
これまでの連載にて、循環型ビジネスモデルの設計においては、サーキュラーエコノミーを実現することが大切となることをお伝えしました。
そこで今回は、既存事業を循環型ビジネスモデルへ移行する際のポイントをバタフライダイアグラムに照らし合わせて解説します。
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なぜ、サーキュラーエコノミーに取り組む必要があるのか?
- 気候変動や資源枯渇への対応
企業がサーキュラーエコノミーに取り組む理由として、気候変動や資源枯渇への対応やESGやトランジション(移行戦略)といった緊急かつ重要なテーマに対して、企業としての対応が求められてきている背景があります。これまでも廃棄物対策として、3R(リデュース・リユース・リサイクル)が進められてきましたが、今後は顕在化する温暖化問題、プラスチックの海洋汚染の問題など、人類の生存を脅かしかねない問題が出てきており「無意識・無自覚に製品を大量に生産し、廃棄することで利益を上げる」というこれまでの常識に対してあらゆるセクターからNoが突き付けられてきています。廃棄物が発生しない製品設計や長寿命化、あるいは修理を行い繰り返し使用することなど、最終的に廃棄される場合でも、プラスチック資源循環促進法の制定などに見られるよう、回収を行い、可能な限り再度原料として再使用されるような取り組みが求められています。 - 経済発展と社会的課題の解決を両立させるべし
毎年到来する大型台風など、気候変動の問題は日常生活への影響が大きくなってきており、消費者の意識の変化にも大きくかかわるようになりました。大量消費・大量生産のリニア経済から、環境負荷が低く、地球環境の再生能力に収まりながらエネルギーと資源を使って成長する新たな経済モデルへの変化が求められています。同時に日本では少子高齢化、労働力不足などの社会課題が顕在化しており、経済発展と社会課題解決の両立が必要です。そのような中、日本では未来社会のコンセプトとして、Society 5.0「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」が提唱されています。Society5.0では、最新のテクノロジーを活用して、SDGsが掲げている「誰一人取り残されない社会」の実現を目指しており、絶対的なデカップリングとしてサーキュラーエコノミーが新たな経済モデルとされています。
既存事業を循環型ビジネスモデルへ移行する際のポイント
前半は、環境負荷低減を図りながら経済発展を進めるための手段としてサーキュラーエコノミーが注目されていることを解説しました。では、自社の既存事業を循環型ビジネスモデルへ移行するには、どのように取り組めばよいのでしょうか。
循環型ビジネスモデルへの移行のポイントについての解説に入る前に、サーキュラーエコノミーの根幹の概念となる3原則と、バタフライダイアグラムについての理解を深めておきましょう。
エレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーの3原則として以下を挙げています。
- 廃棄物・汚染などを出さない設計
- 製品や資源を使い続ける
- 自然のシステムを再生する
また、この3原則に基づくサーキュラーエコノミーを図で示したものはバタフライダイアグラムと呼ばれています。特徴としては、1.自然界において生分解・再生することができる生物学的サイクル(下図左側)と、枯渇性資源で作られた使用される製品に関連する技術サイクル(下図右側)で構成されていること、2.いずれのサイクルにおいても、加工のエネルギーの負荷が小さい内側のループから優先されるという点が挙げられます。

既存事業を循環型ビジネスモデルへ移行するには、自社のビジネスモデルがバタフライダイアグラムにおいてどのような状態かを確認し、より内側のサイクルに転換することを検討することからはじめると良いでしょう。その際、使用する原料が技術サイクル側にある場合は、生物由来の再生可能な資源に変更できないか、併せて検討することを忘れないで下さい。
また、昨今では大手消費財メーカーらが使用済み製品の回収・リサイクルに取り組んでいますが、全国各地に広がった自社製品を全て回収することは容易ではありません。使用済み製品を一般消費者が返送しやすいよう、回収まで含めたビジネスモデルの検討が必要です。これは言い換えると、売り切り型のビジネスモデルから、製品の所有権はメーカー側においたままとするサービスとしての製品(PaaS)へのビジネスモデルの変更といえます。つまり、バタフライダイアグラムの内側のループへの変更を検討することは重要ではありますが、内側と外側は相互に連携していると捉え、複数の階層を織り交ぜて検討するとよいでしょう。
(ビジネスモデルの変革による新規事業の創出はこちらの記事を参照:コラム第二回『守りのESG戦略 既存のビジネスにESG価値を追加するには?』、コラム第三回『攻めのESG戦略 ビジネスモデルを変えるためには?』)
まとめ|既存事業の循環型ビジネスへのトランスフォームと、新規市場の開拓の両方の視点が必要
化石燃料・原料を使用して、使い捨て型な商品を大量に作り、捨て続けることは脱炭素(炭素循環)社会においては、もはやルール違反であり時代遅れとなりつつあります。2022年は、日本におけるカーボンプライシングの議論がスタートしたGXリーグ等も注目されています。
2022年3月にブルームバーグが発表した内容は衝撃的でした。「炭素を人工的に除去・回収する”カーボンリムーバル”からのクレジットのみが許可されるというシナリオでは、2029年までにカーボン価格が3000%に達し、価格高騰を引き起こす可能性がある」という内容で、今後カーボン価格が「1トン当たり224ドル」(140円計算で、31,360円t-Co2)に達するという見立ても出しています。言い換えると、カーボンニュートラルを目指す社会における各社の事業の実力値はCo2排出量に約30,000円/トンを差っ引いて財務評価することで「カーボンニュートラル社会における真の実力値」が明らかになるといえるでしょう。カーボンニュートラル時代に見合わない赤字事業が発覚する!という日がもうすぐそこまで来ています。
そのような、不都合な真実・将来のホラーストーリーにならないように、企業は早急に 1.既存事業のバタフライダイアグラムの内側への移行(特にバイオサイクルへの移行)、2.カーボンニュートラル型のビジネスへの移行が求められます。1.にしても2.にしても、サーキュラーエコノミーの考え方の原点ともいえる「Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごまで)」の考え方に基づいた、循環型の商品開発・販売・回収モデルの構築が必須であり、究極型としてはどんな製造業においても「サービサイジング(サービス化)」が求められるでしょう。
そのためにはコアコンピタンス型経営ではなく、ケイパビリティによる事業創出が必要であり、エコシステムの形成が必須になるといえます。何人の顧客に販売するかではなく、同じ顧客とつながり続け、何回利用してもらえるか、選ばれ続けるかが最重要事項となります。立てた戦略が絵に描いた餅に終わらないよう各社が責任を持って実装まで進めていきましょう。
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執筆者情報
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たべい しんいち
田部井 進一
アミタ株式会社 取締役
アミタグループ合流後、主に企業の環境・サステナビリティ部門に対し、環境ビジョンの策定や市場調査など数多くの支援を行う。
2020年からは、グループ事業の柱である「社会デザイン事業」の確立に向け、取締役として新規サービスの創出や市場開拓をリード。
2023年より現職を務め、顧客価値の最大化に取り組んでいる。 -
いそやま しげる
磯山 茂
アミタサーキュラー株式会社 循環資源研究所
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