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IPCC第6次評価報告書から考える企業に求められる経営とは?

Photo by Karim MANJRA on Unsplash

2022年2月28日に「IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)※第6次評価報告書 第2作業部会報告書」が公開されました。
本記事では、報告書の内容を解説したうえで、企業に求められる経営について考察しました。

※IPCC...国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略。人為起源による気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988 年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立された組織。

目次
レジリエントな人間社会、生態系への移行が重要

今回の報告書では、気候、生態系、人間社会の連動性システムにおける相互作用を重視しています。エネルギー、生態系、インフラなどによる変革とシステム移行により、レジリエントな人間社会、生態系を構築し、気候にレジリエントな開発を満たした場合、人間・生態系の健康、幸福を支えることができると指摘しています。

下記の(a)の図は、人間社会、気候変動、生態系の相互作用と動向を表しています。
人間社会が気候変動を引き起こし、気候変動は人間社会や生態系の適応を超えうる影響やリスクを発生させ、その結果、損失と損害が発生します。人間社会は、人間の活動による損失と損害を含む影響を生態系に与えると同時に、回復及び保全することもできます。

(b)の図は、気候リスクを低減しレジリエントな開発を満たした場合の相互作用を示しています。気候にレジリエントな開発を満たせた場合、(b)の図の灰色の矢印のように気候変動の影響は低減できます。気候にレジリエントな開発については、記事の後半で詳しく述べます。

▼気候リスクから気候にレジリエントな開発へ

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出典:環境省、「政策決定者向け要約」環境省による暫定訳【2022年3月18日時点】、P4より

人間の活動による気候変動は、すでに不可逆的な影響を与えつつある

気候変動による影響について、第6次評価報告書では「人間の活動による気候変動は、自然と人間に対して広範囲にわたる悪影響と損失と損害を引き起こしている」と明記されました。これまでの報告書と異なり、人間の活動による気候変動の影響についてはっきり明記されました。

▼これまでの報告書内容

報告書 公表年 気候変動が及ぼす観測された影響
第3次報告書 2001年 近年の地域的な気候変化、特に気温の上昇は既に多くの物理・生物システムに対して影響を及ぼしている
第4次報告書 2007年 すべての大陸及びほとんどの海洋で観測によって得られた証拠は、多くの自然システムが、地域的な気候変動、とりわけ気温上昇の影響を受けつつあることを示している
第5次報告書 2014年 ここ数十年で、すべての大陸と海洋において、気候の変化が自然及び人間システムに対して影響を引き起こしている

出典:環境省、別添1 IPCC/AR6/WG2報告書の政策決定者向け要約(SPM)の概要、P2より

気候変動の結果、生態系の構造や機能、レジリエンス、自然の適応能力が広範囲にわたって劣化しており、気候変動に起因する種の絶滅が初めて報告されるなど一部の損失はすでに不可逆的であると報告されました。
そして、約33~36億人が洪水、干ばつ、暴風雨などの異常気象や海面上昇など気候リスクに対して、非常に脆弱な状況下にいると述べられています。

下記の図は、世界全体・地域的に観測された気候変動による生態系、人間システムへの影響です。

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出典:環境省、「政策決定者向け要約」環境省による暫定訳【2022年3月18日時点】、P9.10より

より一層の急務な対応を。1.5℃を超えるリスク

気候リスクを認識することは、そのリスクを軽減するような適応策、緩和策、移行の強化につながると報告書では述べられています。複数の気候リスクが、その他の要因のリスクとも相互作用しており、リスク全体が複合化し、異なる分野、地域でリスクが連鎖するようになっています。
今回の報告書では、中・長期的な、127の主要なリスクの特定など様々なリスクが報告されました。本記事では、1.5℃を超えた場合のリスクについて3点取り上げます。

<1.5℃を超えた場合のリスク>

  • 地球温暖化は短期のうちに1.5℃に達しつつある。温暖化を1.5℃付近に抑えた場合、それ以上に達した場合と比べ、損失と損害の大幅な低減が可能だが、すべての損失と損害を除去することはできない。
  • 一時的にでも1.5℃を超えた場合(オーバーシュート)、1.5℃以下に留まる場合と比べて多くの人間と自然のシステムが深刻なリスクに直面する。地球温暖化が低減されたとしても一部は不可逆的な影響を与える。
  • 適応の限界※の観点では、すでに多くの自然システムはハードな適応能力の限界に近付いており、地球温暖化の進行に伴って更に多くのシステムが限界に達する。暖水性サンゴ礁、一部の沿岸湿地等の生態系では既にハードな適応の限界に近付いている、または超えている。1.5℃を超える地球温暖化の水準では生態系を活用した適応策が限界を超え、人間システムに便益を与える効果を失う。

※適応の限界:主体の目的、又はシステムの要求が適応策によって許容できないリスクから保護することができない段階
・ハードな(変化しない)適応の限界:許容できないリスクを回避するための適応策がない。
・ソフトな(変化しうる)適応の限界:適応策によって許容できないリスクを回避するための選択肢が存在するかもしれないが、現在利用できない。

リスクの低減「適応策」の現状と効果

適応は、気候変動に対する脆弱性を軽減する上で重要な役割を担っており、農業生産性、イノベーション、健康と幸福、食料安全保障、生計及び生物多様性保全の向上に加え、リスクと損害の低減など、複数の追加的な便益を生み出します。
今回の報告書では、適応の計画や実施の進展進歩は、すべての地域にわたって増加し続けており、少なくとも170か国が気候政策や計画策定プロセスにおいて、適応を含めていると報告されています。
一方で、進展はあったものの、現在の適応の水準と気候リスクの低減に必要な適応水準との間にはギャップが存在します。
現在の適応については、下記が挙げられています。

  • ほとんどが断片的、小規模で、特定部門に限定されている
  • 短期的なリスクに対応するために設計されており、実施よりも計画に焦点が当てられている
  • 適応の進展は不均衡に分布しており、より低所得の人々に最大のギャップが存在している
  • 現在の適応の計画と実施の速度では適応のギャップが拡大し続ける

報告書では、適応とのギャップを埋めるためには次の10年間が重要だと指摘しています。

下記の図は、気候変動の代表的な主要リスクに対応するために実現可能な気候変動への対応と適応策の選択肢が多様に存在すること、緩和とのさまざまな相乗効果を表しています。

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出典:環境省、「政策決定者向け要約」環境省による暫定訳【2022年3月18日時点】、P24より

そして、気候変動の対応と適応策は、生態系、民族集団、ジェンダー平等、低所得集団、持続可能な開発目標にも便益をもたらします。

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出典:環境省、「政策決定者向け要約」環境省による暫定訳【2022年3月18日時点】、P25より

気候にレジリエントな開発へ

気候にレジリエントな開発とは、持続可能な開発を支える温室効果ガスの緩和策や適応策を実施するプロセスのことを指します。
気候にレジリエントな開発の機会は急速に減少しており、1.5℃を超えると更に可能性が低くなり、地球温暖化の水準が2.0°Cを超える場合、一部の地域や小地域では気候にレジリエントな開発が不可能になります。

下記の図は、気候にレジリエントな開発がいかに複数の場における社会的選択と対策の累積の結果であるかを表しています。すでに過去の排出量や気候変動によってレジリエントな開発を向上させる一部の道筋は断たれており、2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)の進歩が十分でない場合、気候にレジリエントな開発の見込みは低下することがわかります。

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出典:環境省、「政策決定者向け要約」環境省による暫定訳【2022年3月18日時点】、P35

報告書では、生物多様性及び生態系の保護、包括的なガバナンス、人的・技術的資源、情報、能力、資金により気候にレジリエントな開発が可能になると述べています。これ以上、適応と緩和を遅らせれば、すべての人にとって住みやすい持続可能な未来を築く機会を逃してしまうことになります。

IPCC報告書から考える企業に求められる経営と役割

IPCCの報告書から世界が1.5℃以内に抑えることを目指し、温室効果ガス削減を強化する緊急性・必要性が改めて確認されました。また、気候変動だけでなく日本においても超高齢化社会を迎え、地域で人口減による雇用縮小、社会保障費増大などの社会課題も顕在化してくるといわれています。

このような予測不可能な変化の多い社会状況の中で、企業においても、変化に適応できるレジリエントな経営スタイルが求められています。それを実現する経営スタイルとして「エコシステム経営」をアミタは推奨しています。
エコシステムとは生態系を意味します。エコシステム経営とは「すべての生き物や物質が相互依存し、 関連し、変化し続けながら確実を作りあげる、すべてが循環している生態系の在り方に倣い、ビジネスモデルやサプライチェーンを循環型に変換していく経営」のことを指します。

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また地球の有限性の中での企業の役割の1つとして、企業の取り組みが、地球環境へのネガティブな影響を最小限にするだけでなく、ポジティブな影響を与えることを目指すべきと考えています。ここで言うポジティブな影響とは「企業が発展すればするほど社会や地球環境が良くなり、人々が幸せになるような影響」と考えています。

事業変革・事業創出を実現する「Cyanoプロジェクト」

企業の提供する価値を再定義し、事業を本気で循環型ビジネスへと導く「CyanoProject(シアノプロジェクト)」。エコシステム経営の実現を構築します。

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執筆者プロフィール(執筆時点)

桂山 詩帆(かつらやま しほ)
アミタ株式会社
社会デザイングループ カスタマーリレーションチーム

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