東大院生レポート第5回:理数科教育を発展させるために「ハンズオン・マス研究会」 | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

東大院生レポート第5回:理数科教育を発展させるために「ハンズオン・マス研究会」長濱さん@東大院生レポート

nagahama5-001.jpg化石燃料資源の乏しい日本が世界をリードするには、科学立国として今後とも成長する戦略が必要であると考えます。そのためには次世代を担う子ども達に、科学や理数に興味、関心を持たせることが重要であるといえます。ハンズオン・マス研究会は、算数教材研究を通じて、算数・数学に興味を持てるような教材と授業を提案することで、理数科教育の推進に貢献してきました。

写真1:小学生児童らによる切り紙作品

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What is "Hands-on Math"?

nagahama5-002.jpg「ハンズ(Hands)」とは手、「オン・マス(on math)」とは数学においてという意味で、手を動かして算数・数学を考えることを楽しもうというコンセプトのもと、ハンズオン・マス研究会は1998年に発足しました。学校週5日制が導入とともに算数の年間授業時間が減り、IEA(国際教育到達度評価学会)の国際調査では、算数が嫌いな日本の小学生が学年が進むにつれて増えていく実態や、他の国々と比較して算数の学力が下降線をたどっているという結果が報告されました。また受験などの外圧により、興味関心を持って取り組む子どもは少なく、本当の「学力」が身についているとはいえない状況にあるように思われました。

写真2:パターンブロックに見られる色々な敷き詰め

本来の算数・数学とその実践の在り方

nagahama5-003.jpg算数・数学とは、本来,美しさや面白さが追求できるとともに、他の学問領域と連携しながら、活用されていく創造的な学問であるといえます。しかし、昨今の子どもたちは多くの計算問題や文章問題を早く正確に解く必要に迫られていることが多く見られます。このような現状に憂慮する教師たちが集まり、「子どもたちが真に創造的な学習を行うことができるようにするためには、実践者が日々の授業を改善していく他に方法はない」として、創造的な算数の授業を行うための研究活動が始まりました。「教えるための道具」としての教具とは異なる考え方で学習材をとらえ、その特徴を生かし、子どもたちの操作活動を中心に据えた実践を開発していくことがこの研究会のねらいです(「ハンズオン・マス研究会」の紹介より)。

写真3:九九を題材にしたジオボードによる板書

ハンズオン・マスにより理数に興味・関心を

nagahama5-004.jpg算数が好きになるような課題や機会を、どのように創出することができるでしょうか。

  1. タングラム、パターンブロック,ジオボード等の優れた学習材を利用します。また「メビウスの輪」や「知恵の板」など、既存の理論や実践から新たな教材を開発することができます。
  2. 子どもたちの操作活動に基づく学びを追究します。科学実験と同様に,子どもたちに結果を予測させてから、活動(実験)して、結果をふり返ります。また課題について発展的問題やオープンエンドの(多様な考え方による)学びを提供していきます。
  3. 学校の授業だけでなく、家庭や地域グループ、企業でも取り組むことができます。そのための研究や実践をオープン・ソースとして、活用できる場を提供しています。

写真4:「知恵の板」による子どもたちの作品(提供:吉田映子先生)

ハンズオン・マスで活躍する教師たち

nagahama5-005.jpgハンズオン・マスの研究を通じて、忙しい日々の授業や校務の中でその授業を追究してきた教師たちの学級では、彼らの授業実践において子ども達が変容していく様子が見られます。その研究や実践記録を通じて、読売教育賞を受賞した先生たち、朝日新聞で花丸先生として取り上げられた先生たちが何名もいます。また2011年元旦の朝日新聞朝刊一面と社会面では、研究会主催の講習会の様子が掲載されました。最近では代表の坪田耕三先生(青山学院大)が、ハンズオン・マスの問題を朝日新聞紙面で披露しています(「坪田耕三の切ってはって算数力」)。

写真5:研数学館(東京・水道橋)でのハンズオン・マス研究会の様子

プロフィール

nagahama_pro.jpg長濱 和代(ながはま かずよ)氏

東京都の小学校教員をしていた2006年に、(株)花王のCSRを通じて、国際環境NGOアースウォッチによる途上国の森林プロジェクトに参加して、地球環境の劣化を目の当たりにして以来、環境教育の可能性を模索中。2013年3月に筑波大学大学院生命環境科学研究科で環境科学修士。同年4月から東京大学大学院・新領域創成科学研究科博士課程に在籍中。

<研究テーマ>
海外の研究調査地は北インド・ヒマラヤ山麓に位置するウッタラーカンド州で、住民参加による森林管理の事例として森林パンチャーヤトを研究している。インドは今後世界中で最も多い人口を抱え、経済的かつ地球環境的変化を遂げる国の一つとして注目している。
そもそも算数・数学の教師で、理数系の好きな人たちを増やそうと、算数教材研究を行ってきた。ハンズオン・マス研究会幹事 http://handson.exblog.jp/
(株)パナソニックのCSRとしての施設であるリス―ピアや、算数・数学で町おこしを試みている和歌山県橋本市などの市町村で,算数の出前授業を、また算数教科書の執筆にも関わっている。

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