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排出事業者の「処理計画」って何で作るの?(その1)BUNさんの「元・行政担当者が語る 廃棄物管理のイロハ」

「BUN」こと、長岡文明と申します。
廃棄物処理法は難解な法律ですが、まさに毎日の生活や生産活動に密着した問題ですから、本当はそう難しく考えすぎない方がいいのかもしれません。「こんな風に考えると分かりやすい」「こんな趣旨で作られたルールなんだ」といった、廃棄物処理法をもう少し身近に分かりやすく理解していただけるようなことを書いていきたいと思います。
「多量排出事業者処理計画」
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まず初回は、「多量排出事業者処理計画」について、解説します。

排出事業者である企業では、毎年6月末に「多量排出事業者処理計画・実施状況報告書」を各自治体へ提出しなければなりません。しかし、そもそもなぜこうした報告書が必要なのでしょうか?こうした報告制度ができた目的・背景と、報告書を作成する際のポイントをまとめました。

そもそも処理計画ってなんで作るの?

廃棄物処理法では、多量排出事業者は「当該事業場に係る産業廃棄物の減量その他その処理に関する計画を作成し、都道府県知事に提出すること」とし、また、その処理計画の実施の状況について、都道府県知事に報告しなければならない義務があります。

これら処理計画の報告は、提出された処理計画及び実施状況報告の内容を、都道府県知事がインターネット等で情報公開することで、各事業者の自主的な産業廃棄物の減量化への取組等を促進するために、実施されている制度です。

2010年の改正はどうして必要だった?

今回の改正で多量排出事業者処理計画の制度が少し変わりました。 改正前後で一番注目されたのは、「過料20万円以下」という罰則の登場です。ただ、このコラムをご覧になっている方で、この罰則が適用になる会社はいないでしょう。要は「虚偽の報告をしなければよい」ということですから。

今回の法改正では、「(処理計画報告の)様式の統一化」が行われました。ほとんどの該当事業者は、平成13年にだされた「処理計画の策定マニュアル」に沿って作成されていると思いますが、これまでは報告書の決まった様式というものはなく、各事業者任せでした。 ※今回の法改正に基づき、「処理計画の策定マニュアル(PDF)」も改訂されています。

そこで、法律で様式を統一することによって、統計資料を作る行政側が全国の産業廃棄物排出量を集計・把握しやすくなるというメリットがあると考えられます。ちなみに、多量排出事業者による産業廃棄物排出量の統計が出せれば、日本全国の産業廃棄物排出量の約7割を把握できたことになります。

処理計画の統計データを見れば、今後の産廃業界の動向が分かる

国や都道府県は色々な施策を練るときに、「どんな廃棄物が」「どんな業種から」「どういう形態で」「どれ程出ていて」「それはどこでどのように処理されているのか?」といったことを、把握しておく必要があります。

一般廃棄物を扱う市町村と違って、都道府県は産業廃棄物の処理を直接行っている訳ではありません。しかし、産業廃棄物の処理の実態を分かりやすく事業者や国民に情報公開することにより、今後の施策方針を具体的に示しやすくなります。

たとえば、「これからは埋め立てゴミが増えていく」という傾向が分かれば、民間企業は埋立地の設置を試みるでしょうし、「燃やす廃棄物が増える」となれば焼却炉の建設を企画するでしょう。または、「これからは、埋め立てや焼却ごみは減少し、リサイクルする時代だ」と示せば、都道府県が直接リサイクル施設を建設しなくとも、営利企業である民間により、そういった施設の建設が進むことが誘導されるわけです。

もっと、具体的に示せば、

「がれき類の発生量が5000万トンあり、
 破砕施設が2000万トンの能力しかない」

と、示せば、まだまだ破砕施設の建設は続くでしょう。

しかし、

「発生量は4000万トンに減ってきていて、
 破砕施設により既に3800万トンは処理されている」

と示されれば、おそらく新規に破砕処理を手がける人は少ないでしょう。

廃棄物に関する統計データは宝の山

このように、廃棄物に関する統計データは、廃棄物処理に携わる人にとっては宝の山であり、それをコントロールする行政にとっても、なくてはならないものなのです。

もちろん、行政は今までもこういった作業をやって来ましたが、わざわざ何百万、何千万円もの税金を使って実施される5年に1回の実態調査をもとにしていたため、とても非効率でした。 このデータを多量排出事業者の計画や実績報告で補えるようになるため、そういった視点では今回の様式統一はとても価値のあることといえます。

また、事業者にとっても様式が統一化されるということは、他社との比較や経年変化も見やすくなる、と言うことです。 自身にも役立ち、社会にも役立っていると思えば、大変な処理計画、実施状況報告もやりがいのある仕事だと感じるのではないでしょうか。

■BUNさんの「元・行政担当者が語る 廃棄物管理のイロハ」

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執筆者プロフィール

長岡 文明 (ながおか ふみあき)
株式会社アミタ持続可能経済研究所 特別顧問

山形県にて廃棄物処理法、廃棄物行政、処理業者への指導に長年携わり、行政内での研修講師も勤める。2009年3月末で山形県を早期退職し、廃棄物処理法の啓蒙活動を行う。廃棄物行政の世界ではBUNさんの愛称で親しまれ、著書多数。 元・文化環境部循環型社会推進課課長補佐(廃棄物対策担当)

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