、世の女性のニーズに応える商品を生み出すことにつながるはずです。プロジェクトでは、次世代の女性リーダーの育成に向けて、年間80名前後を対象にセルフエントリー式のリーダーシップ研修を行いました。プロジェクトを通して、女性リーダーを育成するためには色々な働き方ができる環境を整える必要があるということが分かり、専任部署としてダイバーシティ・キャリア支援室が発足しました。

諏訪:具体的にはどんな事に取り組まれたのでしょうか。

深沢氏:実は...、5年ほど前までは仕事と育児の両立支援制度が他社よりも遅れていました。先進的な企業は独自の支援制度の設置などを進めているなか、ワコールでは短時間勤務の対象者を3歳未満の子を養育する社員とするなど、あくまで法定基準に準じた制度設計でした。女性社員が9割近くを占めるために、制度変更の影響が大きく、整備がなかなか進みにくいという実情があったのです。

実際、短時間勤務の期間を延ばしたときは社員から様々な意見がありました。特に店舗では、販売員をいかに確保するかが、売上に直結するので現場から不安の声が多くありました。それでも、短時間勤務者をカバーする人員の経費を本社で負担するなどのフォロー体制を整えながら推進していきました。

諏訪:確かに、女性社員が多いことは必ずしも制度整備の推進力になるばかりではないですね。それでも整備を進められた結果、どのような成果がありましたか。

深沢氏:短時間勤務の期間を延ばす前までは出産をきっかけに離職する社員の割合はおよそ半分でした。期間延長後の現在は2割にまで減っています。出産をきっかけに離職していた社員の多くは、業務経験年数でいうと中堅世代です。特に店舗での販売業務において、お客様の体にフィットした商品を提案するという販売技術の習得には、どうしても長年の経験が必要となります。つまり、短時間勤務の推進は離職率の低減や高度な販売技術をもった人材の確保にもつながったのです。

葛西氏:本来店舗では、勤務時間が短くなればその分個人の売上も伸びにくくなるので、短時間勤務をしている社員は、短い時間でいかにパフォーマンスを上げるか工夫します。その結果、短時間勤務をしている社員の個人売上が店舗平均を上回るケースも数多く見受けられます。本社でも、チームで仕事の共有化が進んだ結果、属人的な仕事がなくなったり、チーム全体のパフォーマンスが上がったりするケースがありました。

諏訪:働き方の多様化は、様々な方面に好影響をおよぼすことが多いですよね。ダイバーシティ戦略の重要性はまさにそこにあると思います。

障がいのある社員が働きやすい職場=誰もが働きやすい職場

諏訪:ここまでは女性社員をターゲットにした取り組みをお聞きしてきましたが、その他の取り組みについてもおうかがいしてよろしいでしょうか。

葛西氏:子会社の新潟ワコール縫製株式会社では、障がいを持つ社員が働きやすくなるために新しい機器の導入や改良を進めています。例えば、製品のライフサイクルが短いアパレルでは前例のなかった「大型電子制御自動ミシン」を導入しています。障がいを持つ社員でも、安全で簡単な操作で正確に製品を仕上げることができ、同時に低コストで品質を安定させることができました。また、技術の未熟な社員もこのミシンを利用することで、短期間での人材育成にもつながっています。障がいを持つ社員が働きやすい環境をつくることが、結果として誰もが働きやすい環境となり、工場全体の生産性が上がるという効果がでています。

他にもワコール本社には「デフハートフル活動」という取り組みがあります。聴覚障がいをもつ社員たちの内発的な活動で、働きやすい職場環境をつくるために月に1回集まり、様々な問題をざっくばらんに話し合う意見交換会を行っています。実際にここから出てきたアイデアで聴覚障がいを持つ社員でも社員食堂の注文がしやすくなるような工夫がされました。こうした取り組みから、新潟ワコール縫製のように、誰もが働きやすい環境づくりに繋がっていくことを期待しています。

諏訪:「デフハートフル活動」のように聴覚障害をもつ社員からのアイデアから改善につながる事例は、ダイバーシティ・キャリア支援室が目指される組織像に近いですね。

働く環境の整備と社員の育成の2本柱で会社の成長を目指す

諏訪:ダイバーシティ戦略について今後の展望をお聞かせください。

頴川氏:これからは育児のための短時間勤務だけでなく、介護のために短時間勤務を必要とする社員が増えてくると思います。そうなると、仕事を属人化させないことや短い時間でパフォーマンスをあげることは、ますます重要になってくると思います。

深沢氏:そうですね。時間の制約が厳しくなっていく中で、どのように働き方を変えて生産性をあげるかということは考えていかないといけません。また、「販売の仕事が好きだから、ずっと販売の仕事をしていたい。」という人もいれば、「いつかは管理職として働きたい。」という人もいるなど、希望するキャリアは人それぞれですので、多様なキャリアステップを選べる環境づくりは、これからも充実させていかないといけません。

葛西氏:リーダーシップを発揮できる社員の育成もまだまだ取り組むべきことはあると思います。各部門から多様なアイデアが出てくるような組織体になると、ワコールは会社としてもっと成長すると思います。

諏訪:ダイバーシティ戦略が企業の成長戦略の一つとして組み込まれているということですね。本日はありがとうございました。

ワコールのダイバーシティ戦略のまとめ
  • 多様な働き方ができる環境を整備することで、チームのパフォーマンスを向上させた
  • 内発的な取り組みにより、誰もが働きやすい環境をつくる
  • リーダーシップを発揮して活躍できる社員を育成し、企業価値の向上を目指す
関連情報
話し手プロフィール

ms.kasai_wacoal.jpg葛西 順子 氏
株式会社ワコール

執行役員 人事総務本部 ダイバーシティ・キャリア支援室長

1976年、株式会社ワコールにクリエーターとして入社。パタンナー・デザイナー・プランナーなど企画部門を30年以上に亘り、幅広く経験しマネージャーに。その後、品質保証部お客様センター長、女性活躍推進プロジェクト委員長を経て、2014年から人事総務本部ダイバーシティ・キャリア支援室を立ち上げると同時に、ワコール初の女性執行役員に就任。

mr.fukazawa_wacoal.jpg深沢 信介 氏
株式会社ワコール

人事総務本部 人事部 人事企画課 課長

1996年 に入社し、大阪店 経理総務部 経理課に配属。1999年に人事部 採用・教育担当、給与・人事システム担当を経て、2005年 (株)ホンコンワコールに出向(管理部門担当)。
2008年 人事部 人事企画課に配属され、2012年には 同課 課長(現職)に就任。人事諸制度の企画・立案、労働組合との交渉、各種労務労政対応、退職年金を担当する課を統括している。

ms.egawa_wacoal.jpg頴川 明日香 氏
株式会社ワコール

人事総務本部 人事部 人事企画課

2000年に入社。人間科学研究所配属後、事業戦略室(現 総合企画室事業企画部事業企画課)を経て、現在の人事部人事企画課に配属。
現在、両立支援関連や生産性向上、働き方改革などの業務を担当。

聞き手プロフィール

suwa2.jpg諏訪 楓子
アミタホールディングス株式会社

経営戦略グループ 経営企画チーム

大阪府出身。持続可能な社会を実現したいという思いを持ってアミタに入社。現在は、経営者のサポートをしながら、経営戦略などについて考える経営企画チームに所属。

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