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コラム

ダイキン工業 | 社会動向を掴み、環境技術で世界をリードするおしえて!きかせて!環境戦略

daikin_001.jpg世界最大の空調機器メーカー、ダイキン工業。中国などの途上国を中心に着実な市場拡大が見込まれる業界において、そのNo.1企業は、経営の基軸にはっきりと「環境」を据えています。その戦略の在り方と、その企業でCSR・環境部門が果たしている役割について、CSR・地球環境センター 藤本室長にお話をうかがいました。

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「環境技術」を経営のテーマに据える

松田:貴社のCSR報告書2015を拝見すると、環境技術を駆使して社会課題の解決に貢献することが明記されています。また、CSR目標は中期経営計画にも盛り込まれているのですね。

藤本氏:ダイキンでは5年毎に「FUSION」という戦略経営計画を作っています。2016年度からは「FUSION20」がスタートします。前回の「FUSION15」と比較すると、当社の強みである環境技術をさらに活かして価値をつくること、国際的な価値基準を社内に活かしていくことがより打ち出されており、環境やサステナビリティといったテーマはこれからますます重要になってきます。

松田:貴社で環境技術が経営のテーマになったのはいつ頃からでしょうか。

藤本氏:はっきりと意識し始めたのは2005年頃です。それまでもダイキンでは空調や冷凍機を製造・販売していましたが、これらの環境技術でグローバルに展開するという方針が出されたのはこの頃だったと思います。

松田:たしかに、空調や冷媒は環境負荷の高い分野で、地球温暖化への影響度も大きいですよね。

藤本氏:そうなんです。そこでの行動のとり方がダイキンの将来に大きく関わってくると考え始めました。自動車業界など、他の業界の動きも随分参考にしました。途上国で生産される「価格は安いが環境負荷はそれなりに高い」製品ではなく、日本の高い環境技術を使った製品を市場に広く供給し地球環境に貢献することが、グローバル企業の使命であると考えました。

環境技術×ソーシャル・イン という戦略

松田:しかし、環境負荷は低いが価格は高い、というのは市場に受け入れられるのでしょうか。

藤本氏:たとえば、空調機の世界で最も大きな市場は中国です。日本の4~5倍はあります。どんどん空調機が売れてくるようになると、このままいけばエネルギーも賄えないし、温暖化も急加速する。ここにエネルギー効率の良い日本の空調機を投入したいが、価格が高く富裕層しか買えない。しかし富裕層だけをターゲットとすると市場全体のシェアもとれないし、何より環境に対してほとんど貢献できない。ではどうするのか。ダイキンは現地の有力企業と業務提携を行い、現地で安く生産する技術と、ダイキンの省エネ型のインバーター技術を組み合わせて、コストを抑え、一気に商品を展開したのです。

松田:技術を外に出す、というのは思い切った決断に思えますが...。

daikin_002.jpg藤本氏:確かに社内からは反対もありました。しかし、社会課題の解決を実現するだけの製品普及を目指そうとすると、ダイキンが全てやっていては、コストもかかり手も回らないんです。日本企業の製品が海外でなかなか売れていかない背景には、この自社による「抱え込み」があると思っています。ダイキンはある時期から、本当に残すべきものは手許に残すが、2~3年くらいで他に追いつかれるところは出してしまおうというオープン戦略を取るようになりました。

松田:多少身を切ってでも、最初に市場をつくるということですね。

藤本氏:そうですね。また海外展開においては、その国で何が求められるのか、どうすれば発展に寄与できるかの見極めを大切にしています。中国を例にとると、ある時期から全人代(全国人民代表大会)で書かれる方針が「高度成長」から「調和ある成長」に変わっています。そういう流れからどういった商品が求められるのか。私は「ソーシャル・イン」という言葉をよく使いますが、社会の動きはその大きなヒントになります。国ごとにエネルギーバランスは違うので、当然ながら社会の動きも違います。求められるのは省エネなのか、新世代の冷媒なのか、どの国に何を打ち出したらよいか、メッシュを細かくして見るようにしています。

松田:貴社の理念にもある"「次の欲しい」を先取りする"動きですね。他社ですと、経営企画や事業戦略の部門が担当しそうな内容に思えます。

藤本氏:当然そうした部門でも調査していますが、社会から来る流れを掴むのは、うちの部署が一番得意としているところです。すぐには商品にならないが、社会的にはこうしたものが求められている、こんな課題があるといった、今でいうマテリアリティ(重要課題)選定に近い議論を、環境製品委員会という組織で20年前くらいから行ってもいます。当時の冷媒の環境影響に対する問題提起なども、そうした議論に端を発したものなんですよ。

SDGsを機に「環境」から「社会課題解決」へ

松田:いわゆるマーケット調査とは別に社会動向を分析して、それが事業戦略に反映されているところに、貴社の強みがあるように思います。

藤本氏:そうです。我々の部署にはステークホルダーと会社の経営をつなぐ役割があると考えています。各国の将来市場も注視していますが、国際的な価値基準、いわゆるサステナビリティインデックスやSDGsといったものにも目を向けています。特に2015年に国連が発表したSDGsの17の目標を見た時には、我々の視野はまだ狭かった、と感じました。

松田:「視野が狭い」ですか。

藤本氏:えぇ。環境の分野ではそれなりにやってきたつもりでしたが、貧困や健康など、社会には様々な課題があります。環境と同じようにダイキンの強みを活かせれば、もっと世の中に必要とされる会社になれるはずです。ダイキンの柱である空調も、いずれはコモディティ(汎用品)化していきます。値段だけの勝負にならないよう企業価値向上にも懸命に取り組みますが、「環境」から「社会課題の解決」というところに視座をワンステップ高めることで、新しい事業活動ができないかというところが、ステークホルダーと経営とをむすびつける役割として最大の関心事です。

松田:すでに「環境」の次を見据えているわけですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

ダイキン工業株式会社の取り組みから学ぶポイント
  • 社会課題の解決を実現するだけの製品普及を目指す場合、自前主義をあえて手放すことも、戦略の一つに成りうる。
  • CSR・環境を担当する部門は、"社会から来る流れを掴む"ことに優れており、そうした知見や情報をいかに事業戦略に結び付けられるかを考える必要がある。
  • 環境分野だけではなく、貧困・健康などといった社会的課題にも応えていく事業を展開することで、自社が提供する社会的価値の増幅を図ることができる。
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話し手プロフィール

daikin_mr.fujimoto.jpg藤本 悟 (ふじもと さとる) 氏
ダイキン工業株式会社
CSR・地球環境センター 室長

兵庫県出身。大阪大学基礎工学部研究科を卒業後、ダイキン工業に入社。研究所に所属し、圧縮機の開発からリニアモーターカー用極低温冷凍機の開発に従事。その後、オゾン層問題を契機に環境問題に取り組み、2000年からつくば環境研究所所長、2007年から現職。環境経営を推進しながら、業界や学会では冷媒問題に取り組む。

聞き手プロフィール

matuda.jpg松田 弘一郎 (まつだ こういちろう)
アミタホールディングス株式会社
経営戦略グループ
マーケティングチーム

岐阜県出身。法政大学人間環境学部を卒業後、アミタに入社。大学3年の夏に南インドを訪れ、廃棄物の再資源化などをはじめとした環境保全においても、先進国と途上国との連携・協働の促進が重要であると痛感する。現在は、マーケティングチームにて、環境に関するテレマーケティングやセミナーの企画・運営などを担当。

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