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コラム

伊那市発「薪の宅配ビジネス」快進撃中|(株)ディーエルディーサステイナブル コミュニティ デザイン ~2030年に向けた行政・企業・住民の連携~

dld.png人類は気候変動・資源枯渇・人口増加という未体験の環境下に向かっています。また、日本は、少子高齢化・労働人口減少・税収減少などで、今のしくみでは社会インフラの提供が難しい状況を迎えつつあります。そのような中で、持続可能な社会・コミュニティ デザインを行政・企業・住民の連携でどのように作っていくのかは、非常に重要なテーマです。
そこで本コラムでは、NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)理事長の泊みゆき氏に、サステイナブル コミュニティ デザインについて、参考事例などを交えて連載していただきます。第五回は、企業・住民連携の事例として長野県の伊那市の株式会社ディーエルディー(以下dld社)の取り組みをご紹介します。
(写真:「dld社 薪の宅配サービス概要図」)

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適性価格で薪を宅配、薪ストーブの普及に大きく貢献

バイオマスの最も素朴な利用方法のひとつは、薪です。わが家でも薪ストーブを導入していますが、寒くなってくると火を入れます。ぱちぱちと木がはぜる音、木の香り、ゆらめく炎を見ていると飽きません。近代的な薪ストーブはエネルギー利用効率が高く、室内空気も汚染せず、乾いた薪を使えば完全燃焼して、煙もほとんど出ないすぐれものです。こうした薪ストーブには一定の愛好者がいます。しかし、薪ストーブユーザーの大きな悩みは、薪の調達なのです。

薪は、残材や端材などをもらってきて自分で薪割りをすれば、ほぼ無料で手に入ります。(ちなみにわが家では、ご近所の造園屋さんから剪定枝を無料でいただいています。わが家が引き取らなければ、処理料をはらって廃棄物処理業者に処分してもらうので、win-winの関係なのです。)ただ、ひと冬で1~数トンを消費する薪を、薪割り機でなく斧でつくるのは、結構、大変です。また、乾燥させるスペースを確保する必要があります。仕事や子育てをしている世代には、やや負担が重いのです。しかしながら、ホームセンターなどで薪を買うと、灯油の何倍もの値段になってしまいます。

薪ストーブを入れたいが、薪の調達が悩みだ、という顧客の要望に応えて、リーズナブルな価格で薪の宅配ビジネスを始めたのが、長野県伊那市に本社を置く、dld社です。dld社は、もともと薪ストーブの施工会社でした。長野県全域での薪ストーブ普及率は約5%と高く、中でも伊那市は薪ストーブの普及が全国トップクラスで進んでいる自治体で、新築住宅の20%に薪ストーブが設置されています。これだけ普及していると、伊那市の人は身内や知り合いの家で薪ストーブに触れて、自分が家を建てるときは薪ストーブを入れようという層が一定数生まれます。しかし、忙しくて自分たちで薪をつくれないという顧客へのサービスとして、dld社は宅配ビジネスを行っています。

地域の人々に新たなちょっと仕事を創出

薪の原料となる原木は、間伐材などを森林組合、NPO、自伐林家などから1m3あたり約6,000円で購入します。それを割り、乾燥させ、巡回・配達します。配達者は軽トラなどに薪を積み、一週間間隔で、空き時間に顧客の家を回ります。価格は、熱量換算で灯油より安くなっています。顧客の庭先に薪ラックが置かれており、減っている分の薪を足し、その量を記した伝票を郵便受けに入れます。代金の請求は、ひと月に配達した薪の合計を請求書で知らせ、金融機関の口座から引き落とされます。薪のコストアップ要因のひとつが、薪を束にする手間です。dld社ではそれを省き、薪使用量を薪ラックの目盛りで計量しています。

顧客は会員が中心で、安定した販売量が見込むことができ、生産に関わる投資も行なうことができます。薪の配達は、退職者・主婦等がアルバイトで行いますが、配達者は一週間内に担当地域を巡回すればよいので、自分の空き時間に行える柔軟さがあります。

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(写真:DLD社 薪の宅配サービス概要図のフロー図 クリックすると拡大します)

この薪の宅配は、バイオマス普及の障壁となりがちな、薪の調達問題を解消するビジネスです。利用者にリーズナブルな価格での燃料を供給するシステムを確立し、地域の間伐材の利用促進、雇用創出に貢献したことで、2012年に長野県知事賞、2014年グリーン購入大賞(農林水産大臣賞)を受賞しています。今では、長野・山梨地域のほか、仙台エリア、愛知・岐阜エリアにも拡大し、現在では薪の供給量2,000トン、雇用数50人(アルバイト、パートタイムを含む)に達しています。

こうしたビジネスを成立させることで、地域資源のバイオマス利用を広げることは、まさに持続可能な地域資源の活用例と言えるでしょう。

参考・引用資料

引用資料:バイオマス産業社会ネットワーク第142回研究会資料
 「地域活性化成功事例としての大木町のバイオガス利用」

株式会社ディーエルディー https://www.dld.co.jp/

執筆者プロフィール(執筆時点)

tomari-sama.jpg泊 みゆき(とまり みゆき)氏
NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)理事長

京都府京丹後市出身。大手シンクタンクで10年以上、環境問題、社会問題についてのリサーチに携わる。2001年退職。1999年、BINを設立、共同代表に就任。2004年、NPO法人取得にともない、理事長に就任。

NPO法人 バイオマス産業社会ネットワーク:http://www.npobin.net/ 

■主な著書・共著
アマゾンの畑で採れるメルセデス・ベンツ [環境ビジネス+社会開発]最前線』(築地書館)
バイオマス産業社会 「生物資源(バイオマス)」利用の基礎知識』(築地書館)
バイオマス本当の話 持続可能な社会に向けて』(築地書館)
『地域の力で自然エネルギー!』(岩波ブックレット、共著)
『草と木のバイオマス』(朝日新聞社、共著)

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