自治体のCSR認定制度の先駆者、横浜市の取組みとは | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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インタビュー

横浜市経済局 中小企業振興部 経営・創業支援課 担当課長 小林 様 / 担当係長 小野 様自治体のCSR認定制度の先駆者、横浜市の取組みとは


前回の「さいたま市CSRチャレンジ企業認証事業」のご紹介に続き今回は、自治体としては初の認定制度を平成19年度からスタートした「横浜市」にインタビューをしてきました。大企業に限らず、中小企業でもCSRの取り組みが本格化しているようです。

(左:小野氏、右:小林氏)


猪又: 自治体のCSR認定制度としては、横浜市が初めてですか?現在、実際に認定を取得している企業は何社ぐらいでしょうか?

小林氏: 横浜が全国で初の認定制度となります。平成19年に始まりましたが、平成24年度末の段階で214社が認定されており、その9割以上が中小企業です。認定制度が出来たころは企業の不祥事が相次ぎ、社会的にもCSRが重要視されるようになっていました。

そのときに、横浜市と横浜市立大学CSRセンター、市内の若手経営者で構成するNPO法人横浜スタンダード協議会との三者協働で制度設計し、認定制度を作りました。現在は、公益財団法人横浜企業経営支援財団が主体となって運営しています。地元横浜を意識し、地域貢献の視点を持って地道に経営に取り組んでいる中小企業を積極的に応援していきたいということも制度ができた理由の一つです。


猪又: どのような基準で認定されるのですか?

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小林氏: 評価基準は大きく分けて2つあります。1つは「システム評価」。PDCAに基づく経営の体制が整っているかどうかを重点的に確認します。もう一方の「地域性評価」は、地域貢献活動への取り組み状況を評価するものです。

システム評価は絶対クリアしていなければならず、その上で地域性評価において地域貢献活動への取り組み状況(10項目)をいくつクリアしているかによって評価が決まります。この10項目のうちクリアしている項目数によって、最上位、上位、標準の3段階で評価をしています。

小野 10項目のうち、3つをクリアすれば「標準」の評価を得ることができます。5つクリアすれば「上位」となります。「最上位」については、7項目のクリアといくつかの必須条件を満たす必要があります。現在、約8~9割の認定企業が「最上位」として認定されています。現在認定されている企業はかなり意欲が高いといえると思います。


猪又: 横浜市としてはこの制度を将来的に全ての中小企業に使ってもらいたいとお考えですか。また、ある程度の目標社数を決めているのでしょうか。現状の課題としてどのようなものが挙げられますか?

小林 横浜市の中期4か年計画では、年50社、4年で200社認定企業を増やしていく目標を掲げています。その計画期間が今年で終わることになっており、状況をふまえながら次の計画をどうしていくか決めることになっています。

そして、課題としては、できるだけ多くの企業に取得していただくことや、この認定制度を社会的に広く認知していただき、認定企業のブランド価値を高めていくことなどがあります。横浜市の制度が画期的なのは、自然と注目が集まる大手企業だけではなく、企業規模を問わず地域で頑張っている企業にスポットを当てていることです。


猪又: 認定されると使用可能なロゴマークはどのように活用されていますか。また、中小企業がCSRに取り組む場合にどうしたら上手くいくと思いますか?

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小野氏: ロゴマークを使用している企業はまだそれほど多くは無いですが、街中の工事現場で使用されたり、宣伝チラシに活用されたりしてきています。認定取得企業は、上手く企業のイメージUP につなげたりしていますね。

ある造園会社の社長さんは、『ついでに、無理なく、達成感』とをモットーにCSRに取り組んでいるそうです。大掛かりな取り組みではなく、木を切った枝などを日干しして、薪としてまとめて地域のために置いておくなど、小さな地域貢献で感謝されることが社員のモチベーションUPにもつながっているとのことです。


猪又: 最後に、この制度自体の今後の展開はいかがですか?

小林 基本的には認定制度は続けていきたいと考えています。この制度が出来て5年が過ぎましたが、今までCSRに取り組んできた企業がどうなったのかが分かってくるのではないかと思います。CSRは短期的なリターンが見込めるものではないので、しばらく取組を続ける中でしっかりとした経営基盤構築につなげていただきたいと思っています。

認定企業の中でうまくいった事例が出てくればそれによって制度自体のブランド価値も向上していきますし、既に企業と地域との共生という意識は高まってきているのではないかと思います。中小企業は、地元で顔の見える関係の中で何かが出来るということが大手企業と大きく違ったところです。地域との良い関係を築き、経営面にも効果がでてきている企業をどうPRしていくかといったことが今後の検討課題ですね。


猪又: 中小企業だからできることを上手くアピールして取り組んでいただきたいですね。横浜市の認定制度がお手本になって他の自治体に広まっていくことは良いですね。是非トップランナーとして今後もこのような取り組みを進めていただけたらと思います。

話し手

小林 悦夫 氏
横浜市経済局
中小企業振興部 経営・創業支援課 担当課長 


小野 史絵 氏
横浜市経済局
中小企業振興部 経営・創業支援課 担当係長 

聞き手
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猪又 陽一
アミタ株式会社
総合環境ソリューション営業グループ
ナレッジソリューションチーム チームリーダー

早稲田大学卒業。株式会社ベネッセコーポレーションにてダイレクトマーケティングを経験し、外資系ネット企業の日本法人の立ち上げや株式会社リクルートエージェントにて新規ビジネスを軌道にのせる。その後アミタに合流し、環境分野におけるマーケティングや仕事・雇用・教育をテーマに研究開発。「おしえて!アミタさん」「CSR JAPAN」をプロデュースし、サイト集客数を約300%アップさせる等、環境やCSR戦略・マーケティングに従事。グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク BOP/ソーシャルビジネス分科会幹事。環境省「活かそう資源プロジェクト」メンバー。現在、環境新聞にて「CSRの光と影」を連載中。

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