ユニリーバに聞くサステナビリティ 前編|K-CEP参加企業インタビュー | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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インタビュー

ユニリーバに聞くサステナビリティ 前編|K-CEP参加企業インタビュー

地球環境を持続可能にし、限られた資源を未来に還すためには、より高度な資源循環の技術と仕組みを構築することが必要です。
本インタビューでは、九州サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(K-CEP)へ参画している企業にお話しを伺い、サーキュラーエコノミーの構築をはじめとするこれまでのサステナビリティの取り組みや、K-CEP参加への意気込みなどを語っていただきます。第1回は、ユニリーバ・ジャパンの新名司氏(写真)と増田有紀氏にお話を伺いました。

九州サーキュラー・エコノミー・パートナーシップとは?
サプライチェーンに連なる産官学民が連携し、それぞれの課題・強みを持ち寄り、暮らしと産業の持続可能性とサーキュラーエコノミー市場の創出を目指す新事業共創プラットフォームです。
K-CEPが手掛ける使用済みプラスチックボトル等の回収実証実験「MEGURU BOX プロジェクト」は、10社以上の日用品メーカーが連携する日本初の取り組みであり、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、各社が互いに手を結びあって未来への扉を押し開こうとしています。

※現在は、2021年10月20日に旗揚げしたジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(通称:J-CEP)のプロジェクトとして取り組んでおります。

ユニリーバのこれまでの取り組みに学ぶ

木下:本日はよろしくお願いします。最初に、御社のこれまでのサステナビリティに関する取り組みや考え方、企業理念などについてお聞かせいただけますでしょうか。

新名氏:弊社は現在、世界190か国で毎日25億人の方が製品(約400ブランド)をご使用いただいている世界最大級の消費財メーカーですが、そのルーツは1884年、ビクトリア朝時代のイギリスにあります。当時は衛生的な生活習慣がなく、感染症で亡くなる方が少なくありませんでした。この状況をうけて創業者のリーバ卿が「Make cleanliness commonplace 清潔さを暮らしの"あたりまえ"に」という願いを掲げてサンライト石鹸を発売したことが事業の始まりです。この事業の結果、衛生状況が改善し、英国ひいては世界でも多くの人の命が守られたと伝えられています。しかし、それから140年近くが経ち、世界の課題がより大きく複雑になり、気候変動を始め、ごみ問題や資源枯渇、栄養不足なども深刻化してきました。メーカーとして「Make cleanliness commonplace 清潔さを暮らしの"あたりまえ"に」ということだけでは足りなくなってきてしまったわけです。
そこで企業としてのパーパス(企業としての存在意義)を見直し、「Make sustainable living commonplace サステナビリティを暮らしの"あたりまえ"に」へと改めました。そして、成長とサステナビリティを両立する成長戦略「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」(以下、USLP)を2010年に導入し、パーパスの実現を目指しています。具体的には、「10億人以上のすこやかな暮らしに貢献」、「製品ライフサイクルからの環境負荷を1/2に」、「数百万人の経済発展を支援」という3つの柱を掲げ、2020年を目途に50項目ほどの目標達成を目指して取り組みました。

▼ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン(USLP)(2010~2020年)
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木下:創業以来140年も掲げてきたパーパスを刷新された後、この10年間の歩みというのはどのようなものでしたか。

新名氏:特に循環型経済への取り組みということで振り返りますと、まずは自社工場からの環境負荷の削減に取り組みました。温室効果ガスはこの10年で生産量1t当たり75%削減を達成していますが、世界の工場での再生可能エネルギーへの切り替えは51%、日本に限ると2015年11月から100%の切り替えを達成しています。水使用量は49%削減、廃棄物量は96%削減されています。
また、中でも、プラスチックへの取り組みは重要視しています。弊社では、2017年にプラスチックに特化した目標を掲げ、2019年により包括的な内容に見直しました。具体的な内容としましては、2025年までに「非再生プラスチックの使用量を1/2に削減(絶対量では10万t以上を削減)」、それでも使わなければならないプラスチックのパッケージについては「100%再使用可能・リサイクル可能・堆肥化利用可能」にするとしています。

▼プラスチックに関する2025年までの目標
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木下:堆肥化可能というのは、つまり、生分解性プラスチックのことですか。

新名氏
:はい、ただし生分解性プラなら何でもよいということではありません。生分解に非常に時間がかかってしまうものは問題があります。再使用・リサイクルしていくことが難しい場合に限り、堆肥化可能な素材を慎重に選んで使っています。また「使用済みプラスチックの回収・再生を支援」という目標を新たに追加しました。弊社が販売しているプラスチック・パッケージより多くのプラスチックを回収・リサイクルするために、社外の方とのパートナーシップを重視していきたいと思います。

プラスチックを循環させる具体的な挑戦

新名氏:具体的な取り組み内容についてですが、製品設計において「LESS Plastic、BETTER Plastic、NO Plastic」という世界共通の枠組みを取り入れています。「LESS Plastic」では、パッケージを薄くする・軽くする・小さくすることやつめかえ用製品の拡大によって、日本国内でのプラスチック使用量を年間104t削減しています(2019年実績)。次に、「BETTER Plastic」として、リサイクルされた素材やよりリサイクルしやすい素材を用いる取り組みを推進しています。現状でラックスやダヴのPET製のボトルの90~95%、つめかえ用製品では10%の割合で再生プラスチックを使用しています。これらは「現状、技術的に可能な最大限度までの割合」を採用しています。また、一部のパウチを単一素材(PETまたはPP)のパッケージにすることでよりリサイクルしやすくしています。

lessplastic.jpg写真:LESS Plasticの例

木下:技術の限界まで挑戦される姿勢が素晴らしいですね。プラスチック使用量削減や再生プラスチックの利用の促進と同時に、容器としての強度や中身を守る性能の確保も欠かせないものであり、これらを両立させながら日々パッケージ開発が進められていることを感じます。

新名氏
:こうした取り組みに加え、新しいビジネスモデルとして協力店舗を中心に「UMILE(ユーマイル)プログラム」を2020年の11月から始めています。ユニリーバのつめかえ用製品を買う、または使用済みのパッケージを協力店舗の回収ボックスに入れた時にポイントが貯まる、お得にエコ活ができるプログラムです。

▼新しいビジネスモデル「UMILEプログラム」

umile_ver2.png

(図はクリックで拡大)

新名氏:また、2021年2月から長野県佐久市で地元の移動販売会社と連携し、リフィルステーションの実証実験を始めています。ファミレスのドリンクコーナーのような設備を積んだ移動販売車で製品の量り売りをするというものです。6月からは第2弾として、宮崎県の新富町チャレンジショップというところにリフィルステーションを常設しています。

木下:これも非常に先進的な取り組みですね。リフィルステーションなどはチリやフィリピンなど海外の拠点で先行している事例が他のメディアで紹介されていましたが、国内でもこうした実証実験がスタートしているんですね。

新名氏:はい、地道にですが(笑)。ユーザーの方からは「子供の環境教育に良い」とか「移動販売車で来てくれるのはとても便利」などのポジティブな反応をいただいています。一方、消費財メーカー同士の連携としては、同じく今年の6月から東京都の東大和市で花王株式会社との協働回収のプログラム「みんなでボトルリサイクルプロジェクト」を開始しました。日用品のプラスチックボトルを回収し、主に回収の仕組みづくりと、水平リサイクル、つまりボトルからボトルへのリサイクルの技術面での検証をするものです。そして7月からは九州でのK-CEPによる使用済みプラスチック回収実証実験の「MEGURU BOX プロジェクト」に参加しました。

なぜ、サステナビリティに取り組むのか?今後の目標とは?

新名氏:これまでお話したようにUSLPの中で様々な取り組みをして参りましたが、2021年からその後継プランにあたる新たな成長戦略「ユニリーバ・コンパス」を導入しています。戦略的なフォーカスとアクションの一つとして、ブランドとイノベーションを通じて地球の健康を改善するというものがあり、その中では例えば「2039年までに、原料調達から店頭販売までのすべての過程で、製品からの温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」という目標を掲げています。

木下:これは非常にチャレンジングな目標ですね。原料調達や店頭販売までのライフサイクル全般となると、農産物の生産者や原材料の運搬事業者、製品の流通業者から店舗経営企業までの連携と協働が必要になりますね。

新名氏:はい、かなりチャレンジングだと思いますが、より大きな変化を起こしたいと考えています。一方で、こうした取り組みを続けていますと、社外から「なぜそこまでしてサステナビリティに取り組むのか」という質問を受けることもあります。弊社では、10年間取り組んできたことで「サステナビリティはビジネスへのポジティブな効果がある」ということが見えてきました。例えば、「明確なパーパスを持つサステナブルなブランドは、その他の自社ブランドに比べ77%早く成長している」ということが明らかになりました。弊社のグローバル調査でも、54%の消費者がサステナブルなブランド・製品を選んでいる、または今後選びたいと回答しており、いわゆるエシカル消費がニッチではなくなってきていることを感じます。また2008年以来の工場での環境対応や省資源化により、グローバル累積で1,200億円以上のコストを削減するなどの効果が生まれています。この削減されたコストで再生可能エネルギーや再生プラスチック導入によるコスト上昇を吸収することもできます。こうした取り組みは将来的な調達リスクや企業ブランドへの評価リスクを低減することにつながります。

▼なぜサステナビリティに取り組むのか
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新名氏:こうした成長モデルを示すことで、是非他社様でも取り組みを進めていただきたいと考えています。そうした思いを込めて「サステナブルなビジネスのグローバルリーダーになる」というビジョンを掲げさせていただいています。

木下:御社では創業者が掲げた理念が脈々と継承され、様々な取り組みが展開されてきたと思いますが、そうした社内の機運を高め、維持していくコミュニケーションについてはどのような取り組みをされているのでしょうか。

新名氏
:弊社でも当初から一枚岩という訳ではなかったと思いますね。例えば2019年の年末にグローバルCEOからUSLPが社内に発表されたときには、世界中の社員に動揺が走ったことは否めません。USLPの対外発表直後には株価も一割ほど急落し、退職する社員もいたと聞いています。そうした中でも大事にしていた社内コミュニケーションがいくつかあります。一つが「成し遂げたい未来に目を向ける」ということです。SDGsの目標もバックキャスティングの発想でつくられていますが、課題を乗り越えた先にある未来を描いて皆が想いを共有できるようにすることが大切なのではないかと思います。それを経営トップが自分の言葉で信念として明確に語る。あとは、決算報告やマンスリーレターのようなルーティンのコミュニケーションでも、業績のことだけではなくサステナビリティについても必ず言及するようにし、会社としてのコミュニケーションの中で常にサステナビリティが意識されるように仕掛けづくりを行っています。そうしたトップからのドライブは非常に重要ですが、一方でボトムアップでなければ成し遂げられないこともたくさんあります。実は「UMILEプログラム」の取り組みは、社内の営業担当者が始めたんですね。「あらゆる部署で、手を挙げる人がいたら耳を傾けて応援する」こうした企業文化を育てることが大切だと思います。

木下:製品開発での脱石油という開発目標も掲げられていますが、こうしたサステナブルと成長をトレードオフにしないという理念と戦略基盤、そしてコミュニケーションが非常にしっかりとされているので、製品や技術の開発の方向も手を緩めずに取り組まれているのですね。こうした取り組みの推進のために、御社内でのレクチャーなどがあるのでしょうか?(後編へ続く)

話し手プロフィール(執筆時点)

Unilever-Shinmyo.jpg新名 司(しんみょう つかさ)氏
ユニリーバ・ジャパン
アシスタントコミュニケーションマネジャー

米国シラキュース大学大学院卒。2004年日本リーバ(現ユニリーバ・ジャパン)入社。2009年から現職。企業広報全般を担当し、ユニリーバ・サステナブル・リビング・プランの日本市場への展開や、東日本大震災の被災地支援、再生可能エネルギーへの100%切替などに携わる。

Unilever-Masuda.png増田 有紀(ますだ ゆき)氏
ユニリーバ・ジャパン
アシスタントプロキュアメントマネージャー

東京海洋大学大学院卒。2018年ユニリーバ・ジャパン入社。2018年から現職。
パッケージ購買を担当しており、主に日常の業務ではプラスチック関連でのサステナブルな調達に関わり、「みんなでボトルリサイクルプロジェクト」のプロジェクトリーダーを担当。

聞き手プロフィール(執筆時点)

zu_5.jpg木下 郁夫(きのした いくお)
アミタ株式会社 
社会デザイングループ 緋チーム

企業向けのソリューション営業の経験をベースに、廃棄物管理に係わるシステムの設計・開発、業務フローの構築などに従事。現在はサステナビリティ経営に向けた新規事業の提案など、更なる顧客満足度の向上を目指し、提案・サービス活動を行っている。

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