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廃棄物情報の提供の重要性が表面化した、ホルムアルデヒド騒動を教えてください

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群馬県、埼玉県、千葉県の浄水場で、基準値を超えるホルムアルデヒドが検出された事件、現時点では処理会社の高崎金属工業も、排出事業者であるDOWAハイテック(以下、DOWA)も廃棄物処理法違反を問われていない。ただし、排出事業者であるDOWAに対しては、埼玉県より文書での行政指導が出されている。

処理会社は違反なし

今回、処理会社である「高崎金属工業」は、中和処理の許可を持ち、問題のヘキサメチレンテトラミン(HMT)を含んだ廃液の処理を請け負った。高崎金属工業は許可を受けたとおり中和処理、つまりPHを7にして、水質汚濁防止法の基準値を満たすところまで浄化して、水を放流したのである。廃棄物処理法上は問題ない。さらに、HMTの規制は水質汚濁防止法にないため、HMTが残った廃液を放流するだけでは違反にはならなかったのである。

そしてそもそも、高崎金属工業はHMTが入っていることを知らされていなかったので、行政指導の対象にもならなかったのだ。

排出事業者はグレー??

契約書の記載事項に(1)「他の廃棄物との混合等により生ずる支障に関する事項」や(2)「その他当該産業廃棄物を取り扱う際に注意すべき事項」等がある。いわゆる、廃棄物情報と言われているもので、契約書に記載する代わりに環境省がガイドラインで出している廃棄物データシート(WDS)を使うこともできる。他の廃棄物情報として「性状及び荷姿」や「通常の保管状況の下での腐敗、揮発等の性状の変化」等がある。

HMTは水中で分解したり、塩素と反応してホルムアルデヒドという毒物を生成するのだが、DOWAはそのことを契約書に記載していなかった。このことは(1)もしくは(2)の記載漏れに該当するのではないかとの疑いがある。しかし埼玉県としては、(1)について「塩素は廃棄物ではない」、(2)について「作業時の安全面についての注意事項の記載を求めている」ため、違反とはならないという結論に至ったようである。

さらに、DOWAは全窒素の含有量がある成分表、サンプルを提供しており、実態としてそれなりの情報提供をしていたということも考慮しているようである。HMTは窒素を含むため全窒素の数字と連動するので、水質汚濁防止法の全窒素の規制値以下に浄化できれば、HMTも問題のないレベルになるはず、というDOWA側の説明もあったようだ。

とはいえ、法の趣旨としては情報提供すべきだったというべきだろう。埼玉県としても、法律違反がなかったため刑事告発には至らなかったが、DOWAの情報提供が十分だったとは考えていないため、行政指導を出したのである。

この事件から得られる教訓

(1)その廃棄物に何が入っていて、どのような工程から出てくるのかを処理会社に説明すること

他の排出事業者から同様の工程からの廃棄物を受けたことがあれば、処理会社はどんな廃棄物なのかイメージがしやすく、逆に初めて聞くものであれば慎重に対応することになる。確かに、処理会社が成分分析をすることもあるが、通常それは元素レベルの分析でしかなく、何万種類もある化学物質を特定することができるわけではない。特に汚泥、廃酸、廃アルカリ、廃油、燃え殻等は何が入っているか外見ではわからないことがあるので、排出事業者からの情報が必要なのだ。廃棄物の情報を伝えることは、委託者の責任として当然のことであり、且つ、事故が起こった際に民事責任を問われなくて済むのだ。

(2)廃棄物処理法で定められた廃棄物情報の提供を適切に行うこと

WDSを使わなくてもよいが、法定記載事項は必ず書くこと。今回の事件のように、処理会社で事故や不適正処理が起こった際に、もし法定記載事項の記載が不十分だった場合は、排出事業者が刑事告発される可能性がある。できれば、廃棄物の構成要素である物質のMSDSを入手し、必要に応じ処理会社に提供するとよいだろう。

執筆者プロフィール(執筆時点)
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堀口 昌澄
株式会社アミタ持続可能経済研究所
主席コンサルタント 行政書士


廃棄物のリスク診断・マネジメント構築支援、廃棄物関連のコンサルタント、研修講師として活躍中。最近では、廃棄物処理業者の評価/選定システムの構築も行っている。個人で運営しているブログ「議論de廃棄物」も好評を得ている。『日経エコロジー』にて廃棄物処理法に関するコラムを連載中。

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