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コラム

バイオエネルギー村|地域エネルギーの地産地消を目指すドイツでの事例サステイナブル コミュニティ デザイン ~2030年に向けた行政・企業・住民の連携~

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人類は気候変動・資源枯渇・人口増加という未体験の環境下に向かっています。また、日本は、少子高齢化・労働人口減少・税収減少などで、今のしくみでは社会インフラの提供が難しい状況を迎えつつあります。そのような中で、持続可能な社会・コミュニティ デザインを行政・企業・住民の連携でどのように作っていくのかは、非常に重要なテーマです。 そこで本コラムでは、NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)理事長の泊みゆき氏に、サステイナブル コミュニティ デザインについて、参考事例などを交えて連載していただきます。
第二回は、ドイツのバイオエネルギー村についてです。

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バイオエネルギー村のバイオガスプラント
写真提供:竹林征雄氏

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ドイツのバイオエネルギー村|再生可能エネルギーで地域エネルギーの地産地消を目指す

ドイツの里山も、少子高齢化・過疎化、小規模林業、林業の衰退、高いエネルギーコスト、社会福祉サービスが必要ですが資金と人手が不足、使える資源は多いが活用できていない、といった日本と同様の課題を抱えています。

そうしたなか、2000年に、地域レベルの具体的な温暖化防止対策として、ドイツのゲッティンゲン大学とカッセル大学が「バイオエネルギー村構想」を提案し、ユーンデ村が初代バイオエネルギー村に選ばれました。バイオエネルギー村の定義は、地域で必要な電気と熱を、再生可能なバイオマスエネルギーなどで全て供給することを目指すプロジェクトを実施している村です。

具体的な目標としては、地域において①低炭素社会形成 ②国土保全及び水質保全 ③生物多様性の保全 ④地域経済の向上(農業・工芸品、軽工業をともに行う魅力的な場所になる、少なくとも地域エネルギー発電所の5割が村の住民と農林業者の所有物であること)、⑤住民参加による地域の活性化、⑥エネルギー供給の地域分散化(エネルギー自給・自立、村の少なくとも消費される熱と電気の5割が地場産であること)、⑦生き甲斐・やり甲斐による地域への愛着増加(生活文化の確立、人々のアイデンティティ)とされています。

2014年時点で公表されているバイオエネルギー村は、140カ所以上になります。これらの事業形態は、①自治体主導、②協同組合、②市民ファンド、③株式会社型などがあり、出資金も上限額を設定したり、出資も村民しかできなかったりするものもあります。バイオエネルギー村以外で、エネルギーに特化し、組合員の平均数が150人前後のエネルギー協同組合方式もあり、800以上となっています。

その一つ、アシャ村では、1995年、村(10%)と7軒の農家(40%)の出資で、「アシャ地域熱供給有限会社」を設立、チップボイラー2機を導入しました。2011年に新設し、チップボイラーと木質ペレットガス化熱電併給機器を導入し、発電と地域熱供給を行っています。総事業費4.2億円のうち補助は1%のみで、償却は7年となっています。燃料となるチップは村内私有林から調達し、熱は4kmの配管で100世帯と学校、役場、工場、病院などに送っています。

biomas.pngアシャ村の木質バイオマス熱電併給施設(写真提供:竹林征雄氏)

このようにバイオエネルギー村では、村の中で話し合いを持ち、太陽光・風力発電、木材・畜糞利用の小規模自立分散型コジェネレーション設備が多く設置され、公共施設、住宅へエネルギーを供給しています。

日本のバイオマスタウンとの違い|ビジネスとしての継続性

日本でも2002年12月にバイオマス・日本総合戦略を閣議決定して以降、バイオマス・タウン構想が打ち上げられ、100カ所以上の市町村が名乗り出ました。しかし、残念ながらほとんどの事例で、ドイツのバイオエネルギー村とは、似て非なるものとなったことは否めません。

最大の違いは、ドイツのバイオエネルギー村は、農林業従事者や地域の企業家(ガソリンスタンド経営者や自動車修理会社経営者)が主体となって進めたことでしょう。彼らは、自分たちのビジネスとして取り組み、制度を活用しながら事業を形成していきました。制度も、地元の資源が循環できる規模で地域に適度な競争を促すプロジェクト設計がなされています。補助金は事業の起爆剤となりましたが、補助金ありきの取り組みではありませんでした。

しかしながら、日本でも北海道下川町、岡山県真庭市、山形県最上町などバイオマス活用によるまちづくりに一定の成果を上げる自治体も出現し始めています。また、市民出資による再生可能エネルギー会社も増え、ドイツの自然エネルギー電力事業等を行う公社であるシュタットベルケの日本版の取り組みも始まっています。今後のさらなる進展を期待したいところです。

参考・引用資料
執筆者プロフィール(執筆時点)

tomari-sama.jpg泊 みゆき(とまり みゆき)氏
NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)理事長

京都府京丹後市出身。大手シンクタンクで10年以上、環境問題、社会問題についてのリサーチに携わる。2001年退職。1999年、BINを設立、共同代表に就任。2004年、NPO法人取得にともない、理事長に就任。

NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク:http://www.npobin.net/ 

■主な著書・共著
アマゾンの畑で採れるメルセデス・ベンツ [環境ビジネス+社会開発]最前線』(築地書館)
バイオマス産業社会 「生物資源(バイオマス)」利用の基礎知識』(築地書館)
バイオマス本当の話 持続可能な社会に向けて』(築地書館)
『地域の力で自然エネルギー!』(岩波ブックレット、共著)
『草と木のバイオマス』(朝日新聞社、共著)

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