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コラム

ズーコンポストの課題と将来ズ―コンポスト!人口100億人時代に向けた食料供給の鍵

ZC_feed_01.jpg今、世界的に昆虫への注目が集まっています。今後の人口増加や食生活の向上により、動物性たんぱく質が足りなくなるので、昆虫を代替たんぱく質として食料や飼料に活用しようというものです。
昆虫は、身近にいるものの、なかなか仲良くなれない存在でもあります。循環型の社会の中での、昆虫の利用方法、昆虫の食への転換などについて6回に渡って連載します。今回は、ズーコンポストの課題と将来について述べます。(写真:ズーコンポストの飼料を食べる雛)

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ズ―コンポストによる畜糞の飼料・肥料化

養豚業は周辺環境へ影響が大きく、立地が制限され、周辺とのトラブルも多い事業です。BBBジャパンがズーコンポストを実施した養豚場では、小型のシャベルローダーで豚糞をピットに集め、スクリューコンベアを使ってトレーに流し込んでいきます。そして、そのトレーを、フォークリフトに載せてコンテナ内に移動します。ズーコンポストは閉鎖型の施設なので今までの堆肥処理場に比べて臭いやガスの拡散は少ないのですが、4K(きつい、汚い、危険、臭い)といわれる労働環境のため、大事な仕事であるにもかかわらず畜糞処理を志願する人が少ないのが現状です。

ZC_auto_1.jpgそこで、将来的には図にあるように、ズーコンポストを自動化することを考えています。実現すれば、次のような利点があります。(図:ズーコンポストの自動化のイメージ)

  • 【効率化】一度トレーに畜糞をセットすれば、虫が24時間休みなく活動して畜糞を処理し、自らの成長を促進します。また、温度や湿度などを適切に制御して、効率よく処理できるようになります。
  • 【労働環境の改善】完全自動化、IoT化により、オペレータが室内でモニタを監視し、トラブル時だけ現場対応すればすむようになります。これにより、労働環境の改善、また周囲に対する臭気トラブルの課題が改善されます。
  • 【展開可能性拡大】自動化により飼料・肥料のコストを削減できる可能性があり、実現すれば飼料の利用範囲が広がります。また、このシステムをパッケージ化すれば、全国各地、世界中の養豚場、養鶏場などに簡単に導入できるようになります。

ズーコンポストシステムは、アップサイクルで極めて合理性があるので、世界的な普及が見込めます。

※アップサイクル...廃物をそのまま再利用するのではなく、商品としての価値を高めるような加工を行うこと。出典:デジタル大辞泉(小学館)

市場の課題|価格・栄養価・持続可能性そしてイメージの問題

世界的な人口増加により、人類が消費する食料も増えていきます。一方、食料を増産するには、多くの土地、水や飼料が必要になります。特に畜産や養殖に関して言うと、コストに占める飼料代の割合が大きいため、飼料をいかに安く安定的に確保するかが重要になります。

ズーコンポストの飼料は、成分やアミノ酸含有の面で評価は高かったので、養殖業や養鶏業において飼料として採用してもらえるよう働きかけましたが、当時は価格面で叶いませんでした。さらに問題だったのは「ハエ」というイメージのため、消費者の抵抗感を懸念して、この飼料を使うことを出荷先の流通業者や小売業者が難色を示したのです。そのため、ズーコンポストの飼料は、食用の魚ではなく、錦鯉など高級観賞魚用に販売してきました。

現在、養殖魚の飼料の主な原料である魚粉の供給が世界的にひっ迫していて、価格も徐々に上がってきています。連載第1回にも掲載しましたが、2013年のFAOの昆虫食に関する報告書をきっかけに、昆虫の飼料への活用が注目されつつあり、世界各地で昆虫飼料が生産され始めています。ハエからできた飼料、畜糞からできた飼料という悪いイメージも、だんだん薄れていくことでしょう。さらに、自動化や大規模化によりコストは下げられるので、今後、ズーコンポストはその合理性が再評価されていくのではないかと考えています。

ズーコンポストの普及

平成11年に制定・施行された「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」を契機に、全国各地に堆肥センターという施設が設置されました。畜産農家で処理しきれない畜糞を地域で集め、そこで一括して処理するものです。集めた畜糞の多くは、時間をかけて発酵させ堆肥にしています。しかし、残念ながら、多額の費用をかけたこれらの施設の運営は苦しいと聞いています。このような施設に自動化されたズーコンポストを導入すれば、飼料も肥料も生産・販売でき、財政的にも立て直すことができる可能性があります。

次回は、ズーコンポストから少し離れて、人が昆虫を食べる「昆虫食」について説明します。

参考情報

株式会社BBBジャパンWebサイト

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tss.pngアミタグループは、地域の持続性を高める統合支援サービス「BIOシステム」を提供しています。地域の未利用資源を活用したコンパクトな自立型の地域づくりを、ビジョン策定からインフラの設計・運営、産業・雇用創出支援まで、トータルで支援します。

執筆者プロフィール

180314_profile.jpg山口 弘一氏 
株式会社BBBジャパン 代表取締役
農業ストラテジスト

1938年東京生まれ。沖縄海洋博覧会やつくば科学万博などの大型博覧会をプロデュース。2004年NPOローハスクラブ設立、代表理事。2008年から株式会社BBBに参画。ハエ事業である「ズーコンポスト」の開発に関わり、農水省の農商工等連携事業の認定を受けて3年間事業を推進。2009年に株式会社BBBジャパンとしてズーコンポストを本格的に事業化。専門は農業全般や環境技術、バイオマス。

木下 敬介氏
株式会社フライハイ 代表取締役

東京大学工学系研究科博士課程修了。画像認識の研究、金融系のシステム開発に従事。2011年から東南アジアでの林業や農業のビジネスに従事。2014年からズーコンポストシステムに関わる。2018年株式会社フライハイ設立。

株式会社フライハイ:https://flyhigh64.tech

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