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昆虫食の可能性|増える人口、不足する動物性たんぱく質ズ―コンポスト!人口100億人時代に向けた食料供給の鍵

beeplate.JPG今、世界的に昆虫への注目が集まっています。今後の人口増加や食生活の向上により、動物性たんぱく質が足りなくなるので、昆虫を代替たんぱく質として食料や飼料に活用しようというものです。
昆虫は、身近にいるものの、なかなか仲良くなれない存在でもあります。循環型の社会の中での、昆虫の利用方法、昆虫の食への転換などについて6回に渡って連載します。今回は、昆虫食と昨今の潮流について紹介します。
(写真:茹で蜂の子と揚げ蜂の子(ラオスの山の中で))

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古くて新しい昆虫食|栄養価値の一方で、根強い食への抵抗

みなさんは昆虫を食べたことはありますか? 大昔、人間にとって昆虫は、手軽に収集、摂取できる貴重なたんぱく源でした。しかし、狩猟や農耕、家畜という術を手に入れた後は、昆虫を積極的には食べなくなったと推察されます。

昆虫を食べる、食べないというのは、永遠のテーマなようで、1885年に出版されたVincent M. Holtの"Why Not Eat Insects?" には、「植物を食べた昆虫はきれいなもので、偏見を排除したら昆虫を食べない理由はない」ということが記されています。この頃も、昆虫を食べる事に関心が集まっていた一方、やはり世間では昆虫食には抵抗が大きかったことがわかります。

plate.JPG一方、世界には昆虫を食べる文化を持つ国や地方がたくさんあり、現在も継承されています。例えば、長野地方では蜂の子やイナゴが食用されているのはご存知の通りです。また、東南アジアのラオスでは、日常的ではないにせよ、昆虫料理を出すレストランがたくさんあります。写真は、筆者がラオスの山の中で食べたタケムシです。タケムシは竹の中で育ち、養殖もされている安くない食材です。油で揚げると見た目も味も食感もフライドポテトです。ただ、茶色い顔がついていることを除いては。他にも、揚げたコウロギはカリカリと香ばしく、ビールのつまみに最適です。現地の人は、木の上にできたアリの巣をとり、アリの卵をスープに入れて食べます。これは、米粒のようで、アリの卵だと言われない限り気がつきません。ズーコンポストの施設で働いていたモンゴル人夫婦は、毎日イエバエの幼虫を家に持ち帰り、炒めて食べていました。栄養満点でおいしく、ご飯に合うのだそうです。(写真:揚げたタケムシ)

このように、すべての昆虫ではありませんが、好んで食べられている昆虫はたくさんあります。

動物性たんぱく質の不足|人口100億人時代に向けた食料供給の鍵

昆虫を食べることは、ゲテモノ趣味と思われることも多いです。汚い、気持ち悪いなど、ひどい扱いを受けることがあります。たしかに昆虫は、足が無かったり、足がたくさんあったり、羽が生えていたり、殻があったり、たくさん群れていたり、普段の食物と異なる外見であることは確かです。しかし、そうも言っていられない状況になりつつあります。

2050年には世界の人口は100億人にも達すると言われています。そして、いま現在も人口の11%、8億人以上が飢餓に瀕しています。今後増えていく人口を賄うには農業生産を現在よりも70%増やさなければならないと言われています。

食料のなかでも、動物性たんぱく質を確保するのは簡単ではありません。家畜(牛、豚や鶏など)の肉を生産するには、広大な土地、水、そして家畜のための飼料が必要です。家畜の飼料は穀物が主ですが、それをもっと生産するには森林を切り開いて農地を増やさないといけません。また、大量の水も必要です。こう考えると、家畜を飼育には、環境に大きな負荷をかけてしまうという側面があります。

家畜の飼育には、どのくらい飼料が必要なのでしょうか。1kgの可食部の動物性たんぱく質を生成するのに、牛は25kg、豚は9kg、鶏は4.5kgの飼料が必要と言われています。一方、昆虫(コオロギ)は2.1kgでまかなえるという報告があります。文献により数値は異なりますが、昆虫は圧倒的に生産効率が良いことが示されています。昆虫は広い土地や大量の水も必要ありません。糞は肥料になります。動物性たんぱく質を生成するにはとても合理的な方法なのです。

食料・飼料・環境の問題などを考慮すると、今後家畜を量産することは難しくなってきます。また、鶏舎のように、動物を密集させて飼育することは、アニマルウェルフェア(※)の観点からも、避けていかねばなりません。このように考えていくと、昆虫による動物性タンパク質を活用するというのは合理的で有力な解であると思われます。

食料は人間が生産するものであり、その生産量には限界があります。そのうち食料が湧いて出てくるだろうという楽観的な予測は間違っています。早く対策を立てないと、食料の値段が高騰し、低所得者は飢餓のループから抜け出せないままになります。

※アニマルウェルフェア...世界の動物衛生の向上を目的とする政府間機関である国際獣疫事務局(OIE)の勧告において、「動物がその生活している環境にうまく対応している態様をいう。」と定義されています。(農林水産省Webサイトより)より一般的には、感受性を持つ生き物としての家畜に心を寄り添わせ、誕生から死を迎えるまでの間、ストレスをできる限り少なく、行動要求が満たされた、健康的な生活ができる飼育方法をめざす畜産のあり方のことを指します。

昆虫食に関わる世界の潮流

将来の食料事情を憂慮した報告は多数あります。なかでも第一回の連載で紹介した2013年のFAOの昆虫食のレポートは有名です。将来の食料不足を解決するためには、昆虫食を受け入れるべきだと述べています。

海外では、昆虫を扱うスタートアップ企業が数多く出てきています。オーストリアのLIVIN Studio社は、ハエの幼虫の培養器を作って、自らハエを培養して食料にするキットを販売しています。フィンランドではコオロギ入りのパンが販売されています。ヨーロッパでは一部で昆虫食が取り入れられているようです。

2016年10月には農林水産省と農研機構が主催で「昆虫の新たな用途展開の可能性を探る」という国際シンポジウムが開催され、昆虫食についての話題も活発に議論されました。

昆虫以外の選択も考えられています。日本の農林水産省では、優秀な若手が集まって「食の未来」についての検討が行われました。その中で、家畜を殺すことなく動物性たんぱく質を生成する「培養たんぱく質」や「培養食料」の可能性が指摘されています。米国ではImpossible Foods 社のImpossible Meatのように、植物性由来のたんぱく質(代用肉)が広まりつつあります。動物性タンパク質が高価になることを見越し、今のうちに代替できるものを開発しておこうという慧眼です。

何十年も前から、昆虫食の活用の提案が繰り返しなされてきましたが、食料・環境の問題が喫緊の課題でなかったことや、昆虫食に対する根深い偏見などから、いずれも立ち消えになってきました。しかし、今や食料問題は待ったなしの状況になりつつあります。世界的に気運が高まり、また、昆虫に対する意識やイメージが改善し、人々が合理的な判断ができつつある今こそ、昆虫の食への適用を推し進めるタイミングにきているのではないでしょうか。

参考情報
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執筆者プロフィール

180314_profile.jpg山口 弘一氏 
株式会社BBBジャパン 代表取締役
農業ストラテジスト

1938年東京生まれ。沖縄海洋博覧会やつくば科学万博などの大型博覧会をプロデュース。2004年NPOローハスクラブ設立、代表理事。2008年から株式会社BBBに参画。ハエ事業である「ズーコンポスト」の開発に関わり、農水省の農商工等連携事業の認定を受けて3年間事業を推進。2009年に株式会社BBBジャパンとしてズーコンポストを本格的に事業化。専門は農業全般や環境技術、バイオマス。

木下 敬介氏
株式会社フライハイ 代表取締役

東京大学工学系研究科博士課程修了。画像認識の研究、金融系のシステム開発に従事。2011年から東南アジアでの林業や農業のビジネスに従事。2014年からズーコンポストシステムに関わる。2018年株式会社フライハイ設立。

株式会社フライハイ:https://flyhigh64.tech

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