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第5回:法の目的を明確かつ合理的に~自動車リサイクル法との対比~堀口昌澄_連載「揺らぐ廃棄物の定義」

Holiguti_Some_rights_reserved_by_hillman54.jpg本連載シリーズでは、廃棄物関連のコンサルタントや研修を数多く実施してきたアミタの主席コンサルタントの堀口昌澄が、連載12回を通じて、「揺らぐ廃棄物の定義」について解説します。 廃棄物を取り巻く法の矛盾や課題を理解することで、今後起こりうる廃棄物関連法の改正への先手を打つことができます。

今回は、自動車リサイクル法との対比から廃棄物の定義について解説いたします。

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使用・処分方法に対して規制をかける

自動車リサイクル法では、"自動車としての使用"を終えたもの(以下、使用済自動車)を廃棄物処理法の廃棄物として扱うと明記している。"自動車としての使用"には、倉庫としての使用、その他運行以外への用途への使用を含む、ということである。そのままの形で使うならよいが、使用を停止したり、鉄スクラップとして売却したりする場合でも、使用済自動車=廃棄物となる。処理費用がかかるかどうかは問われていないのだ。

一方、廃棄物処理法は、基本的に有価・無価という判断基準だ。そのため、本来規制をかけるべき"環境汚染を発生しうる処理方法"であっても、有価取引されてしまうと規制が届かないというケースもある。

自動車リサイクル法はこのようなことがないように設計されているのだ。自動車としての使用をやめる=廃棄する場合は規制の対象とする。つまり、再生素材の市場価格の変動、高価な素材の使用割合、運搬距離の長短、脱法目的で10円/㌧だけ代金を支払う、などによって規制の有無が変わるのではなく、使用・処分方法に対して規制をかけることができるのだ。

もちろん、事はそう単純ではない。劣化、損傷が激しい自動車が中古車として海外で需要があることもある。そのため、ユーザーが手放した段階で、実物を見ただけでは中古車として流通するかどうかの判断が難しいケースもある。「使用済自動車判別ガイドライン」が作成されているが、ここでも総合判断は登場する。このように、確かに排出段階ではグレーゾーンで総合判断が残るが、最終的に中古車として使用されるかどうかははっきりする。これが廃棄物処理法の総合判断説との決定的な違いである。

廃掃法との明確な違い

しかも、環境規制としてはどちらが優れているかは明らかだ。自動車リサイクル法は、「リユース(中古車)には規制をかけない、処理・リサイクルには規制をかける」という、有価・無価とは関係のない構造となっている。廃棄物処理法が、同じリサイクル方法であっても、無価物の時は規制して、有価になった段階で規制がなくなる、というのとは対照的だ。

家電リサイクル法や小型家電リサイクル法については、廃棄物処理法の総合判断を適用して、有価物でも廃棄物となりうると通知で示している。食品リサイクル法も、有価物をも対象とした取組を促している。しかし、いずれも廃棄物処理法の影響を少なからず受けている。

一方の自動車リサイクル法は、法律の条文で明確に従来の廃棄物の定義を変更(拡大)している。そして、多くの部分で廃棄物処理法の従来の規制ではなく、自動車リサイクル法の合理的な規制を適用している。ここが重要なポイントだ。将来、廃棄物処理法が規制の枠組みをそのままにして、廃棄物の範囲(=法の適用範囲)を拡大したのでは、過剰/無理な規制となってしまう。リサイクルを促進する、より合理的な規制を準備したうえで、範囲を拡大するのが順序として妥当だろう。

次回は、建設リサイクル法から見える廃棄物の定義について解説いたします。

※本コラムは、環境新聞にも連載中です。

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執筆者プロフィール(執筆時点)

堀口 昌澄 (ほりぐち まさずみ)
アミタ株式会社 
環境戦略デザイングループ 環境戦略機能チーム 主席コンサルタント(行政書士)

産業廃棄物のリサイクル提案営業などを経て、現在は廃棄物リスク診断・廃棄物マネジメントシステム構築支援、廃棄物関連のコンサルタント、研修講師として活躍中。セミナーは年間70回以上実施し、参加者は延べ2万人を超える。 環境専門誌「日経エコロジー」にも連載中。環境新聞その他記事を多数執筆。個人ブログ・メルマガ「議論de廃棄物」も好評を博している。大気関係第一種公害防止管理者、法政大学大学院特別講師、日本能率協会登録講師。

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