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「CSR」×「投資」―研究者の視点 大阪国際大学教授 宮﨑哲也氏(2/3)リレーコラム

Some_rights_reserved_by_juhansonin.jpg今回の連載では、CSR、マーケティング、IR等の研究を行っておられる、大阪国際大学教授の宮﨑哲也氏に、研究者の視点から「CSR」と「投資」の関係についてお伺いいたしました。 前回の記事はこちら

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目標達成に向けた手段や成果、企業ビジョンの具体化・明確化、世界への取り組みがさらに求められる。
CSRレポートや環境報告書、あるいはIRガイドといったコミュニケーションツールの監修や制作に携わられる機会も多いと伺っています。現状のレポート類の構成について、どのような感想をお持ちですか? また、どのような改善の方向性があると思われますか?
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CSRという概念が日本に入ってきた当初は、「とにかくガイドラインに沿っていないといけない」などの考えから、比較的、同じような構成のレポートが多かったようにも思います。 しかし最近は、各社の企業文化や商品特性を生かした、独自性の高い報告書を見かけることが多くなりました。

先ほどのご質問の答えになるかもしれませんが、投資家からすれば、企業判断の際、その企業が他とどう違うかということが大きなポイントとなるわけですから、基本的には良い方向に向かっていると思っています。

現状、各社のレポートの水準はかなり上がっているように思います。 ただし日本のCSR レポートのなかには、全てのステークホルダーを取り上げてそれぞれ均等に書く、というケースがよくみられます。 いわゆる網羅的かつ総花的な報告書です。あらゆることをアピールしたいという企業側の心情はよく理解できるのですが、それではCSRレポートの効果は薄れてしまうと思います。

情報をマテリアリティ(自社における重点項目)に絞り込んで戦略とのリンケージを重視した報告書にすべきでしょう。 またCSRレポートは、関係者だけが読むという視点ではいけないと思います。やはり一般の人が見て、「こういうことやっている素晴らしい会社なんだ」と、企業を身近に感じられるような見せ方の工夫も必要でしょう。

そのためには、報告書にストーリー性やテーマ性があり、WEBの場合は動画なども駆使して、イラストや適度な空間が設けられているほうがよいでしょう。 これについては、マケイン・フーズ(McCain Foods:本拠地カナダ)という食品会社の面白い事例があります。

2009年の報告書では、Our journeyというテーマを決めて、人の足跡を表示したり、じゃがいもで地球をかたどった図を掲載するなどの工夫により、CSRに関して同社がどんな「旅」をしてきたかというのがわかるようになっています。こうした点が評価され、同社は2010年にPR Newsが実施したCSR AwardsのAnnual Report部門でナンバーワンを取りました。また同社のウェブサイトでは、日々の活動ぶりを楽しくわかりやすいアニメーションで伝えています。 さらに、具体的に読者に訴えかけるには、定性的表現よりも定量的表現、特にKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の使用も効果的でしょう。

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例えば、省エネの推進に取り組むなら、具体的にどれだけできたか、社員満足度の向上に取り組むなら、実際に意識調査を行って、その数値が何年前と比べて何パーセント上がったという評価をします。

あるいは会社に関しても、コンプライアンスの研修を実施するというのであれば、研修の履修率や具体的な数字で表してもよいでしょう。またダイバーシティ(多様性)の推進の場合は、女性の幹部登用の比率の変化などを取り上げる方法もあるでしょう。

いずれにしても、今後は、レポートの読者となるステークホルダーにわかりやすく、メリハリの利いたレポートが求められるようになるでしょう。 さらに、企業のビジョンが具体的でわかりやすく提示されているか、グローバルな視点が盛り込まれているかなども今後の改善のポイントとなると思います。

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執筆者プロフィール
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宮﨑 哲也 氏
大阪国際大学
国際コミュニケーション学部教授

福岡大学大学院商学研究科博士課程終了。CSR、マーケティング、IR等の研究を行う傍ら、経済、経営、自己啓発関係の執筆および講演活動を行っている。 『フィリップ・コトラーの「マーケティング論」がわかる本』(秀和システム)、『コトラーのマーケティング理論が面白いほどわかる本』(中経出版)、『図解でわかるM&A』(日本実業出版社)、『新しい大衆「ロウアーミドル」は、こうしてつかめ!』(PHP)など著書多数。

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