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なぜ対価を得ている処理会社が廃棄物を不適正処理するのでしょうか? 

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by eutrophication&hypoxia

様々なケースがありますが、全般的に、廃棄物処理というサービス業を取り巻く構造的問題が大きく関係していると言えます。今回はこの問題を大きく3つに分けて解説します。

問題①品質評価の難しさからのコスト優先

何らかの商品を購入するとき、製品購入や原材料調達であればその規格や納期を、サービスであれば利便性や内容を評価して、コストを含めた購買の判断ができます。一方、廃棄物処理の場合はリサイクルされるかそうでないか等、評価するポイントは限られます。

1円単位で調達や製造等のコストを切り詰めている中、「高品質で適正な処理だから」という妥当性の評価が難しい理由で、コストが割高な処理方法の採用を受け入れる会社は少ないでしょう。
とにかく廃棄物を持って行ってくれればよい、同じリサイクルならコストが安い方が良い、というように、コスト以上の判断基準を持てない排出事業者も多く、結果として安かろう悪かろうとなりがちです。

問題②新規参入が難しく小規模事業者が多い

廃棄物処理施設は社会に不可欠な存在ですが、本音を言えば、誰しもが自分の生活圏内にあって欲しくないと考える迷惑施設です。そのため、例えリサイクル施設であっても新規に廃棄物処理のための事業場を設けることは容易ではありません。また、廃棄物処理業は地域性が強く、既得権益も絡むため、昔ながらの小規模事業者が多い特徴があります。

このような参入障壁から、他業種のように、経済合理性に従って大資本が「全国どこでも低コストで高品質」というサービス展開で業界をリードしたり、技術力や発想力のあるベンチャーが業界の再編や変革を起こすといったことが起きにくいため、競争力のない業者の淘汰が進みません。その結果、経営環境の悪化から不適正処理の誘惑にさらされがちな零細企業も、一定程度市場に存在し続けることになります。

問題③仕事の完成が確認できない、関心がない

廃棄物処理における「業務の完成」は、委託した運搬や処分の完了です。より広い意味では再生や埋立など最終処分の完了まで含みます。原材料調達の際には、品質を満たさない部品や原料が納入されていないか検収確認を行い、契約どおりでない場合、発注者は支払いを拒否したり、是正や再納品を要求したりするでしょう。しかし処理業務の完了は、引き渡し時点では確認することができず、返送されるマニフェストで間接的に確認することになります。

さらに、処理委託先が不法投棄をしながら、適正に処理したと偽ってマニフェストを返送しても、それを即座に見破ることは非常に困難です。仕事の完成が、発注者である排出事業者に分かりにくい構造となっているのです。
 そして一部を除けば、そもそも自社の廃棄物が実際にどのように処理されたかに関心がある人は少なく、多くは目の前からなくなった時点で関心がなくなってしまうものです。せいぜい、関心があるのはマニフェストがE票まできちんと返送されているかという点くらいではないでしょうか。こうした排出事業者の関心の低さが、コミュニケーション不足による事故を誘発することにつながっています。

適正処理のためのコミュニケーションの重要性

近年は利根川水系ホルムアルデヒド検出事件や廃油処理工場の爆発など、排出事業者から処理会社への情報提供やコミュニケーションの重要性を再認識させる大きな事故が相次ぎました。処理の現場では、報道されるような事故には至らなくても、事故手前のヒヤリハットは少なくありません。処理検討時のサンプルと実際の廃棄物が異なっていたり、異物が混入していたりすることが、現場作業者の命を奪うこともあります。

そこで、環境省では特に外見からの判別が困難な汚泥や液物を想定して、昨年、廃棄物情報提供に関するガイドラインを改訂(第2版)しました。本ガイドラインに基づく廃棄物データシート(WDS)はあくまで参考様式ですが、いずれにしても効果的な情報提供が望まれます。

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「電気ガラス工業会会報誌 「電気ガラス」・ 51号 2014年10月発行」掲載

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執筆者プロフィール
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岡田 健一 (おかだ けんいち)
アミタ株式会社
環境戦略支援グループ

産業廃棄物管理に関するコンプライアンス、リスクマネジメントのエキスパートとして、セミナー講師を多数務め好評を得ている。その他、廃棄物管理リスク診断、マネジメントシステム構築支援、廃棄物処理業者の評価/選定システムの構築等を幅広く手掛けている。

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