インタビュー
株式会社亀和商店 代表取締役社長 和田 一彦 氏水産資源は、適切な管理ができれば、永遠に持続可能なもの。だからこそ、世界中の漁業関係者が意識を高めなければならない。
築地市場で水産物の仲卸業として70年以上の歴史を持つ株式会社亀和商店。祖父の代から仲卸業をはじめ、和田さんは3代目。社会やライフスタイルの変化を感じていた和田さんがMSC認証を取得した理由はどのようなものだったのでしょうか。
アラスカの漁師から教わった「持続可能な漁業」という考え方
「MSC COC認証」を取得したきっかけは、1998年にアラスカからサーモンをはじめとする冷凍魚の輸入・加工販売を始めたことですね。アラスカの漁師であるブルース・ゴア氏と契約し、お付き合いするなかで、アラスカの漁師と日本の漁師の考え方の違いに多く触れました。アラスカでは魚をはじめとする水産資源に対して、非常に厳しく管理されているのです。どの魚の漁期はいつからいつまでで、その魚を獲れる海域はここからここまで、という具合にすごく厳しい規則があるのです。そして、規則を破ると漁師の免許を剥奪されてしまう。それゆえに、乱獲・密漁の心配が無いため、丁寧な仕事をする余裕が生まれるのです。だから、ブルース・ゴア船団の漁師たちの仕事は非常に丁寧なんですね。私たちが輸入しているサーモンも「トロール漁法」という方法で一匹一匹釣り上げたものを、船上で2時間以内に血抜きをし、そのまま冷凍する。だから新鮮なまま、食べることができるのです。
彼らの根底に根づいているのは水産資源を大切にしながら漁をするという考え方。そんな姿勢に共感を持ち、そうやって丁寧に獲られた魚をどうやって広く知ってもらうか、ということを考えていたときに「MSC認証」という存在を知りました。要するに「適切な水産資源管理をすることで、永遠に持続可能な漁をする」と。そういった考え方を第三者機関が証明してくれる。自分で「いい魚です」と言うよりもよほど効果があると考え、認証取得を目指しました。 。
日本で初めての「MSC COC認証」を取得
2005年に「MSC COC(加工流通過程の管理)認証」を取得したいと考え始めたのですが、当時は国内で取得している会社がまだなかったのです。どうすればいいのか手探り状態で進めていきましたね。 認証を取得するためには審査を受けなければならないのですが、当時日本には審査機関がない。そこで、調べてみたらシアトルに審査機関があることがわかったため、直接シアトルに話を聞きに行きました。すると、日本ではまだ広まっていないけれど、中国や韓国では認証取得が広まっているという話を伺いました。
というのも、欧米に輸出する場合、認証を取得していることでプレミアムがつくということだったんですね。我々も海外から魚を輸入して販売している、ゆくゆくは日本の魚を輸出したいとも考えていました。さらに今取得すれば日本で一番早く取得できる。そういったことも考えていたところ、2005年の11月くらいに株式会社アミタ環境認証研究所(当時はアミタ株式会社)が日本での審査機関になったという話を聞きまして、だったら日本で審査を受けたほうがいいということで依頼しました。
当社が取得したのは、加工・流通業者が取得する「MSC COC認証」です。「MSC漁業管理認証(※適切な漁業を行っている認証)」を取得している漁業団体に獲られた魚をその加工工程などにおいて非認証製品と混ざらないようにきちんと管理されているかどうか、購入伝票や出荷伝票が残っているか、加工する際の基準はどうなっているか、そういったことを審査されるわけです。とりわけ、トレーサビリティの観点から。MSC認証を受けた魚介類を消費者の方々に間違いなく届けるために、伝票管理するという管理方法を確立させるのに時間がかかりました。でも、認証を取得したことで、しっかりとした社内の管理体制ができたことは良かったと思っています。
「MSC COC認証」の意味を理解し、漁業関係者が意識を共有する必要がある
魚をはじめとする水産資源は、同じ資源という表現をされますが、石油や鉄鉱石のような資源とは少し性格が違うと思っています。石油や鉄鉱石はいつかなくなります。でも、魚はしっかりと漁獲量を管理しさえすれば永遠に持続可能な資源です。だからこそ、しっかりと適切な管理を行う体制を築いていく必要があると考えています。
確かに「MSC COC認証」の取得や維持は簡単ではありません。でも、漁業の世界に管理意識がなくなり、乱獲され、魚がいなくなったら我々の商売は成り立ちません。そのためにこういった認証に意味があるのではないかと考えています。そして、世界中の漁業関係者が、この認証の意味をしっかりと理解し、全員が「資源を管理する」という意識を共有できれば、ひょっとしたら認証自体が必要なくなる。「MSC COC認証」取得を誇るのではなく、その中に込められた意味を理解し、未来に魚を残していくためにも、当たり前のことにしていかなければならないと私は考えています。
話し手プロフィール
和田 一彦 氏
株式会社亀和商店
代表取締役社長
1938年創業。 築地市場内に本社を構え、水産物の仲卸業、加工業、及び輸出入業を行っている。従業員は30名。
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