東大院生レポート第3回:サイバーフォレスト ~自然環境情報を用いた科学と教育の発展にむけて~ | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

東大院生レポート第3回:サイバーフォレスト ~自然環境情報を用いた科学と教育の発展にむけて~長濱さん@東大院生レポート

私の所属している研究室では,自然環境情報を蓄積し,インターネット環境を利用してそれらの配信・活用を総合的に研究するプロジェクトを行っています。名付けて「サイバーフォレスト」!国からの予算である科学研究費助成事業(通称,「科研」)の支援も受けています。今回は,「サイバーフォレスト」の研究の概要と,教育活動についてご紹介しましょう。

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研究室での研究の取り組み

nagahama3-001.jpg東京大学大学院・新領域創成科学研究科(英語ではフロンティア・サイエンスと翻訳)の斎藤馨研究室では,斎藤教授らを中心として1995年から秩父演習林にロボットカメラを設置し,林内の日々の変化や鳥の鳴き声,気温や雨量等,森林環境のモニタリングを続けてきました。それらの情報をインターネット上に特設サイトを設け,情報を発信しています。また,山中湖や富良野にある大学の演習林や信大志賀自然教育園(信州大学と共同)など,いくつもの樹林地にもカメラを設置しています。東日本大震災後は,ひょっこりひょうたん島の見える岩手県の大槌町や,山田町のタブの大島にもカメラを設置して,映像や音,気象データを蓄積しています。これらの場所はhttp://cf4ee.nenv.k.u-tokyo.ac.jp/ のサイトにて公開中で,誰でもアクセスが出来ます。

写真1:ひょっこりひょうたん島の見える岩手県の大槌町

環境教育としてのアプローチ Cyber Forest for Environmental Education : CF4EE

nagahama3-002.jpg日常でインターネット利用が常態化し,自然に触れる機会が減少している私たちにとって,直接自然の森林から無加工・無編集で発信される情報が,どのような役に立つのでしょうか。私たちはこのサイトの情報を用いて,子どもや市民が遠隔森林に自然観察への興味を継続し,自然の季節変化や年間の移り変わりに気づき,経年的な自然環境変動への知識を深めることのできる機会を提供できればと考えました。研究の目標の一つといて,教材試作や授業実践開発を掲げています。

写真2:東京大学大気海洋研究所・国際沿岸海洋研究センターの屋上に設置されたカメラ機器類と「サイバーフォレスト研究会」のメンバー

岩手県大槌町での実践

nagahama3-003.jpg震災被災地である大槌町では地元の小・中・高校生に向けて,2012年度以降,毎年出前授業を行ってきました。2014年8月は岩手県内の児童・生徒を対象に,「みつけよう!さんりく自然のたからもの」というテーマを設定しました。小中学生はウミガメが捕獲される現地の自然の良さを知るとともに,高校生はこのインターネット観察サイトに接することで,利用者が遠隔の自然を観察して,過去を含む環境の変動を身近に感じ,地球規模の環境認識を醸成し,さらに環境問題を解決するための新たなメディアリテラシーを身につけられる点で、その社会的意義は大きいということがわかりました。また現地では、地域の人たちを対象としたイベントが他にも数多く実施されており,他のイベントとの連携の在り方を考える中で,ライブモニタリングを有効に活用する方法を模索していく必要があると考えています。

写真3:岩手県内の児童・生徒を対象に,「みつけよう!さんりく自然のたからもの」というテーマを設定。

私たちの挑戦

こうした環境教育教材としての利用・活用の取組を着実に実行していくためには,私たちが環境教育プログラムを実践して授業を分析するとともに,成果を広く社会へ役立てるシステムの構築が不可欠であると考えています。遠隔の自然に感動し,体感的に理解し,継続的に観察することは,自然環境認識の醸成を目指すものです。さらにこの自然環境情報サイトは,子どもだけを対象にしたものではなく,教育現場や広く一般社会に公開し,双方向に情報交換を行うものです。サイバーフォレストを通じた自然環境情報の利用は、フェノロジー(生物季節)や地球温暖化の影響などの感覚的な理解について、今後の進展が見込まれる分野であると考えています。ぜひHPにアクセスして,鳥の鳴き声や雪に覆われた森林の様子など,森や海の臨場感を満喫してみませんか。【キーワード】サイバーフォレスト,東京大学,環境教育,(「CF4EE」で検索できます。)

プロフィール

nagahama_pro.jpg長濱 和代(ながはま かずよ)氏

2011年3月まで東京都小学校教員。2013年3月に筑波大学大学院生命環境科学研究科で環境科学修士。同年4月から東京大学大学院・新領域創成科学研究科博士課程に在籍中。

<研究テーマ>
研究室では,樹林地にロボットカメラを設置して,映像,音,雨量や気温等の気象データのライブモニタリングが可能である。http://cf4ee.nenv.k.u-tokyo.ac.jp/drupal6/
そもそも算数・数学の教師で、理数系の好きな人たちを増やそうと、算数教材研究を行ってきた。ハンズオン・マス研究会幹事 http://handson.exblog.jp/
(株)パナソニックのCSRとしての施設であるリス―ピアや、算数・数学で町おこしを試みている和歌山県橋本市などの市町村で,算数の出前授業を、また算数教科書の執筆にも関わっている。http://panasonic.co.jp/center/tokyo/event/all/index.html#a004776

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