東大院生レポート第1回:2児の母+元小学校教員+東京大学大学院生 地球環境を考える | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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東大院生レポート第1回:2児の母+元小学校教員+東京大学大学院生 地球環境を考える長濱さん@東大院生レポート

nagahama1-01.jpgはじめまして、長濱といいます。名字を英訳すると、ロングビーチですかね(笑)まずは第1回ということで、自己紹介をさせていただきます。現在、大学生と高校生の息子がいる母親です。大学を卒業後は、株式会社ユーキャンで8年、株式会社小学館プロダクションで3年仕事をしたのち、東京都の小学校の教員になりました。花王株式会社のCSR活動で行われている「花王・教員フェローシップ」の参加により、地球環境の劣化を目の当たりにしたことを契機に、環境教育の可能性を模索中。現在は東京大学大学院の新領域創成科学研究科で博士課程の学生となり、研究活動を行っています。

写真1:NGOアースウオッチによる「ケニアのマングローブ」プロジェクトにて、マングローブの苗を移動中(2006年)

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CSR ――花王株式会社の場合

nagahama1-002.jpg花王株式会社は2003年からCSRの一環として、毎年10名の小中学校の教員を、環境NGOアースウォッチが行う生物多様性にかかわる世界の研究調査地へ派遣するプロジェクトを実施しています。10日間前後の現地調査滞在費(20~30万円)と航空運賃10万円が選出された教員に支給され、帰国後の報告会では,調査活動にかかわる教育実践を報告するという内容で、今年で12年目を迎えるプログラムです。当時,私は荒川区の小学校で算数と理科を指導する専科教員でした。2005年に初めて応募しましたが不合格でもあきらめず。翌年に再度応募して、8月に「ケニアのマングローブ」のプロジェクトに参加させていただくことができました。その当時、まだ息子たちは小学生と保育園に通っていて、公私ともに大変忙しくしていた時期でした。

写真2:植林のためのマングローブの苗床

ケニア沿岸のマングローブ林から

nagahama1-003.jpgマングローブ林は、熱帯・亜熱帯地域の川口付近で潮の干満の影響を受けるところに生息する樹林をさします。世界中では100種類以上の植物がマングローブとよばれています。ケニア沿岸の調査では、ナイロビからモンバサへ飛行機で移動,市内のホテルでイギリス人の主任研究者と世界各国から集まったボランティア・スタッフと合流、タンザニアに近いガジ村まで1時間半かけて車で移動しました。初めて村にきた日本人ということで,芸能人並みの?歓迎を受けたことが今でも鮮明に思い出されます。
カジ村の海岸ではいくつものプロットにおいて,マングローブ林の種類やそこに生息する生き物の種類と数、土壌の調査、および人為的影響を調べるとともに植林をする約10日間の機会を得ました(写真参照)。

写真3:潮の満ち引きのある海岸にてマングローブの苗を植林

まずは現実に目を向けること

nagahama1-004.jpgマングローブ林の面積は,世界全体で約1,810万haありますが,これは熱帯林の全面積(約13億ha)のわずか1%に過ぎず、30年前と比較して森林被覆率は30%以下に減少したという報告もあります。その原因には,エビ養殖池への転換,製炭材のための伐採,農用地への転換などにより,多くのマングローブ林が伐採されました。養殖池で生産されたエビは世界中へ輸出されていて,このエビの消費国第1位は日本です,また1960年代以降,農村部での自給自足生活から都市化への社会システムの変化に伴って炭や薪が商品となり,マングローブ林が大量に伐採されるなど,先進国にいる自分たちは途上国の資源を大いに利用しています。私たちの暮らしは、途上国の生活に負荷をかけていることを、日常生活で実感することは難しくはありません。まずは地球のあちこちで起きていることを知り、事実に目を向けることです。

写真4:植林されたマングローブの苗。現在も成育中であればと願う。

学校で,社会で

nagahama1-005.jpg地球環境へ配慮した行動を学校や家庭で子どもたちと考えた時、その答えが本当に地球環境保全に役立っているのか疑問が残りました。例えば,割り箸を使わずにマイ箸を持つことは,森林資源を無駄にしないと思われますが,割り箸を使うことは,端材や間伐材の利用を促進する点から,望ましいという見解もあります。EWJの調査プログラムを通して知り合ったカメの研究者を招いて行った小学校の出前授業では,縁日で買ったミドリガメを教室で大切に飼育していたのですが,これはミシシッピアカミミガメという外来種で,成長すると水槽よりも大きくなることがわかりました。飼育できずに,川に放たれたミシシッピアカミミガメは全国で増加していて,多摩川支流のカメの生息調査では,カメの全個体数60%以上のミシシッピアカミミガメが観測されました。環境に配慮した行動を考える時,解決には至らない場合があります。そうしたジレンマに対して,どう対処するかが,大学での研究の場であるといえます。次回は大学での研究について、紹介させていただきます。

写真5:台湾およびオランダなど各国から参加したボランティアたちと寝食を共にして、研究調査活動に参加した。

プロフィール

nagahama_pro.jpg長濱 和代(ながはま かずよ)氏

東京都の小学校教員をしていた2006年に、花王のCSRを通じて、国際環境NGOアースウォッチによる途上国の森林プロジェクトに参加。地球環境の劣化を目の当たりにして以来、環境教育の可能性を模索中。2013年3月に筑波大学大学院生命環境科学研究科で環境科学修士。同年4月から東京大学大学院・新領域創成科学研究科博士課程に在籍中。

<研究テーマ>
海外の研究調査地は北インド・ヒマラヤ山麓に位置するウッタラーカンド州で、住民参加による森林管理の事例として森林パンチャーヤトを研究している。インドは今後世界中で最も多い人口を抱え、経済的かつ地球環境的変化を遂げる国の一つとして注目している。そもそも算数・数学の教師で、理数系の好きな人たちを増やそうと、算数教材研究に従事。ハンズオン・マス研究会幹事(http://handson.exblog.jp/)。パナソニックのCSRとしての施設であるリス―ピアや、算数・数学で町おこしを試みている和歌山県橋本市などの市町村で,算数の出前授業を、また算数教科書の執筆にも関わっている。

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