
インドネシアの環境省が推進している「PROPER」をご存知でしょうか。本コラムでは、一部の日系企業も取得しているPROPERについて、制度の概要から評価基準まで、PROPERの全体像をわかりやすく解説します。皆さんの企業はPROPERへ参加する必要のある企業なのか、PROPERの最低ランクに該当していないか、本コラムで確認してみましょう。
PROPERとは?:PROPERの概要と目的
PROPERとは、 「Program for Pollution control, Evaluation and Rating」を略したものであり [1] 、インドネシア政府が企業の環境管理パフォーマンスを向上させるために導入した政策の一つです[2]。既存の法律に基づき、企業に対して環境管理の水準を評価・向上促進する役割を担っています[2] 。
また、PROPERはインドネシアの環境管理における透明性と民主化を実現させるものでもあり「透明性・公平性・説明責任・市民参加」といったグッド・ガバナンスの原則を実践しています[2]。民事や刑事による環境法の執行といった従来のコンプライアンス手段の代替ではなく、従来の手段と連携した補完的な制度とすることで、環境の質向上をより効率的かつ効果的に実現することを目指しています[2]
PROPERの現状
▼ジョグジャカルタ特別州環境林業局のPROPER授賞式の様子

インドネシアの環境省(KLH)によると、環境保護強化のため、2025年度は5,476社がPROPERの評価・監視対象となっています[3] 。
2023-2024年のPROPER参加社数は4,495社であり、約1年で1,000社以上と大幅に増加していることからも、インドネシア政府が中心となってPROPERの普及に力を入れていることが分かります[4]。PROPER導入による成果として、2018年時点で廃棄物処理に関するコストは日本円で約2.6億円ほど節約されたと試算されています[2]。
▼インドネシアにおける環境評価基準の範囲

出典:アミタ作成
2025年、インドネシアの環境省は、PROPERに関する新しい規則を導入しました(環境大臣規則2025年第7号)。同規則では、産業界が単に環境規則を守るだけにとどまらず、革新的で効率性のある、持続可能な地域社会への移行を促進することを強調しています。また、上記の図で示しているよう、PROPERの評価範囲も下記のように拡大しています。
| 従来 | 拡大範囲 |
| 環境管理書類、水質・大気汚染管理、B3および非B3廃棄物の管理、環境監査、泥炭地および鉱山管理等 | 環境マネジメントシステムの導入、LCA、エネルギー・水の効率化、排出物・廃棄物削減、生物多様性保全等 |
また社会的な側面からは、地域社会への働きかけや災害時の対応などもその評価対象となります。なお、パーム油産業においては、企業への追加要件としてインドネシアパーム油事業者連合(GAPKI)に加盟することが求められています [5] 。
*GAPKI: https://gapki.id/en/
PROPER設立の背景
PROPERのはじまりは1995年頃にまで遡ります。当初は「PROPER PROKASIH※」として運営されており、①持続可能な開発のための水質改善、②水質汚染管理の組織体制構築、③社会の意識と責任感の向上の3点を目的として進められました [7]。
※PROKASIHとは「Program Kali Bersih(河川浄化プログラム)」のことです
PROPER PROKASIHのような評価システムがつくられた背景には、インドネシアにて1980年頃から、急激な人口増加や工業化に伴う水質汚染や大気汚染など、深刻な環境問題があったためといわれています[8]。
1998年、PROPERは一時活動を中断しましたが、2002年に再開されると、主な評価対象を、それまでの水質汚染領域から、大気汚染(排気ガス)やB3廃棄物などにも拡大しました [9]。そして現行のPROPERは、事業者の環境許認可遵守状況を監督する義務を設けた2009年法律第32号の規定を実施するものとなりました [5]。改めて整理するとPROPERは、以下のような背景から導入されました [2] 。
- 企業の低い法令遵守レベル
既存のさまざまな環境規制ツールが、効果的に機能していない。 - 透明性と市民参加の要求の高まり
環境管理に対して、より透明性と社会参加が求められるようになった。 - 企業による環境対応へのインセンティブの必要性
環境保護への取り組みに報いることで、企業による環境管理の価値を高める。 - 情報公開によるコンプライアンス向上の可能性
企業の環境管理レベルを社会に公開することで、法令遵守のさらなるパフォーマンス向上が期待される。
PROPERの評価手順
PROPERの評価手順には、6つのステップがあります。
ステップ1:企業選定
以下の条件に当てはまる企業は、PROPERの参加対象となります。
(企業規模や事業形態等の条件によってはPROPERへの参加が義務付けられている場合もありますので、注意が必要です)
- AMDAL取得対象事業: 環境影響が大きく、政府の許可取得にAMDAL(Environment Impact Assessment)が不可欠な企業。
- 特定産業: 石油・ガス、鉱業、製造業(化学、セメント、パルプ・紙)、および大規模インフラ(電力、港湾)。
- 廃棄物管理の義務: 有害産業廃棄物(B3廃棄物)の保管・処理能力を持つ企業、または排水・大気汚染のモニタリングが必要な施設を有する企業。
また、工業団地に入っている企業で、化学、食品、鉱業などに該当する生産活動を行う場合も、PROPER評価の対象となります。
ステップ2:報告書の作成
このステップで収集された企業の情報は、「水質管理・大気管理・B3廃棄物、管理」の観点から整理され、環境パフォーマンスを評価する一時的な報告書が作成されます。以下、データの収集方法です。
・自己監視データ:企業が提出する環境管理実施報告書の内容を評価します。
・現地調査による一次データ:環境監視官(PPLH)が定期的に現地へ赴き、調査を実施します。
環境パフォーマンスの報告書は、PROPERで定められている評価基準と照らし合わせて、企業のパフォーマンスランクを暫定的に位置づけるものとして利用されます。
ステップ3:技術チームによるレビューと内部審査
報告書は、技術チームによるピアレビュー(相互評価)を受けます。
結果は環境省の上層部に報告され、コメントを受け取ったのち、審議会に提出され、最終的な議論と承認が行われます。
ステップ4:異議申し立て
承認された報告書は、企業と地方自治体に共有されます。企業や地方自治体は、共有された評価に対して、最新の有効なデータを提出することで異議申し立てが可能です。
ステップ5:最終評価と公表
企業、地方自治体による異議申し立てが申請されると、再審議が行われ、審議会は最終的な評価と提言をまとめ、環境大臣に提出します。環境大臣は報告をもとに企業の環境パフォーマンスの最終ランクを正式に決定します。
以上のプロセス完了後、企業の評価は一般公開され、企業および地方自治体にも通知されます。
PROPERの5段階評価と評価基準
▼PROPERの5段階評価について

【1. 5段階評価について】[6]
PROPERは選定した企業を5つの段階に評価し、各段階に色を設定しています。以下、買う階層の色とその階層の概要です。
1:金(emas:エマス)
最高ランク。生産やサービスにおいて一貫して環境に良い取組を行う企業。倫理的で社会的責任を果たす企業。
2:緑(hijau:ヒジャウ)
法律で定められているレベル以上の環境管理(Beyond compliance)を実施し、環境管理システム、資源効率化、社会責任を果たす企業。
3:青(biru:ビル)
適用される環境法規を、順守している企業。
4:赤(merah:メラ)
環境管理が、規制に準拠していない企業。
5:黒(hitam:ヒタム)
最低ランク。故意に環境を汚染・破壊する、法規に違反する、または行政処分を履行しない企業。
【2. 評価基準について】[2]
そして、上記の基本的な評価は以下の6つの項目から、審査されます。
①環境活動に関する文書要件と報告義務
②水質汚染の管理
③大気汚染の管理
④有害・有毒(B3)廃棄物の管理
⑤海洋汚染の管理
⑥潜在的な土地劣化の可能性
①環境活動に関する文書の要件と報告義務
企業の活動が環境影響評価文書(AMDAL)や環境管理・監視の取り組みに関する文書(UKL-UPL)、その他関連する管理文書のいずれかで証明されていることが、評価基準の1つとなります。また、AMDALおよびUKL-UPLで定められている報告義務を順守していることも、重要な評価ポイントとなります。
②水質汚染の管理
排水質汚染の管理については、前提として企業による排水の排出には、国の規定に基づく許可の取得が必要です。また廃水の水質基準を満たしているかを証明するために、定期的なモニタリングを実施する義務があります。さらにモニタリングデータの信頼性を担保するため、認定されたラボでの測定・分析や、流量測定装置の設置といった技術的要件も満たす必要があります。
③大気汚染の管理
大気汚染の管理については、企業は自社から排出されるものを特定し、その排出物が環境における基準値を超えないように、規定が定める頻度や要件に基づいて、モニタリングする必要があります。また、モニタリングの実施過程が安全かつ科学的に適当であることを保証するため、大気中の汚染物質を採取するための設備や仕組みについても、定められた要件を満たす必要があります。
④B3廃棄物の管理
企業におけるB3廃棄物の管理については、種類と量を把握する段階から評価され、その許可を取得して、適切に処理および管理を実施することが求められます。
関連記事:インドネシアのB3廃棄物管理に関する法律
⑤海洋汚染の管理
海洋汚染については、排水処理の許可が適切に取得されているか、また、その排水が許可条件に従って実施されているかが評価されます。
⑥潜在的な土地劣化の可能性(採鉱活動にのみ適用される)
土地劣化の評価については、鉱山活動のみに適用され、その活動が計画に基づいて実施され、管理されていない裸地の発生を防いでいるかを評価しています。具体的には、斜面や段丘の高さ・傾斜を調整し安定性を保つことが求められています。
また、各岩石の酸性鉱山廃水(AMD)が発生する可能性を特定し、覆土に関する管理計画を策定する必要があります。さらに、浸食を防ぐ施設の整備・維持や、採掘後の排水の水質が基準値を満たすような排水システムの構築も必要です。
以上は、企業が環境に与える影響を評価する上での、最低限の条件です。また、企業が評価ランクの緑や金の取得を目指す場合は、以上の6項目だけでなく、「Beyond Compliance」が重要となります。法令を遵守するだけの義務的な水準を目指すのではなく、企業自ら社会や自然環境に対して高いレベルの取り組みを行う姿勢が求められます。
日系企業 PROPER取得状況
PROPERで2番目に評価の高いランク(緑)を取得している日系企業は、以下の4社(9施設)です。なお、1番評価の高いランク(金)を取得している企業は現在ありません。
ブリヂストン
PT. Bridgestone Tire Indonesia – Karawang (40)
PT. Bridgestone Tire Indonesia Bekasi (39)
大塚製薬
PT. Amerta Indah Otsuka Plant Sukabumi (44)
PT. Amerta Indah Otsuka – Pasuruan (43)
トヨタ
PT. Toyota Motor Manufacturing Indonesia (162)
PT. Toyota Motor Manufacturing Indonesia – Karawang Plant (164)
PT. Toyota Motor Manufacturing Indonesia -Sunter 2 Plant (165)
ヤマハ
PT. Yamaha Indonesia Motor Manufacturing -West Java Factory(167)
PT. Yamaha Indonesia Motor Manufacturing -Pulogadung Plant (166)
まとめ
今回は、インドネシアで企業の環境活動を評価し、企業が自社の環境活動をアピールする際に利用されている「PROPER」について紹介しました。また中段でも記載したように企業規模や事業形態等の条件により、PROPERへの参加が義務付けられる場合もあります。本コラムを参考に、皆さんの企業がPROPERへ参加すべきか、評価ランクの黒や赤に該当していないか、ぜひ確認してみてください。
関連情報
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出典:
[1]WORLD BANK GROUP, Indonesia’s Program for Pollution, Evaluation and rating,
[2]インドネシア環境林業省ホームページ、”PROPER / SEJARAH PROPER / KRITERIA PROPER”、
[3]環境林業省ホームページ, Kementerian Lingkungan Hidup/Badan Pengendalian Lingkungan Hidup(KLH/BPLH),
[4]インドネシア政府環境林業省ホームページ, “Pengumuman Daftar Peringkat PROPER 2023-2024”,
[5]インドネシア政府環境省、「 KLH/BPLH Sosialisasikan Aturan PROPER Terbaru, Dorong Industri Melampaui Ketaatan Lingkungan 」、2025
[6]インドネシア政府環境林業省ホームページ,”PROPER”, 2020,
[7]ブレレン県政府環境局、”PROKASIH (PROGRAM KALI BERSIH)”、 2021
[8]DEVELOPMENT ASIA, 2021
[9]Media Indonesia、”Proper, Collaboration for Sustainable Life”、2018
参考資料
執筆者情報
-
おしあみへんしゅうぶ
おしアミ編集部
アミタ株式会社
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