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コラム

調達の課題を解決する!MSC・ASC認証制度と日本の企業に求められることとは?WWFジャパンが語る!企業に求められる水産サステナビリティ

前回のコラムでは、世界的に高まる水産物需要を養殖業が支える中、天然漁業、養殖業ともに種々の環境問題の原因となっていること、そしてサステナブルな水産業の在り方が環境・社会面だけではなく、ビジネスの分野でも重大な関心事になりつつあることを紹介しました。今回はそのソリューションの一つとして水産物の認証制度について紹介します。

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年々市場が拡大中!海のエコラベルMSCとその養殖版ASC

MSC_ASC_salmon.jpg水産物に関する認証制度は地域限定のものから国際的なものまで様々なものがありますが、ここでは代表的な国際認証制度について紹介します。天然の水産物を扱うMSC(海洋管理協議会 以下 MSC)認証と養殖水産物を扱うASC(水産養殖管理協議会 以下 ASC)認証です。

制度の管理団体であるMSCは1997年にイギリスで設立、ASCは2010年にオランダで設立されました。それぞれが独立した団体であり、どちらも認証製品には魚をモチーフにしたエコラベルを表示することができます(写真上:MSC認証製品、写真下:ASC認証製品)。

世界における認証取得や取扱量は年々増加しており、2017年3月時点では以下となっています。

MSC認証 ASC認証
認証を取得した漁業(養殖業)と取扱い量 312漁業 950万トン 437か所 111万トン
認証製品の品目数 24,000品目以上 7,010品目
認証製品の取り扱い企業数 約3,700社 約1,150社

認証制度が世界的に拡大している背景には、過剰漁獲や環境汚染などにより水産業そのものの持続可能性が危ぶまれていること、そして消費する企業や個人からも環境に配慮した水産物への関心が高まっていることがあります。

MSC・ASC認証が広く受け入れられている理由

数ある認証制度の中でもMSCやASC認証が世界で広く受け入れられている理由は、国際的なガイドライン(※1・※2)に準拠した基準であることと、科学的な根拠に基づく客観性と独立した審査機関による透明性をもった審査プロセスを実施していることにあります。
具体的には認証を取得する際、漁業者は利用する資源が枯渇していないか、自然環境に悪影響を与えていないか、しっかりと対策できているかなどを証明する資料を提示しなければなりません。

審査はMSCやASCとは独立した民間の認証機関によって行われます。その上で、審査報告書は開示され、一般からの意見公募のプロセスを通過する必要があります。

これらの認証取得には多大な労力と時間、そして費用がかかりますが、その分世界的にも広く認知され信頼を得ています。またこうした厳格な審査を通過した認証製品に正しくエコラベルを表示させるために、販売と中間流通にかかわる企業もCoCと呼ばれる認証を取得する必要があります。トレーサビリティを担保することで非認証製品との混入リスクを抑えることができ、取り扱う水産物の信頼性向上にもつながります。

サステナビリティの重視はオリンピック大会でも!

また、これらの持続可能な水産業を担保する認証製品は、世界最大のスポーツの祭典、オリンピック・パラリンピック大会でも導入されています。

オリンピック憲章では「環境」を「スポーツ」「文化」とならぶ三本柱としており、環境問題に対し責任を持つことと、有益なレガシーは引き継ぐことが謳われています(オリンピック憲章 第1章 第2節 13項・14項)。

2012年のロンドン大会は、新たに策定されたISO20121(持続可能なイベント運営のためのマネジメントシステム規格)に基づき、史上最も環境に優しい大会として高い評価を得ました。大会で供給される水産物はFAO(国際連合食糧農業機関 以下 FAO)の責任ある漁業のための行動規範に適合したものとし、MSC認証が採用されました。大会終了後、この方針は多くの学校や病院などの公共施設をはじめ、企業や団体で採用され、持続可能な水産物市場は急速な拡大を見せています 。

また昨年のリオデジャネイロ大会は2013年にMSC、ASCと協定を結び、大会で供給する水産物はMSCとASC認証を取得したものに限定するとしました。結果として、大会期間中70トン、35万食分の認証製品が提供されました 。来る東京大会ではさらなる発展が期待されています。

2020年東京オリンピックはどうなる?問われる日本の水産ビジネス

残念なことに日本の現状は世界の潮流とは大きな隔たりがあります。国内で国際認証を取得した漁業はMSCで3件、ASCで1件とわずかです。これは海外と持続可能性に対する考え方や漁業管理のしくみに違いがあり、認証基準を満たすことが容易ではないこと、また水産物エコラベルに対しての消費需要がまだ低く、結果として認証にかかるコストを生産・流通過程で吸収できないことなどが要因として考えられます。

しかし、その一方で、緩やかながら需要拡大の動きもあります。一つが2020年のオリンピック・パラリンピック大会です。東京で開催される国際大会で、国際的水準で持続可能性を担保した水産物をどのくらい提供できるのか、世界の注目が集まっています。

現在、水産企業・団体だけではなく、水産物を取り扱う小売企業やホテルなどでも認証の取得や認証製品の取り扱い拡大に向けて動き始めています。また成長する海外の水産物需要をターゲットに、国産水産物の市場開拓も図られています。今後は製品の鮮度や品質に加え、持続可能性の担保がますます求められることでしょう。

次回は、日本ともかかわりの深いチリのサーモン養殖にかかわる話題をご紹介します。

参考

(※1)MSC:FAO責任ある漁業のための行動規範、FAO水産物エコラベルのガイドライン、ISEAL社会環境基準設定のための適正実施規範
(※2)ASC:FAO養殖認証に関する技術的ガイドライン、ISEAL社会環境基準設定のための適正実施規範

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執筆者プロフィール

profile_mr.maekawa.jpg前川 聡(まえかわ さとし)氏
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
自然保護室海洋水産グループ

北海道大学大学院後期課程修了後、2001年にWWFジャパンに入局。沿岸環境の保全を中心として、渡り鳥、サンゴ礁、海洋保護区などの調査や保全活動に従事。2011年より水産分野、特に国内における養殖業改善プロジェクトとASC認証の普及に携わる。

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