コラム
インドネシアの脱炭素とサーキュラーエコノミーに関する方針とは?循環への航海 ~インドネシア廃棄物管理の現状と未来~
本コラムでは、インドネシアの廃棄物管理現状、規制強化、気候対策、課題、そして日本の支援可能性を5回にわたり多角的に解説しています。本記事ではインドネシア政府の廃棄物管理規制の取り組みと、規則の重要性にいて解説します。
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インドネシアの脱炭素・廃棄物削減に関する目標
インドネシアは気候変動対策を強化しており、最近温室効果ガス排出削減目標(第二次国別貢献目標)の更新を発表しました。これには、2030年の気候目標の見直しと、2035年の新たな目標が含まれており、 この目標に基づいて、廃棄物についても長期目標やロードマップが策定され、政策が紐づく形となっています【1】。
本記事を通じて、インドネシアの脱炭素と廃棄物に関する目標と今後の方針について、詳しく見ていきましょう。
- 脱炭素に関する目標:2060年までにネットゼロ
インドネシアは、2060年までに温室効果ガスの排出量と、大気中から除去する量を差し引いてゼロにすることを目指しています。 - 廃棄物削減に関する目標
ネットゼロ目標を達成するために、第二次国別貢献目標の一環として、インドネシアは以下の目標を設定しています:
1. 2040年までにゼロウェイストにする
2. 2050年までに 廃棄物を処理する際に出る温室効果ガスをほぼゼロにする
3. 2030年以降、新しい埋立地の建設を禁止する - 2040年目標と2050年目標について
2040年までにゼロウェイスト を達成するためには、廃棄物をそもそも減らすことや廃棄物が自然環境に投棄されることを防ぐことが必要です。 しかし、すでに埋立地や焼却施設にある廃棄物も排出に影響を与え続けています。例えば、埋立地は新たな廃棄物の受け入れを停止しても、40年以上メタンガスを発生し続けることもあります【4】。 そこで、2050年の目標は、こうした既存の廃棄物からの排出を抑えるための対策を講じるために必要な時間を確保することになります。
サーキュラーエコノミーの導入
インドネシアは2020年にリニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへの移行に向けた取り組みを始め、国内でのサーキュラーエコノミーの実施可能性を評価しました。今日では、政府はこれらの実践を国家開発計画に積極的に組み込んでいます。サーキュラーエコノミーの目標は、インドネシアの中期(RPJMN 2025-2029)および長期(RPJPN 2025-2045)開発計画の一部となる予定です【2】。
▼ リニアエコノミー
出典:国連開発計画
▼サーキュラーエコノミー
出典:国連開発計画
脱炭素目標を達成するためのサーキュラーエコノミーに関する政策
インドネシアでは、ネットゼロ達成手段の一つとして、サーキュラーエコノミーへの取り組みを位置づけ、サーキュラーエコノミーに関する政策を導入しました【3】。
- 生産者による廃棄物削減ロードマップ
生産者別EPR廃棄物削減ロードマップ(2020-2029)では、2029年までに発生源での廃棄物を30%削減し、廃棄物処理を70%削減するという目標が設定されました。一度市場に出回った使用済みパッケージの改修やPCR材で作られたパッケージを導入するといった方法で達成を目指しています。現状は義務化まで至らず、企業の自主的な取り組みに留まっています。
▼ 製造業者による廃棄物削減の一般的な枠組み
出典:WWF
- グリーン産業基準(GIS: Green Industry Standard)
GISは、企業のより持続可能な取り組みを促進するために導入されました。GISの基準には、技術的側面と、マネジメントの側面の2種類があります。 技術的側面では、原材料調達から廃棄物管理まで、生産プロセス全体において原材料や水・エネルギーなどの効率的な資源利用や温室効果ガス排出量の削減が挙げられます。マネジメントの側面としては、経済活動と環境の持続可能性の両立の実現にむけた方針づくりや戦略的計画、その実施と監視、マネジメント・レビューなどが含まれます。 - グリーンビルディング政策
建設業界から発生する温室効果ガスを最小限にするため、公共事業・住宅省の規定No.21/2021によりグリーンビルディングの開発に関する規制が掲げられています。この規制では、グリーンビルディングとはエネルギー、水、その他の資源を節約することが測定可能であり、本規則の原則に適用している建築物と定義されています。
重要な取り組みを行った企業は、非営利団体であるグリーンビルディング協議会インドネシアから認証を受け、その業績が評価されます [3]。
まとめ
本記事では、インドネシア政府の脱炭素目標とその達成手段としてのサーキュラーエコノミーの施策について取り上げました。国家戦略である廃棄物削減ロードマップでは、企業の廃棄物削減や再利用・リサイクルの責任について明確に言及しており、拡大生産者責任(EPR)の導入が進みつつあることから、製品の回収・再利用がメーカーに求められる流れがあります。このような施策が進む一方で、業界の状況に応じた基準や強制力がないことから、施策が不十分であるという声や、企業が実際に脱炭素やサーキュラーエコノミーに取り組む際にインフラやリテラシー不足等の障壁が生じています。次回では、企業がこれらに取り組む際の課題とその影響を解説します。
参考資料
[1] Climate Action Tracker (2024).
[2] United Nations Development Programme. Circular Economy Strategy: A Road to a National Action Plan.
[3] Ministry of National Development Planning Agency (2022). The Future is Circular - Uncovering Circular Economy Initiatives in Indonesia.
[4] Ministry of Environment and Forestry Regulation No. P.75 Year 2019. Frequently Asked Questions and Guidelines on the Waste Reduction Roadmap by Producers.
[5] Terrapass (2013). Zero Waste is Not Zero Waste Emissions.
[6] The Straits Times (2024). Indonesian government to phase out single-use plastics by end of 2029.
[7] WWF (2022). Extended Producer Responsibility Guideline on Plastic Products and Packaging for Industries in Indonesia.
執筆、編集
アミタホールディングス株式会社
海外事業統括グループ
城地 咲知
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