マンダムに聞くサステナビリティ 後編|K-CEP参加企業インタビュー | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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インタビュー

マンダムに聞くサステナビリティ 後編|K-CEP参加企業インタビュー

地球環境を持続可能にし、限られた資源を未来に還すためには、より高度な資源循環の技術と仕組みを構築することが必要です。
本インタビューでは、九州サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(K-CEP)へ参画している企業にお話を伺い、サーキュラーエコノミーの構築をはじめとするこれまでのサステナビリティの取り組みや、K-CEP参画への意気込みなどを語っていただきます。第3回は、株式会社マンダム執行役員の松田哲明氏、ESG推進室の米田実氏と野﨑琢馬氏 にお話を伺いました。
(写真:左から米田実氏、松田哲明氏、野﨑琢馬氏)

前編はこちら

九州サーキュラー・エコノミー・パートナーシップとは?
サプライチェーンに連なる産官学民が連携し、それぞれの課題・強みを持ち寄り、暮らしと産業の持続可能性とサーキュラーエコノミー市場の創出を目指す新事業共創プラットフォームです。
K-CEPが手掛ける使用済みプラスチックボトル等の回収実証実験「MEGURU BOX プロジェクト」は、10社以上の日用品メーカーが連携する日本初の取り組みであり、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、各社が互いに手を結びあって未来への扉を押し開こうとしています。

※現在は、2021年10月20日に旗揚げしたジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(通称:J-CEP)のプロジェクトとして取り組んでおります。

バリューチェーン上のサステナビリティをどう実現するか

田部井:メーカーがサステナビリティを打ち出す一方で、小売業ではそうした製品がなかなか受け入れられにくいというお話もお聞きしたことがあるのですが、小売側の反応というのはいかがでしょうか?

野﨑氏:
小売店様は小売店様で企業としての環境配慮や、サステナビリティ推進を強化されています。「マンダムの商品にどういう環境配慮がされているのか、教えてください」、「SDGsにどう対応しているのか教えてください」といったお問い合わせは少しずつですけれども増えてきていますね。ですから小売店様の店頭においてもサステナビリティに対する取り組みをしている商品の訴求力が高まってくることは十分想定されますし、私たちメーカーとしてもその対応も強化していかないといけないという理解でいます。

田部井:小売店様から取り組みの問い合わせが来ていることについては、御社としてはどのように捉えているのでしょうか。なぜ今、小売店様は御社にSDGsの取り組みをお尋ねになるのか、どう感じられているのでしょう。

米田氏:
一つは、私たちメーカーの「仕入れ原材料にも責任を持たなければならない」という観点と同じように、小売店様も自社の取り組みだけでなく、取扱商品の構成にも責任を持とうとされているのだと思います。小売店様に対しても生活者の皆さまから、お問い合わせが増えているのではないでしょうか。もう一つには「サステナブルな商品を取り扱っているということを、新たな価値として他店と差別化したい」というお考えもあるのではないかと思います。ですから私たちとしても、マンダムの考え方や取り組みを評価していただきたいですし、サステナブルについては、健全な危機感と新たな機会としての認識を持った上での対応をしなければならないと思っています。

田部井:
「健全な危機感」おっしゃる通りですね。

米田氏:実際店頭では「エシカル商品」をよく見かけるかというと、今はまだ品ぞろえが十分とは言えないのではないかと思います。ただ、今からそういうことに取り組み、発信していくことで、お得意先の小売店様から要請がきた時もすぐに対応できる前方待機の態勢をとっていくことが、一番のESGの推進かなと思っています。
いわゆる小売店からの外圧という形で来てから慌てて対応するのでなく、やはり私たちは理念の中で、どうやっていくのかということをこちらから発信しています。正直、まだまだ穴はございますが、その穴を埋めるように全方位で取り組む、社会の要請がきた時にきめ細かい対応をするためにも全社挙げて今後取り組んで行く必要があると思っている次第です。
また、マンダムに対して期待を持っていただいて要請が来る場合でも、やはりできる事とできない事ははっきりとお話しなければならないと思います。グリーンウォッシュ(見せかけの環境配慮)やSDGsウォッシュと非難されないためにも、 正しいことを正確に取り組む。取り組んでいないことや、今後取り組むということもきっちりと発信していくのも私たちの務めと思っています。

田部井:
そうですね、実が伴うものというのが非常に大事だなと思いますね。小売店様のお話を伺いましたが、小売店様のさらに先にユーザーである生活者の方々がいるわけですが、この生活者の行動や価値観と、サステナビリティというものの関係性についてはどのようにお考えでしょうか。

米田氏:まず弊社の理念の中に「生活者発・生活者着」がございます。お客様からのニーズやウォンツを汲み取って、いかに製品として提供し、お役立ちするかという中で、マンダムのサステナビリティをアピールしていく。そのような形で生活者の皆様からの支持を得なければならないと思います。私たち企業のサステナビリティの根幹は、やはり生活者の方々が私たち企業を応援していただいて、それが購入という形に結びついて、そこから私たちは売上という対価を提供していただいて、それでまたお客様に還元する。これがいわゆるサステナビリティな企業活動と考えます。

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ユーザーの行動動機の変革をどのようにもたらすか

田部井:生活者の方々の意識、あるいは行動も少しずつ変わってきているな、という実感はあるでしょうか?

松田氏:
私たちはマーケティング担当ではないので正確なお話はできませんが、ターゲットで言いますといわゆるZ世代ですね、この世代の購買調査・意識調査で見ると間違いなくSDGsへの関心は非常に高くなっています。ただ、実際に商品購入するとなった時は、まだまだ価格や商品の機能、洗練されたパッケージング、そういうものの方が判断基準としては高いかなと見ています。今は過渡期ということだと思いますね。
田部井:なるほど、その過渡期のスピードを上げていけるような取り組みというか、企業側からできることについては、何かお考えがおありでしょうか?

野﨑氏:やはり私たちはメーカーですので、商品・サービスを通じて価値として提供し続ける、潜在的なウォンツを引き出して、顕在化していくということだと思います。ですので、いかに今後の商品・サービスの中で、サステナビリティの重要性を伝えていけるか、気づいていなかったニーズ・ウォンツに対してサステナビリティにつながるようなコンセプトを持った商品を提供していくことが一番の取り組みなのではないかなと思いますね。

米田氏:
こうしたことを直接的にアピールするのではなく「商品の中で自然に訴求し、価値として感じてもらう」ことがこれからの課題であり、非常に重要なキーワードと思っています。サステナブルをマンダムから発信するというのは、やっぱり何かの仕掛けが必要だと思います。私たちの事業領域である「健(康)・清(潔)・美・楽」の一番の根底にある軸は「気軽に楽しむ」の「楽」なんですよね。その「楽」軸を使って私たちがマンダムらしさを出して、何か面白いことやっているね、という形にもっていくのがいいのではないかなと。もう一つには、たまたまマンダムの商品を手に取ってみたら「この商品、サステナブルだ」という具合に、気づきや発見をしてもらえるような、さりげなさっていうのも必要なのではないかなと思います。一種のサプライズですね。そう考えて、わくわくしながら製品を作っていきたいですね。

野﨑氏:
今回、サステナビリティ上の重要課題(マテリアリティ)として6つ特定しておりますけれども、その中でも「マンダムらしさは、どこにあるのかな?」という議論を通じて、このマテリアリティの一番上に「気軽に楽しめるおしゃれ文化の創造」を掲げさせていただいております。やはり私たちは化粧品企業として生活者の方にお洒落を楽しんでいただいて、日常生活の中でちょっとした小さな発見を感じていただき、心豊かに生活していただきたいという想いがありますので、そういったところを強化していく、新たな提案をしていくというのがマンダムらしさということになるかと思っています。

田部井:なるほど。K-CEPも回収物の中に異物が結構混ざっていたりするので「どうやって消費者の皆様にきちんと容器を洗っていただくか」ということもですが「そもそもここはゴミ箱ではなくて資源を回収している場所なんだ」ということを、どうやって認知いただいて行動自体を変えていただくかというところは、私たちの中にも答えがあるわけではないので、メーカーの皆様と一緒に考えていきたいなと思っています。

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写真:実証実験中の回収ボックス(福岡県北九州市)

田部井:サステナブルが楽しい、素敵なんだ、ということを生活者の方々の心の中に芽生えさせていくような仕掛けが、きっと御社にはできるんじゃないかなという風に思いますので、大変期待しております。

松田氏:マーケティング部門にも、伝えておきます(笑) 。今までだと例えばマス市場における流通を中心に考えた製品も多かったのですが、そういったことを一旦全部ゼロベースにして「本当に自分たちが生活者にどういう価値を提供できるか」を考えたものを出していこうということで、新しい製品が今後早々に上市されます。そういうところはこれからちょっと期待していただけるんじゃないかなと思います。コーポレートスローガンである「BE ANYTHING, BE EVERYTHING.」(なりたい自分に、全部なろう。)の実現に向けた商品第一弾として、 つい先日10月7日に「gatsby THE DESIGNER」をリリースしました。こちらは「多様性」と「自己表現」をテーマに誕生したメンズコスメラインです。是非、手に取っていただきたいです。
(詳しくはこちらをご覧ください:マンダム公式サイト ニュースリリース

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米田氏:また「BE ANYTHING, BE EVERYTHING .」(なりたい自分に、全部なろう。)ということでインナーブランディングの活動も始まりまして、名刺が自分のなりたい自分の色になったり、社員証も変わったりで、自分がどうなりたいんだということを、もっとこの会社で自己表現してほしいという取り組みも始まっているので、今までにないような製品が出てくると思っていただけたらと思います。

失敗を糧とし、新たな挑戦でマンダム流のサステナビリティを世に示す

田部井:ありがとうございます。少し毛色が違うご質問なんですが、御社の沿革にありました過去に一度、直販ビジネスをやられて業績が悪化したタイミングと、変化するライフスタイルに寄り添った提案をして一気に業績が伸びたタイミングがあったと思います。この辺りは御社の中で次なる商品開発や売り方のところでは教訓や資産になったりすると思っておりまして、今サステナビリティという新しい考え方や、新しいZ世代が出てくるっていう状態の中で、活かされていることなどはあるのでしょうか。

野﨑氏:おっしゃる通り、例えばギャツビーというブランドでしたら、若者の化粧行動に対する後押しをしてきました。 男性専用の洗顔料を使ってお手入れすることがカッコいいとか、男性の茶髪や金髪には、ちょっと「不良っぽい」といった印象があった中で「ヘアカラーをすることがお洒落」ということを提案したりしてきました。このように、それまではできていなかった、一歩踏み出すことができていなかったおしゃれや身だしなみ行動に挑戦できるような提案をし、定着させてきたという 経緯やノウハウの蓄積は、今後の商品を提案する上でもプラスになってくるのではないかなと思います。また、直販ビジネスで失敗したというのも一つの経験値です。あの時には社員の人員整理もやりましたので「もう二度とああいう思いをさせてはいけない」という戒めとして持っています。ただ、現状の社会環境は非常にスピーディかつ、大きく変わってきていますので、過去失敗したことがすべてNGだといった捉え方はしていません。例えば海外市場では直販事業も実際にやっていますので、そのあたりはうまく経験値として、次につなげられるようになっているのではないかと思います。

米田氏:二度の経営危機を迎えて、そこから立ち直ってきたわけですが、その経験は非常に大きな糧となっていると思いますね。マンダムという会社は失敗もしますが、そこから絶対それに落ち込むことなく、それを糧として、教訓として、より良い会社にしていこうとみんなが努力している企業ではないかなと感じます。だからサステナビリティにおいても押しつけではなく、社員全員がみんなでやっていかないとダメだなと自覚する一方で、企業として業務の中で取り組んでどう企業の成長につなげていくかという、その二つですね。個人の自覚と企業の戦略の二つの側面から取り組んでいくべきものが、持続可能性というものじゃないかなと思いますね。

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田部井:非常に共感できます。最後に、御社がサステナビリティの実現に向けてPRされたいことや、K-CEPで連携いただいている企業の皆様に向けたメッセージなどをいただけますでしょうか。

松田氏:既存のモデルがないビジネスモデルに取り組んでいきたいですし、今回、何よりPR したかったことが「私たちだけでは解決できない」ということですね。社会課題の解決やESGに関して様々なディスカッションを社内でもしたのですが、やはり自分たちだけでできることの限界っていうのがすごく見えました。自分たちだけでは大きな課題に取り組めない、解決できないので、同じ想いを持っている企業の方々とは仲間として一緒にやっていきたい。そういう機会があれば、ぜひ一緒に議論や対応に取り組むチャンスをいただきたいなと思います。K-CEPの実証実験は、社内でもいろんな部門が大変関心を持っておりまして、どういう結果が出るのかを非常に楽しみにしています。なかなか前に進めなかった中で、こういう取り組みにも参加させていただけたということで、今後もこうした実験には積極的に参加したいなと思っています。

田部井:ありがとうございます。今回、複数の消費材メーカーの方からお話しを伺う中で、やはり消費者、生活者の皆さんの考え方やライフスタイルを変えていかなければならないということが明確になってきたと思います。2か月前のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告では、日本のカーボンバジェット(炭素予算)だと2027年までに、世界だと2040年までにライフスタイルが変わらないと不可逆的なことが起きるというレポートが描かれているので、私たちとしても、中長期ではありますけど急いでいるということと、皆様のお力をお借りして新たな市場を作りたいという思いがありますので、ぜひご協力をいただきたいなと思います。本日は本当にありがとうございました。

話し手プロフィール(執筆時点)

07mandom_matsudasama_profile2.jpg松田 哲明(まつだ てつあき)氏
株式会社マンダム
執行役員

1997年マンダム入社。海外グループ会社への15年間の出向を経て、2019年より経営管理部にて、グループ経営管理業務に従事。2020年より執行役員として、経営戦略部、ESG推進室、経営管理部を担当。

08mandom_yonedasama_profile3.jpg米田 実(よねだ みのる)氏
株式会社マンダム 
ESG推進室 室長

1988年マンダム入社。西日本営業本部配属。1999年より5年間、国内グループ会社出向。
2009年お客さま相談室にて顧客対応業務に従事。2014年CS統括部(2015年CSR推進部に改称)2020年組織改編によりESG推進室にて業務、現在に至る。

09mandom_nozakisama_profile3.jpg野﨑 琢馬(のざき たくま)氏
株式会社マンダム 
ESG推進室 課長

2002年マンダム入社。国内グループ会社への出向を経て、2015年より広報IR室(現IR室)にて、機関投資家・個人投資家に向けた情報開示や対話に従事。2020年よりESG推進室において、サステナビリティ戦略の策定やマテリアリティの特定、サステナビリティに関する社内浸透など、サステナビリティ全般に取り組んでいる。

聞き手プロフィール(執筆時点)

tabeisan.png田部井 進一(たべい しんいち)
アミタ株式会社
取締役

アミタグループへ合流後、主に企業の環境部・サステナビリティ部門を対象に、環境ビジョンの策定や市場調査など、多くの支援実績を持つ。2020年より取締役として、アミタ(株)における営業および市場開拓を担当。アミタグループの事業の柱となる「社会デザイン事業」の確立に向けて、新規サービスの創出・新規市場開拓を進める。

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