〈弱いロボット〉から学ぶ幸せのかたち|岡田美智男 氏|豊橋技術科学大学 情報・知能工学系教授

便利で効率的で快適で…、でもなぜか満たされない。ああ、幸せって何だろう?
そんな問いにヒントをくれる、ちょっと風変わりなロボットがいると聞いて、会いに行ってきました。彼らを前にすると、思わず話しかけ、手を差し伸べ、うふふと微笑んでしまうのはなぜなのか?

記念すべき、しまうまフレンドお一人目は、豊橋技術科学大学で〈弱いロボット〉の研究を行う、岡田美智男教授。レッツ!しまうまトーク!

アミタホールディングス代表・末次貴英と外部有識者の対談シリーズです。コラムの詳細はこちら

なぜ不完全なロボットを作るのか

末次

本日は、〈Talking-Bones〉などの開発者である、豊橋技術科学大学の岡田先生の研究室(ICD-LAB)にお邪魔しています。

こちらのお部屋もいろんなロボットさんがいて、気になって仕方ないですが笑、、、先日、「きみとロボット」という展示会で、先生のロボットたちにすっかり心を奪われてしまいました。私が想像していたような高機能で高性能なロボットとは違って、むしろ大丈夫かなと思って目が離せない、助けたくなる存在と言いますか…。

本日は、先生が研究される〈弱いロボット〉を軸に、弱さや不完全さが生み出す力や人々の幸せについてお話しできればと思います。早速ですが、まずは先生がどういうコンセプトで、ロボットたちを作られているのか教えて頂けますか?

岡田氏

そうですね。例えばこの〈む~〉という名前のロボットは、みんなに可愛がってもらえるロボットとして作りました。見ての通り、表情はないし、手足もない。言うなれば、何もできない、ただ「むっ、む~」と鳴くだけのロボットなんです。

でも、少しだけ考え方を変えてみましょう。
〈む~〉が置いてある椅子を誰かが押してあげれば、動くことができますし、手が無いのなら誰かに取ってもらえばいいですよね。〈む~〉は表情がなく言葉足らずな存在ですが、周りにいる人が積極的に感情や言葉を想像し解釈することで、コミュニケーションを取ることができるのです。

身近なところで例えるなら、まさに赤ちゃんがそうです。赤ちゃんはとてもか弱い存在ですが、泣いてぐずることで、ちゃっかり欲しいミルクを手に入れたり、抱っこしてもらって行きたいところに移動できてしまいますよね。家庭の中で一番弱い存在のはずが、なんだかとっても強い。

末次

なるほど。周りを巻き込むことで、何かを成し遂げてしまうということですね。思い返してみると、赤ちゃんって最強ですね!泣くだけで周りが全部やってくれるんだもんな。

岡田氏

〈む~〉以外にも〈弱いロボット〉はまだまだいて、これは自分でごみを拾うことが出来ない〈ごみ箱ロボット〉です。

末次

先日のロボット展でもこの子を見かけましたよ!「もこ~!」「もこもん!」というのがかわいくて。チラチラこっちを見てるような気がするもんだから、ついついごみを入れてあげたくなるんですよね。

岡田氏

そうです。このロボットにはアーム(手)がないので、ごみを見つけるとその横でもじもじしながら「もこもこ」と言うだけ。そして、誰かが気づいてごみを入れてくれると、軽くお辞儀をします。

以前、お子さんが多くいる空間に、この〈ごみ箱ロボット〉を持ち込んだところ、自然と子どもたちがお世話を始めました。この子自身はごみを拾うことは出来ませんが、周りの子どもたちの助けを上手に引き出して、結果としてごみを拾い集めてしまいました。

末次

子どもたちの気持ちがなんとなく分かるような気がします。先生のロボットを前にすると、ついつい足を止めて助けてあげたくなっちゃうんですよね。完璧じゃないところが、僕を必要としているように思える。それと、展示会にいたロボットの中で気に入ったのが、昔話を聞かせてくれるけど、途中で大切な言葉をモノ忘れしちゃうロボットです。こんなのありか?!って思いました(笑)

岡田氏

〈Talking-Bones〉ですね。桃太郎や浦島太郎のお話をするんですけど、肝心なところを忘れてしまうロボットです。忘れてしまったところを周りの人から教えてもらって、言葉を補いながら話を進めます。

末次さんもおっしゃったように、私たちのロボットは、どれも完璧では無くてそれぞれが弱さを持っているんです。そして、その弱いところを周りの人たちに開示し、助けてもらうことを前提にデザインされている。

こういうポンコツで弱々しいロボットだからこそ、人の強みや優しさを引き出し、ちゃっかり何かをやり遂げてしまうと言えますね。そして、手伝った側の人たちも「手伝えることができた」という喜びや満足感から、自己肯定感もグンと上がる。そういうロボットと人の関係性っていいなと思うのです...

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