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コラム

第3回:判断の相違が排出事業者に及ぼすリスクアンケートから考える、2010年改正廃棄物処理法「第21条の3」の問題点とは

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前回は、2010年改正廃棄物処理法「第21条の3」の問題点、建設工事の定義のあいまいさが、具体的にどのような判断の差異につながるかをお伝えしました。最終回は、判断の差異が排出事業者のリスクにどうつながるかを御伝えします。


※アンケートの結果概要と留意事項はこちら
(Photo by fukapon.Some rights reserved)

判断の相違が排出事業者にとって高リスクになる場合とは?

前回記事のように、建設工事の定義があいまいなため判断が割れるのは現段階では避けられないでしょう。つまり、企業が建築工事に該当していないと考えていても、自治体や警察、裁判所が建設工事に該当すると判断する可能性があります。これは、万一不法投棄があって、警察が捜査し始めた場合、企業にとっては大きなリスクになり得ます。

では、どのようなケースで「企業=該当しない」、「自治体=該当する」と判断が分かれたのでしょうか。今回のアンケートでは、判断が割れそうな事例を意識して取り上げたのですが、やはり多くの質問項目で判断が割れました。

企業が該当しないと考える割合が高く、自治体が該当すると考える割合が高いものには特に注目です(色づけ部分)。工事を発注する場合に、元請業者から処理委託契約書やマニフェストのコピーをもらっている場合も、誰が排出事業者なのかをわかっていなければなりませんので、注意しましょう。

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発注者が排出事業者となることについて

頻繁にいただく質問についても取り上げます。建設工事に伴って排出される(取り外される)設備について、発注者は取り外し作業のみを委託したと考えて、発注者が排出事業者になるとの解釈は成り立つとかどうかについてのアンケートです。

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企業側は半数以上が成り立ちうると前向きです。自治体も「個別事例による」と、「成り立ちうる」をあわせると82%は解釈が成り立つ可能性を認めていると読むこともできます。

排出事業者のリスクを回避するソリューション

いずれにせよ、法律上は排出事業者になれなかったとしても、他者の廃棄物を、第三者が排出事業者として処理委託することは禁止されていません。そう考えると、発注者が処理の受託という形を取らず、「排出事業者として処理委託する」と整理すれば問題ありません。

なお、元請業者としては、排出事業者としての責任を果たしていないという指摘を受ける可能性は残っています。

今後の対策

2010年改正廃棄物処理法「第21条の3」の内容は元請業者にとって大きな影響を与えるものです。どうしても判断に迷うケースはあるでしょう。安全のために自治体の担当者の指導を受けるという方法もありますが、都度相談するわけにもいきません。

事業者が自治体に沢山相談すれば、環境省にもその声が届いて問題であると認識することになるので、この点から考えると悪いことではありません。しかし、ガチガチの解釈をする自治体ばかりと相談したのでは大変です。柔軟な解釈をしてくれる自治体やコンサルタントとも相談しつつ、自社の工事にあった具体的な判断基準を作っていく必要があるでしょう。

ただ、フックのねじ込みの話でもお感じになったと思いますが、今回の改正を実際のルールに落とし込むのはなかなか難しい作業です。結局、実態を踏まえた再改正が必要だと思います。

第1回:建設工事の定義が曖昧で認識が統一されない?
第2回:建設工事の判断、企業と自治体でどう異なる?

共同アンケートを実施した環境総合専門紙 『環境新聞』についてはこちら

執筆者プロフィール(執筆当時)

堀口 昌澄
株式会社アミタ持続可能経済研究所 ソリューションチーム
主席コンサルタント(行政書士)

廃棄物のリスク診断・マネジメント構築支援、廃棄物関連のコンサルタント、研修講師として活躍中。最近では、廃棄物処理業者の評価/選定システムの構築も行っている。個人で運営しているブログ「議論de廃棄物」も好評を得ている。『日経エコロジー』にて廃棄物処理法に関するコラムを連載中。

昨年11月には、廃棄物処理法を今後どうして行くべきかについて考えた「廃棄物処理法のあるべき姿を考える」を環境新聞社より上梓。

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